2016年12月2日、韓国・民主労総(全国民主労働組合総連盟)統一委員会委員長パク・ソンミン氏にIWJ記者がインタビューを行った。民主労総といえば、70万人の組合員が加入する労働組合のナショナルセンターであり、2016年10月末から始まった朴槿恵(パク・クネ)大統領への退陣を求めるキャンドルデモを牽引してきた「闘う労組」として知られている。
韓国の労働問題は、1997年の通貨危機とIMF(国際通貨基金)による韓国への救済金融が発端である。この時、韓国がIMFから突きつけられた条件は、緊縮政策と自由化政策だった。
- インタビュイー パク・ソンミン氏(全国民主労働組合総連盟〔民主労総〕統一委員長)
- 通訳 キム・ホンジャ氏
- タイトル 民主労総統一委員長・パク・ソンミン氏インタビュー(聞き手・IWJ 安道幹記者)
- 日時 2016年12月2日(金)17:00〜18:00
- 場所 慶尚北道星州(ソンジュ)郡(韓国)
1998年には金大中(キム・デジュン)政権が、経営上の理由によって解雇することができる整理解雇制を導入し、2006年には盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が「非正規雇用者保護法」を制定するも、一方で派遣労働者の対象業務を拡大、2年以下の雇用期間での「雇止め」にも制限を設けず、適用逃れの大量解雇をもたらした。また2011年には李明博(イ・ミョンバク)政権によって複数労働組合設立の解禁や交渉窓口の単一化が行われ、民主労組の弱体化へつながったと言われている。
IMFの介入以降、歴代政権による「労働市場の柔軟化」は、2013年2月に発足した朴槿恵政権下においても強力に引き継がれている。朴政権は、民間企業に対しては定年延長に伴って「賃金ピーク年俸制」を導入し、公共部門には「成果年俸制」を推進してきた。「成果年俸制」については、2016年12月末までに未履行の機関は、2017年度の総人件費を凍結するという強行ぶりである。これらに対し、労働界は激しく反発しており、ストライキが繰り返されている。民主労総委員長のハン・サンギュン氏に至っては、政権の目の敵にされて「暴力デモの扇動」という理由で逮捕され、現在服役中である。
今回IWJ記者がインタビューを行った民主労総統一委員会委員長のパク・ソンミン氏も、朴槿恵政権について「労働条件の改悪、労働運動の弾圧がある。非正規労働者を拡大し、財閥の利益を拡大しようとしています。韓国では5割近くが非正規労働者ですよ」と、憤りをあらわにする。またパク氏は、韓国の労働運動が、南北分断の状況において常に難しい立場に置かれてきたという。労働運動は軍事政権や保守政権から反体制派と見なされ、「共産主義者」というレッテル貼り、誹謗中傷が繰り返し行われてきたのだ。朴氏は次のように言う。
「労働者の権利や活動を制限するものが存在して、それに対して何か活動をすると『アカだ』とか『北の服従勢力だ』と呼ばれたりもします。基本的な労働者の権利というものがあるにも関わらず、それが南北分断という条件の中で抑圧されてきました」
インタビューでは、民主労組の統一委員会についてや、労働問題と南北分断の関係、歴代政権による労働政策の評価、朴槿恵政権下での「成果年俸制」の導入、また韓国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配置問題や、日本でのTHAAD配置の動き、2016年10月から始まった大規模キャンドルデモについて、話を聞いた。
▲民主労総(全国民主労働組合総連盟)統一委員会委員長のパク・ソンミン氏
▲インタビューは、THAAD配備予定地とされる慶尚北道・星州郡で、地元住民が設営した抗議テント内で行われた。
なお、2016年11月26日(土)、30日(水)、12月3日(土)には、ソウルで行われた朴槿恵大統領の退陣を求めるキャンドルデモの様子をIWJが中継している。これらの記事も、是非ご覧いただきたい。