沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設のための沿岸部埋め立ての賛否を問うため、2019年2月24日に実施される県民投票に、宜野湾市、沖縄市、うるま市、宮古島市、石垣市の5市の市長が参加しないことを表明している。
現在、投票の実施を拒否している5市を合わせると、沖縄県の全有権者の3割にも及ぶ。その中には玉城デニー沖縄県知事(沖縄市)や、この県民投票の実現のため、大学院を休学して署名活動を行った「『辺野古』県民投票の会」代表の元山仁士郎氏(宜野湾市)も含まれる。
元山氏は1月15日から、5市の県民投票への参加を求めて、宜野湾市役所前でハンガーストライキを始めた。5市の市長が参加を表明するまで、水、白湯のみしか口にしないとのことだ。
1月17日、IWJはハンガーストライキを開始して3日目を迎えた元山氏に宜野湾市役所前で話を聞いた。
- 日時 2019年1月17日(木)10:00頃〜(インタビュー)、18:40~(記者会見)
- 場所 宜野湾市役所前(沖縄県宜野湾市)
- 詳細 「辺野古」県民投票の会
県民投票条例制定に必要な要件の4倍以上! 全市町村から集めた10万筆の署名にも実施を拒否する5市長!? 「世界の人たちはどう思うのか」!?
IWJ沖縄中継市民「『辺野古』県民投票の会代表・元山仁士郎さん、今回のハンストに至った経緯をお願いします」
元山仁士郎氏「『辺野古』県民投票の会では、5月23日から2か月間、県民投票の署名集めを行って、『辺野古米軍基地建設のための埋め立てについて、みんなの意思を表明しよう』と、沖縄県民の10万筆を超える署名を集めました。署名を県に提出して、県議会の審議があって、条例が制定されました。
私としては、条例が制定されたのだから、県民投票は全県で実施できるだろうと思っていました。10万筆の署名は全市町村から集めたもので、0筆というところはありませんでした。県民投票条例制定の必要条件である『有権者の2%』(の4倍)以上の署名を全市町村から集めています。北大東島や南大東島など、沖縄の全部の島々にも足を運んで、現地の人たちも動いてくれて集めた署名です。
県民投票条例が制定されたら、議論を深めていきたいと、その上で2月24日に納得できる結果を示そうという取り組みをしていたんです。しかし、一部の市議会で予算が否決されたり、県民投票に反対する意見書が出されたり、市長が、本当は通さないといけない予算を通さない、県民投票をさせないというような態度を取っています。
私たちも市長、議長、市議の方々にお会いして、『私たちがこんな思いをして署名を集めました、どうにか投票を実施してください』とお願いしました。今拒否している宜野湾市、沖縄市、うるま市、宮古島市、石垣市でも、『これだけの人たちがやりたいと言って、県に提出して制定した条例なんですよ』というような話もしました。私も大学院を1年間休学して取り組んでるという個人の思いとか、宜野湾市民として理解いただけるように説得を試みてきました。
もちろん、沖縄県側も県知事や副知事が(実施を拒否している各市に)足を運んで、『県民投票を、なんとかみんなでやりましょう』という説明をしたんですけど、それでも『やらない』ということでした。
このことを市民の人たち、県民の人たち、日本人、世界の人たちはどう思っているのかな、というところが気になりました。それで、じゃあどうすれば考え直してくれるかなと思った時に、からだを張るしかないかなと思って、ハンガーストライキをやったということです」
「『もうわじわじして(怒りに震える)、はらわたが煮えくりかえる!なんで投票権を奪うの?なんで(私たちの)口を塞ぐの?』という市民、県民がたくさんいる」!
