文科省が元高等教育局長・吉田大輔氏を、利害関係のある早稲田大学に「天下り」させるべく、組織的な斡旋を行っていたことが、内閣府の再就職等監視委員会の調査によって明らかになった。国家公務員法は、公務員による天下りのあっせんや、公務員在職中に現在のポストと利害関係のある企業等への求職活動を禁じている。
2017年1月20日、監視委は調査結果を報告し、文科省へ全容解明に向けた調査報告をするよう求めたと発表した。
監視委が早大の人事担当者にヒアリングを行った際に、文科省の人事課職員が虚偽の想定問答集を作り、口裏合わせを依頼する、違反の「隠蔽行為」が行われていたことも明らかになった。
組織的な斡旋に関与したとして、前川喜平事務次官が20日付で退職し、後任に戸谷一夫・文部科学審議官を任命することが閣議決定された。また、吉田元局長も、同日付で早稲田大学を辞職した。
2017年1月20日、委員会の発表が行われた同日、東京・新宿区の早稲田大学早稲田キャンパスで、鎌田薫早稲田大学総長らによる記者会見が開かれた。
- タイトル 早稲田大学 鎌田薫総長らによる文科省元局長天下り問題に関する記者会見
- 日時 2017年1月19日(木)14:00~(国対ヒアリング)、1月20日(金)17:00〜(記者会見)
- 場所 国対ヒアリング:衆議院 第4控室(東京都千代田区)、記者会見:早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区)
- 主催 早稲田大学
「癒着はない」と強調するものの、今後の文科省OB採用の可能性については否定しない鎌田総長
吉田元局長は、2015年8月に文科省を退職後、同年10月に早稲田大学の「大学総合研究センター」の教授に採用された。なお、同センターのホームページを見ると、教授職にあるのは、吉田元局長を含めわずか2人となっている。
▲早稲田大学の研究者データベースに残る吉田元局長の担当科目。2016年度後期は、「メディア専門研究セミナーB」(大学院政治学研究科)と「コンテンツの創作と利用に関する法律知識」(グローバルエデュケーションセンター)の講義を受け持っていたことがわかる。
おりしも、早稲田大学は現在、後期期末試験を目前に控えた繁忙期だ。学生や他の教授陣には、迷惑極まりない話だろう。
記者会見にのぞんだ鎌田総長は、吉田元局長を採用したことについては、「高等教育行政に精通した人材を求めていた」とした上で、「再就職規制に関する本学の理解が不足していたことにより、文部科学省の違法な斡旋行為を止められなかったことについては、反省しております」と述べた。
▲鎌田薫早大総長(右)
これについて、IWJ記者が「天下りの責任は文科省にあるとお考えでしょうか?」と質問をすると、鎌田総長は「どっちに責任があり、どっちが被害者だという想定はしていませんが、我々は国家公務員法の処罰の対象ではない」と述べた。
また、同大人事担当者が、文科省の人事課の口裏合わせに応じたことについては、「文科省から強く依頼をされたときに、それに従わざるを得なかったということはありうること」と述べ、「ことの重大性に鑑み、2回目以降は自ら事実を供述し、委員会の調査に真摯に協力した」と、人事担当者を擁護した。
鎌田総長は、同大学が文科省出身者を専任教授として採用したのは、2008年の改正法施行後はじめてであったとし、文科省との癒着や、不適切な利益供与・便宜供与の関係については否定した。
一方で、IWJ記者が「今後も文科省のOBを受け入れるかどうか」を尋ねると、「一切官公庁のOBは採用しません、と宣言するのは早計。極めて慎重に、疑惑を抱かれるようなことのない人事を進めていかねばならないという、良い教訓を得た」と述べるにとどまった。
組織の自浄能力任せ? 勧告を行わない監視委に残る疑問
天下りの組織的な斡旋は、今回の文科省と早稲田大学の一件だけなのだろうか?
監視委の調査結果が発表される前日の19日、民進党は文科省の天下り斡旋問題について、国対ヒアリングを開いた。
▲民進党・玉木雄一郎幹事長代理