【岩上安身のニュースのトリセツ】熊本・大分大地震でまたも露見した国民に冷淡な安倍総理の「本性」——地震対策費はわずか23億円、一方で国外には約30兆円バラマキの大盤振る舞い! 「大震災級ではない」と言い切りGWには予定通りの「外遊」、なぜ!? 2016.4.23

記事公開日:2016.4.23 テキスト
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(協力・佐々木隼也、文・岩上安身)

 都合の悪い事実からは目を背ける??安倍総理の悪癖がまたも際立っている。

 2016年4月14日に熊本県を震源としたマグニチュード6.5・最大震度7の大地震は、実はそれが「前震」で、16日にマグニチュード7.3・最大震度7の「本震」が来るという、観測史上「異例」な事態となっている(この「前震」「本震」の公式発表は間違いで、どちらも独立した「本震」である、という見方を示す識者もいる。詳しい記事は近日中にアップの予定)。

 同じ震源地で震度7が連続して2回観測されたのは、観測史上今回が初めてである。震度7の定義が誕生してから、最初に認定されているのが阪神・淡路大震災であることを思い起こせば、あのクラスの超弩級の巨大地震が間をおかず連続して起こったのだから、どれほどのエネルギーが地中で弾けたのか、うかがいしれる。

 熊本県と大分県では14日から20日午後までに、震度5以上の地震が17回、震度1以上は700回を超えた。ここまで異例づくしの事態に、気象庁も「過去の経験則が当てはまらない」「今後地震活動がどうなっていくか分からない」「活動が収まる傾向は見られない」と慌てふためいている。まさに観測史上初の「異常事態」なのだ。

 しかし、本来こうした非常時にこそ陣頭指揮をとって対策に臨むべき安倍総理は、不可解なほど動きが鈍く、陣頭指揮には消極的な姿勢を見せている。苦しむ国民の声を、安倍総理はなぜ受け止めようとしないのか。

外遊、激甚災害指定をめぐり「平時」のように振る舞う安倍政権!激甚災害指定を渋る理由は5月からの外遊を優先するため!?

▲16日の地震で発生した熊本県南阿蘇村の大規模な土砂崩れと崩壊した阿蘇大橋(写真:wikimedia commonsより)

▲今も多くの被災者が避難生活を送る(写真:IWJ撮影)

 地震活動が「今後どうなっていくか分からない」という状況にも関わらず、総理は今月4月下旬から来月5月7日まで日本を離れ、欧州各国やロシアを訪問するという予定を、ほぼ変更しない。熊本・大分地震の被害拡大を受けて予定を中止するかと思いきや、出発日を今月29日から来月1日に「短縮」するだけだという。まるで、「平時」と言わんばかりの対応だ。

 さらに、総理は熊本・大分地震の「激甚災害指定」について、来週には指定する方針を示しているものの、民進党や一部ネット上では「遅すぎる」との声があがっている。「激甚災害」に指定されれば、国により災害復旧事業の補助金の上積みがなされる。早期に指定すればするほど、地元自治体は復旧作業への予算的裏付けを確保でき、被災者の一定の安心感にもつながる。

 東日本大震災の時は、民主党政権は発災の2日後に指定を決定した。自民党へ政権交代した後も、2013年7月に安倍総理の地元である山口県と島根県で発生した豪雨災害(死者・行方不明者4人・倒壊家屋49棟)では、安倍政権は「被害額が確定していない段階」でも速やかに指定できるよう指示しており、今回の消極的な姿勢とは対照的だ。

 「自分の地元には迅速な対応をしたのに、熊本・九州はじめ九州各県に対する冷淡さはなんだ!?」という声も、当然あがっている。

 なぜ安倍総理は早期の「激甚災害指定」を渋るのか。その理由のひとつとして、先に触れた5月からの外遊日程が大きく影響しているのではないか、という指摘がある。

 しかし、今回の地震が「激甚災害」に指定されると、そうもいかなくなる。「極めて激甚な災害が発生した場合」、政府は「非常災害対策本部」を廃止し、内閣総理大臣を本部長、防災担当大臣と官房長官を副本部長とし、すべての国務大臣が参加する「緊急災害対策本部」を設置しなければならない。総理は実質上も本部長として陣頭指揮を執らなくてはいけなくなるため、外遊のために日本を離れるのは極めて難しくなる。

 今回の外遊は、安倍総理が議長を務める、5月26日、27日両日主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、サミット参加国であるドイツやイタリア、フランスなどで首脳会談を行い、さらにベルギーでは同じくサミットに参加する欧州連合首脳とも会談し、サミットの議題の調整を図るものだ。

▲伊勢志摩サミットHPより

 伊勢志摩サミットで、リーダーシップを発揮しつつ、アベノミクスの成果(現状の景気低迷の打開策)を打ち出すために、安倍総理はどうしてもこの外遊での「仕込み」を怠るわけにはいかない。

 もし本当に、外遊を優先させるために「激甚災害指定」を渋っているのだとしたら、安倍総理は自身の威信と、アベノミクスの成功という「幻想」を演出するためだけに、被災地を見捨てることになる。許されることではない。

