20世紀に形成された私たちのシステムを壊す戦い、その作動を変える戦い! ~参院選 比例代表 れいわ新選組・安冨歩候補 個人演説会「阿佐ヶ谷で馬のユーゴン君と触れ合う最後のチャンス!」(ザムザ阿佐谷) 2019.7.14

記事公開日:2019.7.15取材地: テキスト動画
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(取材・文:小野坂元)

特集 れいわ新選組
※2019年7月26日、テキストを追加しました。

 2019年7月14日(日)11時より東京都杉並区のラピュタビル ザムザ阿佐谷にて、参院選に比例代表で立候補したれいわ新選組の安冨歩候補による個人演説会「阿佐ヶ谷で馬のユーゴン君と触れ合う最後のチャンス!」が開催された。本記事ではまず、冒頭の安冨氏による、ここまで1週間の選挙戦のまとめと、これからの1週間の展望について記す。続いて、新宿区議会議員のよだかれん氏と安冨氏とのトークの中で語られた、差別とは何か、それをどうなくしていくのか、という点を取り上げる。あわせて、「障がい児・者の学びを保証する会」の大森梓氏が語った、子育てを通じて学んだ人を信じてコミュニケーションをとるということを紹介していく。

 安冨氏は冒頭、「インターネットでは盛り上がってきているけれども、その一歩外を出ると誰も知らないという状況が続いていて、この1週間でそれがどこまで広がるか、にかかっています」と始めた。そして、この選挙とマスメディアとの関係について次のように述べた。

 「おそらくメディアは最後まで黙殺すると思います。それは日本のメディアの性質を考えればですね、日本のメディアというのは国民国家のシステムがちゃんと動いているかのように見せかけて、人々をそのシステムを回すための燃料を供給するという、システムの一部です。そのシステム作動を止めるようなものには、メディアは決して寄ってこないので、逆にメディアに取り上げられるようになったら、あっ、終わったなって」

 そして、この選挙戦の意味は「20世紀に形成された私たちのシステムを壊す戦い、その作動を変える戦い」であるとして、「メディアが変化して、取り上げられるならいいですけど、今のままのメディアに取り上げられたら、それは敗北なんですね…いわゆる選挙らしい選挙をやったら勝っても意味がなくて、選挙じゃない選挙をやって勝ったらすごいと思います」と意気込みを語った。

 トランスジェンダー新宿区議・行政書士のよだかれん氏と安冨氏とのトークでは、差別がどのように発生するのか、それをどのように克服していくべきか、ということが話題となった。

 安冨氏は「性同一性障害とか、ゲイとか、そういう人がいるから差別されるんじゃなくて、男が男を好きだということを口実にして差別する人がいるだけなんです。カテゴリーを認めてしまうと、それを暴力と一緒に内在化してしまうんではないかと思うんです」とカテゴリーを押しつけることの暴力性を指摘した。そして「暴力が内在化すると治んないんですよ。だから当然、その治療は自由に受けられるべきだし、社会的な暴力によって受けた痛みなんだから、当然保険でカバーしなくてはいけない。殴られてケガした人の治療に保険を認めるか認めないかって、当然認める。ケガなんだから」と発想の転換を促した。

 よだ氏は「性適合手術は、国が決めた4つの大学病院だけで、かつホルモン治療を受けていた人は混合診療、自由診療とみなされて、保険が適用されないんですよ。でも国が決めたガイドラインでは、ホルモン療法を受けた人でないと性適合手術ができないと定められているから、(性適合手術に保険が適用されるという話は)矛盾しているんですよ」と現行の性適合(再割り当て)手術にまつわる問題点を挙げた。

 安冨氏によれば、精神科医が「性同一性障害」を抱える人を治療するということではなくて、社会的な環境から受けた傷を治すという形で考えるべきだということになる。安冨氏が「生まれてからずーっと白い眼を向けられ、自分自身に白い眼を向けて傷がついたんだから、保険適用で治す。そのケガを治しましょう」と述べたのは、そうしたことを意味している。

 これに対して、よだ氏は「みんながそれぞれ、のびのびと、いいじゃんってなれば、そのケガが生まれないということなんですね」と応じた。そこで安冨氏は、「そしたら、保険はいらなくなるんですよ」と発想の転換の先にある、社会のあり方の一端を示した。

 また、よだ氏は「私は最初、安冨さんをテレビで知ったときに、正直反発を覚えた」という。それは「私たちはお金も労力もかけて、痛い思いをして女性として生きているのに、あの人はそういう思いをしないで女性の格好をしているだけだ。何だ何だ、そういう人がいるから私たちも変な眼で見られるんだという感じ」がしたからだったという。「でもそれから、安冨さんの言動を知るにつけ、自分でもLGBT講演をする中で、最終的には個体差で、みんながそういうふうに手術したり、戸籍を変えたりしなくていいんだ、と一人ひとりそれぞれなんだな、って遅ればせながら気づいて」いったと、自身の認識の変化について語った。

