「読売新聞は死んだに等しい」新聞史上最悪の「前川潰し」記事を検証! 陣頭指揮したと噂される山口寿一・読売社長はなぜ変節したのか!? ~岩上安身によるインタビュー 第758回 ゲスト 郷原信郎弁護士 2017.6.12

記事公開日:2017.6.12取材地: テキスト動画独自
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(文:城石エマ)

特集 郷原信郎弁護士
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 安倍総理の「腹心の友」加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園が、愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設しようとしている問題で、官邸の「圧力」をうかがわせる文書が次々と出てきている。

 朝日新聞が報じた文部科学省の文書には、「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などの文言が記されていた。菅義偉官房長官は、リークされたこの文書を「怪文書みたい」と、信憑性そのものがないものであるかのような発言をした。

 これを受けて、文書を「本物だ」と声をあげたのが、文科省の前事務次官・前川喜平氏だ。2017年5月25日、前川氏は記者会見を開き、文書は本物であると断言した。

 しかし官邸は、前川氏の勇気ある行動を、卑劣な手口で潰しにかかった。

 前川氏が記者会見を開く直前の5月22日、読売新聞が社会面で、「辞任の前川・前文科次官、出会い系バーに出入り」とする記事を出した。文書が流出した当初から、リーク元を前川氏であると見ていた官邸が、政権に近い読売新聞に情報を流し報道させたとの見方が強い。

 「読売新聞は死んだに等しい 巨大新聞による新聞史上最悪の不祥事」――。

 読売新聞の報道を受け、ブログで激しい批評を展開したのが、郷原信郎弁護士である。6月12日、岩上安身は郷原弁護士にインタビューをして、詳細をうかがった。

 「権力は肥大化し、人権侵害しかねない。だからメディアは権力と距離を置き、権力の暴走を抑えなければいけない。ところが今回の読売新聞は逆です」

 以下に、郷原氏へのインタビューの実況ツイートを並べて掲載する。

■イントロ

  • 日時 2017年6月12日(月) 17:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

坂本弁護士一家殺人のキッカケを作ったTBSより今回の読売のほうが重大!「前川氏が売春目的だったかのような書き方をしている」

岩上「本日は郷原信郎弁護士にお話をお聞きします。郷原さんは読売新聞の『出会い系バー』報道を批判するブログを書かれていました」

郷原氏「読売記事が何らかの政治的目的で出された可能性はかなり高いと思いました」

岩上「郷原さんは『読売新聞は死んだに等しい』と書かれています」

郷原氏「坂本弁護士一家が殺されるキッカケをTBSが作った事件がありました。TBSが批判を受け、筑紫哲也氏が『TBSが死んだに等しい』と言いましたが、今回の読売のほうが重大です。

 今回の報道は、前川氏が売春目的だったかのような書き方をしています。記事は、『教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ』としています。意図的か偶然かわかりませんが、菅官房長官も同様の批判をしました」

「読売新聞は本当に記事の中の証言をとったのか、疑わしい」

郷原氏「前川氏に関しての事実は『スーツ姿で来店することが多く店では偽名を使っていた』と『値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたことがある』という証言だけ。記事はそもそも頻繁に行くやつは売春か援助交際しかありえないという記事になっています。

 読売新聞は本当に記事の中の証言をとったのか、疑わしい。本当に証言をとっていれば違うものになったはずです。原口社会部長は反論していましたが、肝心のこの点については触れていません。前川氏とホテルに行った女性を探し出せ!ホテルに行ったと裏をとってこい!という大号令が出たはずですよ。もしかしたらホテルに行ったということにしてほしいと頼んだ可能性だってある。それでも何もなかった。前川氏の言っているとおりだと思います」

岩上「郷原さんは、官邸サイドから前川氏が出会い系バーに出入りしていたことの情報を入手しただけで、取材もしていない可能性があると」

郷原氏「もしくは証言はとったがホテルに行く話ではなく『ハズレ』だった。上の号令があったのでわざわざ印象操作したのでは」

「最大の問題は『値段の交渉』と、売春に関わっていたように書いたこと」

岩上「記事で名誉毀損にはならないんですか?」

郷原氏「微妙ですね。一応『値段の交渉』というのも『外に連れ出す値段』かもしれず、言い逃れが可能になっています」

岩上「法務部とかも通した、計算済みの記事なんですかね」

郷原氏「かもしれませんね」

岩上「記事への批判に対し読売の原口社会部長は、『批判は全く当たらない』『売春を目的とするような客が集まる店に足しげく通っていたのである。我が国の教育行政のトップという公人中の公人の行為として見過ごすことが出来ない』と開き直っています」

郷原氏「問題なのはいかがわしいことだったかです。今明らかになっているのは、決していかがわしいことじゃないんですよ。ところが開き直っている。そんなこと何を報道する価値があるのか。最大の問題は『値段の交渉』と、売春に関わっていたように書いたこと」

岩上「読売の記事は、政権への忖度か、明示的な了解があったのか」

郷原氏「それはわからないです。首相と官邸と読売の関係がわからないので」

読売本社の山口寿一社長は「検察の暴走を止めようとする記者でした。他にもちょっといなかった」

岩上「この記事は権力と巨大メディアの共謀の産物だと思います。読売本社の山口寿一社長と郷原さんは検事と司法記者として、腹を割って話す関係にあったとブログで書かれていました」

