班目原子力安全委員会委員長 3.11から11ヶ月目の「お詫び」 2012.2.15

記事公開日:2012.2.15取材地: テキスト
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(IWJ・大野)

 2012年2月15日(水) 13時30分~16時30分 衆議院分館3階 第16委員室において、第4回東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が行われた。

※IWJは傍聴時、撮影および録音が許されませんでした。委員会の様子は記事のみになります。

▲班目春樹 原子力安全委員会委員長(写真は、2012/2/20 第9回原子力安全委員会定例会より)

  • 委員長・委員
    • 黒川清 委員長(東京大学名誉教授)
    • 石橋克彦 委員(地震学者)
    • 大島賢三 委員(独立行政法人国際協力機構顧問)
    • 崎山比早子 委員(医学博士)
    • 櫻井正史 委員(弁護士)
    • 田中耕一 委員(分析化学者)
    • 田中三彦 委員(科学ジャーナリスト)
    • 野村修也 委員(中央大学法科大学院教授)
    • 蜂須賀禮子 委員(福島県大熊町商工会会長)
    • 横山禎徳 委員(社会システム・デザイナー)
  • 参考人
    • 班目春樹 原子力安全委員会委員長
    • 寺坂信昭 前原子力安全・保安院長
  • 日時 2012年2月15日(水)13:30~16:30
  • 場所 衆議院分館3階 第16委員室(東京都千代田区)

 国会事故調の第4回委員会は、原子力安全委員会委員長の班目春樹氏と、前原子力安全・保安院長の寺坂信昭氏を参考人として迎えて行われた。ともに原子力の安全規制機関の長。事故前にどのように組織が機能していたのか、事故後の対応はどうだったのか、事故調の委員長及び委員により、聴取が行われた。

 冒頭、黒川委員長に福島原発事故についての総括を問われ、班目委員長は「安全審査指針に、いろいろな意味で瑕疵があったと言わざるを得ない」と答え、「明らかな誤りがあった。お詫び申し上げます」と謝罪した。津波や全電源喪失の可能性の想定が甘かった原因について、日本の官僚制の体質に触れ、安全性を徹底するより、「『やらなくてもいい』という理由付けばかりに時間を費やしてしまう」ことを指摘した。今後の安全基準について大島委員に問われた際には、「世界にこれだけ迷惑をかけた国として最高の安全基準を定めるのは当然のこと。まずは国際基準に追いついて、追い越さなければいけない」と述べた。

 班目委員長は事故後、官邸において技術的な観点から助言をする立場にあったが、当時の助言の有無・内容について委員らが詳細に聞き取ろうとしたのに対し、初期の激務による睡眠不足を理由に挙げ「まったく記憶にない」「記憶にない」という答弁をくり返した。結局のところ、ベントや海水注入の決定のプロセスは、明らかにされなかった。

 また、SPEEDIについて、「SPEEDIが生きていたら避難の判断に役立ったというのはまったくの間違い」と語った。櫻井委員に今後のSPEEDIの運用を問われ、「プラント状況や、放射線量の実測の結果によって避難区域等を決定すべきだと考える」と見解を述べた。

 石橋委員・野村委員との質疑応答において、原発立地審査指針のあり方のずさんさが明らかにされたことにも注目したい。今回の事故で放出された放射線が、指針の「仮想事故」で想定された放射線量の1万倍に及ぶことを指摘され、班目委員長は、「敷地周辺住民に被害が及ばさない結果になるように定められた数値と思わざるを得ない。私はそれが定められたとき委員長ではなかったが、申し訳ない」と謝罪した。

 寺坂前原子力安全・保安院長は、事故後、原子力災害対策特別措置法に基づき設置された原子力災害対策本部の事務局長を務めた人物だ。原子力災害対策本部の議事録が存在しないことについて、事務局長としての不作為の責任と公文書管理法違反の意識の有無を問われ、「申し訳ない。当初は議事録を取っていなかったが、一定期間経ったあとのメモがあるので、詳細なものでなければ作成が可能と思われる」と言葉を濁した。

 また、事故直後、官邸での助言役は平岡次官に任せ、官邸との連絡は数回にとどまったと答弁し、事務局長および保安院長として官邸との連携が希薄だったことが明らかになった。

 保安院に専門性が乏しいことも問題になった。意見聴取会や、ストレステストの評価を保安院が主体となって進めていることに複数の委員から疑問が投げられた。田中委員が「ストレステストが事故前に福島第一原発で行われていたら、今回の事故は防げていたと思うか」と質問し、寺坂前委員長は、「私にはそれは評価できない」と、自らの見解を「告白」した。

* * *

 委員会後、記者会見が行われ、黒川委員長が質疑に応じた。

 冒頭に委員長は、今回の委員会の意義について、下記3点を挙げた。

  1. 班目原子力安全委員長が安全指針そのものに問題があったと認めたこと
  2. 原子力安全委員会、原子力安全・保安院ともに、緊急時の想定ができていなかったことが明らかになったこと
  3. 両組織とも、専門性の低さが判明したこと

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