熊本・大分大地震は「大震災級ではない」!?消費税増税のための「過小評価」か

 また、「激甚災害指定」を渋る理由としてもう一つ考えられるのが、安倍政権が来年2017年4月に予定している、消費税増税への影響だ。

 安倍政権は、終わりの見えない今回の地震で日本経済も大きく揺れているにも関わらず、消費税増税については予定通り引き上げる姿勢を崩さない。

 18日の国会で、「引き上げを延期すべきでは」と問われた安倍総理は、「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と驚くべき答弁。菅官房長官も20日の会見で、「(消費税税増税について)現時点では全く変わらない」「そうした状況(リーマン・ショックや大震災のような事態)ではないと判断している」と明言した。

 震度7の巨大地震に立て続けに見舞われたというのに、「大震災級」ではないとし、まるで「たいしたことはない」と言わんばかりの素ぶりをするのはいったいなぜなのか。おそろしく無神経な発言ではないか。

 消費税増税を延期しないために、今回の地震は「大震災級ではない」としておきたい??そんな思惑がこの無神経な言葉の裏側に張り付いているのではないか。激甚災害指定に不可解なまでに消極的な姿勢を見せるのも、指定することで震災の規模の大きさを政府が認めたら、増税がしにくくなる、そんな「思惑」を指摘する声もある。大災害の被災者支援よりも、庶民を苦しめる増税の方が何より優先するのかと、その酷薄さに肌が粟立つ。

地震発生直後に「タックスヘイブン」パナマへの2800億円供与を決定した安倍政権!一方地震の支援予算はわずか23億円…

 被災地・被災者に冷淡な安倍総理。その一方で、海外では対照的に、これでもかと日本の血税をバラまいている。これがまた、信じがたい。安倍総理はいったい、どこの国の総理なのか。

 特に許しがたいのは、今回の地震の直後にも、数千億円の「バラマキ」を決定していることだ。しかも、その支援先は、「最悪のタックスヘイブン」として今世界中を震撼させているパナマなのだ。言うまでもなくパナマは、現在、世界中を震撼させているパナマ文書の出所である。同文書には、租税回避を行っている富裕者や大企業の実名が載っており、日本人名も400名の名前が記載されているという。安倍政権は、このパナマ文書に関して、「調査すらしない」ことを決めており、徹底的に素知らぬふりを決め込んでいる。

 なお、経団連の榊原定征会長は、欧州域内のグローバル企業に対して納税情報の提示を義務付けるというEUの新たな提案は「協調を欠く行動だ」と指摘。「納税者に不確実性を高め、国境をまたぐ貿易・投資を阻害する」と強く批判した。

▲ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)のHPより

 世界中を飲み込んでゆく経済の津波のごときグローバリズム。その災厄に見舞われた国々では、国民国家の土台が揺さぶられ、掘り崩されて、富める者と貧しき者との格差が急拡大してゆく。

 しかも、ほんの1%の富める者たちは、ずる賢く立ち回り、祖国に税を納めず、富を国外に持ち出してタックスヘイブンへ隠す。こうした租税回避によって、当然、日本を含む各国の財政は逼迫し、そのあげく、国内にとどまって、汗を流して働き、つつましく暮らし、国内で消費し、まじめに税を納める大多数の国民に対しては、社会保障給付は切り下げられ、税負担は重くなるばかりである。

 国内で働く庶民のように、「取りやすいところから取る」が、ありあまる富をもち、ずる賢く立ち回る連中のような「取るべきところからは取らない」。こうしたグローバリズムがもたらした不公平・不公正な歪みの拡大の流れの中に、庶民にツケを回す日本の消費税増税政策も位置している。安倍総理がひたすらこだわっているのは、まさにこれ。富める者の租税回避の穴を庶民にツケ回す政策だ。富める者が税を払わなかった、その穴埋めをさせられているのだ。

 熊本・大分大地震発生の翌日15日、政府はパナマ運河を横断するモノレールの建設事業に、2800億円の円借款を供与することを決めた。

 一方で、20日に政府が閣議決定した熊本・大分大地震支援の予算は、(現時点で)わずかに23億円だ。20日までに59人の命が失われ、8600棟の家屋が損壊し、いまだ9万3000人が避難生活を送り、多くの地域でライフラインが破壊され、さらに今後も同規模の地震が起きる可能性もあるという状況に対し、現時点でとはいえ、23億円という予算はあまりに少ないのではないだろうか。その一方で、海外に、しかもパナマ文書が流出したタックスヘイブンの巣窟・パナマに2800億円をバラまくという感覚には、唖然とするほかない。

総額30兆円!安倍総理就任からこれまでのバラマキの数々

 安倍総理の「日本国民の生活を無視した」海外へのバラマキは、今に始まったことではない。安倍政権発足からのバラマキを列挙してみると、その「大盤振る舞い」ぶりに驚く。

 2013年1月には、ミャンマーに対しインフラ整備名目で、日本への支払いが滞っている債務のうち新たに2000億円を免除するほか、円借款と無償資金協力を合わせて総額910億円の支援を決定。4月には中東・北アフリカ地域に対し、新たに総額2100億円規模の支援を行うことを発表した。

 また9月には女性の保健医療や紛争下での権利保護などに3年間で30億ドル(約3000億円)超のODAを供与することを表明している。さらに12月にはASEAN支援のために5年間で2兆円規模のODA実施も発表した。

 その後もバラマキの勢いは止まらない。

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  1. 野田 和則 より:

    大切な情報を正確にわかりやすく伝えて下さり、ありがとうございます。シェアさせて頂きました。

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