2017年1月31日、中野サンプラザにて、東京・生活者ネットワーク 新春の集い ―パネル討論「政治はどこに向かうのか?~ネットの力で都政を変える」が開催され、中野晃一氏(上智大学教授)、三浦まり氏(上智大学教授)、諏訪原健氏(元SEALDs)が登壇し、西崎光子氏(東京・生活者ネットワーク代表委員/都議会議員)の進行でパネル討論が行なわれた。
(取材・文:阿部洋地)
※2月25日テキストを追加しました。
2017年1月31日、中野サンプラザにて、東京・生活者ネットワーク 新春の集い ―パネル討論「政治はどこに向かうのか?~ネットの力で都政を変える」が開催され、中野晃一氏(上智大学教授)、三浦まり氏(上智大学教授)、諏訪原健氏(元SEALDs)が登壇し、西崎光子氏(東京・生活者ネットワーク代表委員/都議会議員)の進行でパネル討論が行なわれた。
記事目次
■ハイライト
進行の西崎氏よりジェンダーと政治に関して問題提起され、三浦氏は日本の衆議院議員の女性の割合が9.5%(小池百合子氏が都知事就任のために衆議院議員を辞めたあとは9.3%)で世界157位の最底辺にあることを嘆いた。その原因として三浦氏は、高額な供託金などの「資力の壁」と、家庭内の性別役割分業の意識が依然強いことからくる「家族の壁」があると指摘した。
そして三浦氏は、「結局のところ」として、不均衡の問題は男女間だけの問題ではなく、多様性の問題であるとして、次のように語った。
「女性としての権利、利益もありますけれども、色んな意味での多様性、身体的な意味では障害や健康の問題もありますし、経済的な状況も様々です。また、外国との関わりについてもいろいろなアイデンティティがあります」
そのうえで三浦氏は、「日本の社会には多様な人たちが生きているにも関わらず、議会の中で多様性が保障されていない。その結果政策が歪んだものになっている」と指摘した。
進行の西崎氏に「これまでの安倍政権とか日本の政治の動きに対してどのように感じているのか」と問われ、中野氏は、トランプ氏が米国内の「見えない声」を代表しているようでありながら、その実、国内の分断を煽っているだけであると指摘して、次のように述べた。
「自己責任論が蔓延する、そして弱者の切り捨てが蔓延する、ネオリベ化した社会の中で、切り捨てられて関係性が希薄な状況におかれている人たちが、(トランプ氏のような)ヘイトのメッセージにつられやすい、あるいはニセのニュースにつられやすい。人とつながっていて、人との関係性をもっているなかでは、仲間がいて話し合うことができ『いかにもこんな嘘はありえないだろう、もう少し話しあったほうがいいだろう』と、踏みとどまれるわけです」
自己責任論が蔓延し、弱者切り捨てが行われる結果、人々がヘイトに走ることは、外国人技能実習生の奴隷労働問題からも、明らかである。IWJは、実際に人権を無視した労働を強いられたカンボジア人技能実習生の方にインタビューをしている。ぜひ、こちらもご一読いただきたい。
さらに中野氏は、「(人々の)関係性が成り立たなくなってこういったこと(ヘイトやニセのニュースにつられること)が起きてきますから、草の根の運動で市民と市民がつながって、日常の生活の場において人々がつながって政治を変えていく、政治を下支えしていくことが非常に重要になってきている」と訴えた。
諏訪原氏はこれからの社会に必要なことは「トップダウンではできない」と主張し、その理由についてジェンダーを例に次のように述べた。
「女性を一括りに『女性』として表象できるのか。中身も色々なケースがあるだろうし、色々な悩みがある中で生活している。その中でトップダウンで何か政策をやるというのは、意味はあるのだけれど、それだけで解決できるものではない」
そのうえで諏訪原氏は「みんなそれぞれ違う(ことを理解した)上で、(みんなで)話していくような場をつくり、複雑なんだけれども、回答を示していく作業をやらないとしょうがない」と訴えた。
中野晃一氏には2016年2月18日に、野党共闘について岩上安身が単独でインタビューしている。会員登録のうえ、ぜひ全編動画をご覧いただきたい。
また、三浦まり氏、諏訪原健氏らが参加している講演やシンポジウムも多数取材している。次の記事もあわせてご覧いただきたい。
また、労働の現場において最も過酷な環境におかれている外国人労働者(外国人技能実習生)の現実についても、IWJは「可視化」を試みている。中埜教授が唱える「つながりの大切さ」から、あらかじめ疎外されてしまっている彼らの現実を、私たちは進んで「見に行く」必要がある。