IWJ「今日で3日目ですが、反応はどんな感じですか?」
元山氏「初日から200人を超える人たちが足を運んでくれて、昨日も合計500人以上はこのハンガーストライキをやっている現場に足を運んでくれたと思います。
『もうわじわじして(怒りに震える)、はらわたが煮えくりかえる!なんで投票権を奪うの?なんで(私たちの)口を塞ぐの?』という市民、県民がたくさんいることに励まされています」
IWJ「基本的に水と白湯だけしか口にしていないんですよね?お医者さんはそれでいいと言いますか?」
元山氏「もちろん、お医者さんは『早くやめたほうがいい』と言いますけど、私の気持ちもわかってらっしゃるので。その上で、健康チェックをしていただいています」
IWJ「沖縄市といえば、玉城デニー知事も、宜野湾市といえば、元山さんも私も投票できないことになります。県としては、それでも県民投票は実施するということです。そういう意味ではこのハンストの意義があるとお考えですか?」
▲玉城デニー沖縄県知事(2018年12月13日、IWJ撮影)
元山氏「本来、市町村が事務を担うということが、地方自治法でも条例でも定められています。市長が拒否をしているという状況ですが、まだ時間は残されていると考えています。どうにか、この5市長が態度をあらためてくれたら、と考えています」
IWJ「今、元山さんたちを励まそうとしている人に、何ができるでしょうか」
元山氏「『ハンガー・フォー・ザ・ボート』という、このハンガーストライキのウェブサイトを作っています。そこにこのハンガーストライキまでの経緯や、みなさんにやっていただけることを書いていますので、ぜひご覧いただければと思います」
- 県民投票への参加を求めるハンガーストライキ(「辺野古」県民投票の会)
(ウェブサイトには5市長への請願署名の方法や、各市役所の電話番号も掲載されている)
IWJ「ありがとうございました。頑張ってください」
県民投票の経費は全額沖縄県からの交付! 市町村議会で否決されても経費支出は首長の義務! それでも投票への不参加を表明した宜野湾、沖縄、うるま、宮古島、石垣の5市長!?
そもそも県民投票にかかる経費約5億5000万円は、2018年10月26日に補正予算案が県議会で可決されている。
県民投票条例では、各市町村が、名簿の管理や投開票事務を市町村が行うと規定されている。事務にかかる経費は、地方財政法にもとづいて、県から各市町村へ全額交付される。
ただし各市町村は、県からの交付金を投票の事務にあてるため、議会の議決を得る必要がある。宜野湾市、沖縄市、うるま市、宮古島市、石垣市の市議会はこの予算を否決した。
だが地方自治法では、議会で否決されても審議をやり直す再議にかけ、それでも否決された場合は「市長は経費を支出することができる」と定めている。経費を負担する沖縄県も、県民投票の経費は「義務費」であり、首長には支出する義務があると説明している。
自民党・宮崎政久衆院議員が市町村議員に「予算案を否決することに全力を尽くすべき」と呼び掛け!? 市長の予算執行義務も否定しながら、本人は記者会見で圧力を否定!?
ところが、この義務について、自民党の宮崎政久衆院議員(比例九州)が昨年12月に沖縄県内で市町村議員を対象にした勉強会を開き、予算案の否決や反対意見書の採択などを提案する文書を配っていたことを、琉球新報が報じた。
▲自民党・宮崎政久衆院議員(Wikipediaより)
宮崎議員は資料の中で、「市長が経費を支出することができる」とは、「できる」のであって「議会で予算案が否決された事実を前に、これに反して市町村長が予算案を執行することは議会軽視であり、不適切である」と主張した上で、市町村議員に「予算案を否決することに全力を尽くすべき」と呼び掛けていたということだ。
宮崎議員は1月16日、那覇市内で自民党沖縄県連の役員らと記者会見を行い、否決を呼び掛けた資料について「取り得る手段を答えたにすぎず、報道されたような指南をした事実はない」と答え、議会や首長への自身の圧力を否定した。
宜野湾市では、市民有志で作る「県民投票じのーんちゅの会」が1月15日、宜野湾市役所前で抗議集会を行い、「市長の判断で市民の参政権を奪うことはあってはならない」とする抗議決議を採択した。
「じのーんちゅの会」は市民の投票権が侵害されたとして、宜野湾市を相手取り、国家賠償請求を起こす意向を表明している。
玉城デニー知事も投票できない!? 沖縄「辺野古」県民投票実施を拒否する5市長に県民投票の会代表・元山仁士郎氏が抗議のハンガーストライキ! 5市の拒否の陰に自民党衆院議員の「勉強会」!? https://iwj.co.jp/wj/open/archives/439844 … @iwakamiyasumi
民主主義を取り戻す闘いが沖縄で進行中だ。本土からも応援の声を!
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