 これに続ける形で安冨氏は、「個性と言うか、傷の深さなんだと思うんです。私はたまたま傷が浅かった。これ(女性装)ですんでいるに過ぎない。それは別にトランスジェンダーだけの問題ではなくて、ありとあらゆる人が、ありとあらゆる小さな差別で悩んでいると思うんですね。特に日本で問題なのは学歴差別だと思いますけど、あとお金があるやつが偉いとか、学歴とお金で二元構造になっていて、この暴力は全ての人に及んでいるので。極端な不平等とか学歴差別は許してはならないと思います」と差別の構造をあぶり出していった。

 よだ氏も、「少数派(マイノリティ)」を表す既存のカテゴリーに再考を迫る視点を提示した。よだ氏がそこで述べたように、「LGBT活動って、自分たちの権利を主張したいんじゃないんですよ。私はセクシュアリティの面では、今の日本では少数派と言われますけど、でも目も見える、耳も聞こえる、話せる、歩ける走れる、日本において日本人、両親もそろっている、大学も行かせてもらった、愛情いっぱいに育ててもらった、マジョリティなんだって気づいた。みんなそれぞれの部分でマイノリティ性を帯びている。それを持っていると気づく人ほど、人にあたたかくなっていくのかな」という見方が、差別を克服していくために重要なのだと気づかされる。

 一方、安冨氏は、上記のよだ氏の視点と逆のパターンを指摘し、そこに孕まれる問題点について、次のように述べた。「逆にその、自分だけが差別されちゃっていると思い込んじゃったら、外部に対してすごく攻撃的になってしまうんですね。それがカテゴリーの怖さです。私はこういうふうにかわいそうな人間なんだから、当然人からやさしくされるべきだし、となってくると、そうでない人に対して非常に攻撃的になる。それは自分に向けられた暴力を内在化させてしまっているからなんです。当然自分自身を深く傷つけているので、その傷の深さが暴力性に変わってしまう。

 カテゴリーを受け入れてはならない、と私がずっと言っているのは、そういうことなんです。それは差別する口実に過ぎない。男のくせに男が好きだろって差別する口実に過ぎなくて、ゲイだから差別されているわけではない。差別されているカテゴリーを自分のアイデンティティだと思うと、暴力性も内在化してしまう。性的少数者がやるべきことは、自分自身も含むあらゆる差別と戦うことなんですね」

 これに続けてよだ氏は、新宿区議選に出馬した経緯について「そうでないと世間の理解も得られないし、私が新宿区議選に出た理由というのは、新宿でヘイトスピーチ・ヘイトデモではなくて、あらゆるデモを一律に禁止することにつながる公園の使用基準の変更ということがあったんです。自分の住む街でとんでもないことが起きている。おかしいということがおかしいと言えなくなってしまう」から「街に出て、こんなことが起こってますよ、と言い出した」と述べた。

 この後の、大森梓氏(障がい児・者の学びを保証する会)のお話は、子どもからコミュニケーションのあり方を学ぶことの重要性を示すものとして重要である。大森氏は「私は、いわゆる知的障害とくくられている人たちと一緒に、お話に来たんですけど、私は健常者と障害者との違いを感じる場面はあまりないんです。この子(四男)が自由に人を恐れないで、人を見かけると気さくに、こんにちわーって言うんです。人をすごく信じて関わるんですよ」と話し始めた。

 そして「私自分を振り返ると、人と関わるときは疑うところからで、この人こんなこと言っているけど、本当はどういうふうに考えているんだろう、と疑って」しまっていた大森氏は、「彼らと関わるようになってから、そういう自分に気づき始めた」という。その上で子育てを通して、次のように感じたという。

 「今、四男といる彼女は、誰でも気さくに人を信じて関わっていくんですよ。自分を、自分からオープンにして人と関わっていく。すごい能力だと思うんですけど、そういう彼女に私は子育てを手伝ってもらっていて、四男がああいうふうに人を信じるのは、彼女の影響を受けていると思うんですよ。たぶん私一人で子どもを育てていたら、きっとこういう子に育っていないだろうな。彼らとの関わりの中でものすごくいい影響を受けているなと。私の子どもはこうでなくてはいけない、という枠の中にはめようとするのではなくて、ありのままでいることが素晴らしいと親としても思うことができるようになりました」

 こうしたお話からも、安冨氏が掲げる「子どもを守ろう」の意味するところの広がりが感じられる。ぜひとも、公開中の全編動画をご覧いただきたい。

■全編動画

  • 登壇 安冨歩氏(参議院議員選挙比例区候補、東京大学東洋文化研究所教授)/片岡祐介氏(音楽家)/田崎建氏(きさらづ野良制作室)/才谷遼氏(ラピュタ阿佐ヶ谷館主、映画監督)/よだかれん氏(新宿区議会議員)/大森梓氏(障がい児・者の学びを保証する会)ほか
  • タイトル 参院選 比例代表 れいわ新選組・安冨歩候補「阿佐ヶ谷で馬のユーゴン君と触れ合う最後のチャンス!」会(ザムザ阿佐谷)
  • 日時 2019年7月14日(日)11:00〜
  • 場所 ラピュタビル ザムザ阿佐谷(東京都杉並区)
  • 告知 安冨歩氏ツイート

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