産経新聞は、2018年6月4日付朝刊の自称・ジャーナリスト、櫻井よしこ氏のコラム「櫻井よしこ 美しき勁(つよ)き国へ」の末尾に、訂正記事を掲載した。これは元朝日新聞記者で、現在は韓国カトリック大学客員教授を務める植村隆氏が2017年9月1日に東京簡裁に申し立てた民事調停で、櫻井氏が誤りを認めたことにともなうもの。
- 訂正記事(産経ニュース、2018年6月4日)
この訂正記事を受け、同日午後4時から東京・霞が関の司法記者クラブで、植村氏と申立代理人の吉村功志(こおし)弁護士、穂積剛(たけし)弁護士が出席して記者会見がおこなわれた。
会見の冒頭で、吉村弁護士がここに至るまでの経緯を語った。それによると、櫻井氏は2014年3月3日付の「真実ゆがめる朝日報道」と題した同コラムで、植村氏が1991年に書いた朝日新聞の記事を以下のように批判した。
「(元慰安婦の)金学順(キム・ハクスン)氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている。植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じず、慰安婦とは無関係の『女子挺身隊』と慰安婦が同じであるかのように報じた」
- 【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】真実ゆがめる朝日報道(産経ニュース、2014年3月3日)
しかし、金氏の訴状には「14歳で継父に40円で売られ」「17歳のとき再び継父に売られた」という記載はなく、櫻井氏は存在しないものを根拠に「植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じず、慰安婦とは無関係の『女子挺身隊』と慰安婦が同じであるかのように報じた」と、植村氏を誹謗中傷し、「捏造」と断定したことになる。
会見では次いで、植村氏が、産経新聞が訂正記事を出したことによって「櫻井氏が私の記事を『捏造』と呼ぶ根拠が大きく崩れた。また、事実にもとづかない慰安婦報道を正すという点で前進があった」とのコメントを出した。
しかし、その一方で、訂正記事でさえ「金学順氏が『強制連行の被害者』ではないことは明らか」との根拠のない主張をしていることから、「この点を今後も追及し続ける」と決意を表明した。
しかも、その産経の訂正記事にはまだ根拠のない主張が記載されているばかりか、あれだけ植村氏を誹謗中傷し、名誉を毀損したことへの謝罪の言葉がひとこともない!
植村氏は会見後のぶらさがりで、産経新聞が訂正記事を出すのは異例で「それだけでも一歩前進」と述べ、申立代理人の二人の弁護士は「次回の調停期日にも合意に至るのではないか」と見通しを述べた。
記事の過ちを指摘されても訂正せず、こうして裁判沙汰になって、ようやく訂正記事を出す。それすらも珍しいことと言われる産経新聞は、果たして新聞の名に値するのだろうか。産経新聞という名称の前に自称「新聞」の産経と表記すべきかもしれないと、IWJ編集部は真剣に悩んでいる。
自称・ジャーナリスト、櫻井よしこ氏の「捏造」コラムに関しては、岩上安身が二度にわたって植村氏にインタビューをおこなっている。植村氏は自身ばかりでなく、家族や勤務先までが脅迫や暴力の恐怖に晒されていた中で、事実無根のデマがなぜ根強く残るのか、その背景に言及している。こちらもあわせてぜひご覧いただきたい。
産経新聞が櫻井よしこ氏のコラムを訂正するも謝罪なし!元朝日新聞記者・植村隆氏に対する不当な「捏造」批判の根拠崩れたにもかかわらず、産経はなぜ詫びないのか!? https://iwj.co.jp/wj/open/archives/423592 … @iwakamiyasumi
「謝ったら死ぬ病」に罹っている新聞ほど厄介なものはない。百害あって一利なし、廃刊希望。
https://twitter.com/55kurosuke/status/1005046843863023617