郷原氏「素晴らしい司法記者ですよ。取材力、分析力、社会的評価も的確に行い、検察の実態もわかっている、ピカイチの司法記者です」

岩上「山口さんというのは、郷原さんがペンネームで書かれた小説『司法記者』に登場する記者のモデルにもなっているんですね」

郷原氏「検察の暴走を止めようとする記者でした。他にもちょっといなかった」

「司法記者時代の山口氏とはまったく別の人間になったとしか思えない」

岩上「しかし陸山会事件の捜査を厳しく批判するようになってから連絡が途絶えたと。一度だけ連絡をとろうとしたのが、週刊文春が『仰天スクープ ナベツネも知らない読売新聞の「特定秘密」』と、山口氏のスキャンダルを書いたときだったんですね。

 少し文春の記事を説明しましょう。銀座のとある比内地鶏を扱う焼き鳥屋の経営をめぐり、オーナーのM氏と、初期費用を肩代わりしたT氏の、その妻(T夫人)が対立したということです。

 山口氏が読売新聞社内で出世したのは、法務部長時代に弁護士会や警察当局と組んでプロ野球界から暴力団系私設応援団を追放したことだったといわれるが、その時の協力者がタイガース私設応援団だったT夫人で、以後、山口氏とT夫人は『盟友関係』に。

 2013年6月T夫人は銀座の焼き鳥屋の正面口、裏口を私服姿の男ら10名以上と取り囲み、店を強引に占有。警察なども出動する騒ぎに発展し、騒動は連日続いたが、ここで飲食店を取り囲んでいた私服姿の男性らの中に読売新聞の社員が複数名混じっていた。

 店を占有したT夫人は営業を強行。さらにM氏の関係する店には鶏肉を卸さないよう卸業者に働きかけ、読売記者が業者に対し、M氏との取引を中止するよう直接要請に行ったことも。M氏と卸業者の取引を中止させるため読売新聞本社では集会も開かれたという。

 占有騒動で110番をしたのはF氏だったが、なぜかF氏が警官に築地署に連行されてしまう。トラブルは法廷闘争に発展。T夫人と読売側は、M氏側の従業員で法務部長のF氏が『反社会的勢力』かのように主張したというが、そんな事実はない、とのこと。

 F氏は、『(取り調べでは)暴力団であるかの如き対応を受けたが、身元を調べてもらうと、「間違いでした。すいませんでした」と帰していただいた。その後、被害届の相談で築地署に行った際、刑事から読売関係者らが、「何とか(F氏を)暴力団周辺者とだけでも認めてくれないか」と頼みにきたが、「該当しないものを暴力団扱いすることはできない」と断ったと聞いた』ということです」

郷原氏「記事は本当に事実なのか、と思いました。記事が本当だとしたら、山口氏は別人になっているとしか思えない。何とか考えを改めてもらえないかと思って連絡したんですがね」

岩上「しかも『出会い系バー』記事も山口氏の主導だと、私も取材で聞いています」

郷原氏「今、彼がそういうことを本当にやっているのであれば、司法記者時代の山口氏とはまったく別の人間になったとしか思えない。あれだけ有能で優秀な司法記者を生んだのも読売新聞。何か病理があったのではないかと思います。

 私が広島地検にいた時代、『特捜部50周年キャンペーン』を新聞各社が書かされました。嘆かわしい、こんなことで検察に使われたくないと電話で話してくれたのが山口さん。なぜ検察権力に利用されないといけないのかと、真っ当な感覚を持っていました」

「文科省で事実が明らかにできれば、隠蔽の背景に何があるかを国会で徹底的にやるべきです」

岩上「読売新聞は安倍総理の9条加憲も報じました」

郷原氏「読売が独占インタビューを載せたこと、そのこと自体は問題ないわけですが、読売新聞を読んでくれという総理のあり方は問題です。今回の出会い系バーと問題とは質が違う。安倍総理単独インタビューが社内で当たり前なので、もう抵抗できないという状態なのかもしれません。そういう意味では『出会い系バー』報道も背景ではつながっているのでしょう」

岩上「郷原さんは共謀罪をどう考えていますか?」

郷原氏「こういう法案が通ってしまった場合、本当に厳格に、慎重に運用されるのであればいいが、今の検察、警察は全く信用できません。悪用する可能性は非常に強い。だからこういう法案は通してはいけない。

 裁判所のチェックも期待できません。裁判所はすぐに令状を出します。極めて危険です。権力が肥大化し、人権侵害しかねない。だからメディアは権力と距離を置き、権力の暴走を抑えなければいけない。ところが今回の読売新聞は逆です。

 とうとう、加計学園の問題について前川氏が存在していると断じた文書を文科省が再調査することになりました。徹底的な広範囲の調査を作り、第三者に調査させろ、という主張も正論です。

 しかし、調査対象を絞ったほうが私は得策だと思います。最初の調査はなんだったんだと。あの文書が報じられたときに、あの文書を確認するために必要な調査は行ったと言ったし、調査はもう十分だと言っていた。これが間違っていたなら、最初に隠蔽したことになります。なぜ隠蔽したのか。

 文書を認めれば首相が、官邸が困る、という忖度が働いたということ。まずは文書の存在を確定する。そして前回調査が間違っていた原因を作ったひとりひとりに話を聞くこと。前回調査に関わらなかった文科省の人間がやればいい。むしろ第三者委員会はマイナスになると思う。第三者はいくらでも都合のいい人間を選べます。第三者に委ねると言って、2ヶ月も3ヶ月も結果を先送りにされますよ。文科省で事実が明らかにできれば、隠蔽の背景に何があるかを国会で徹底的にやるべきです」

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