「海外では医療費の自己負担ナシが珍しくない」――意図的なミスリード?「日本の医療費40兆円を突破」の“トリック”を医師・本田宏氏が暴く! 2016.1.12

記事公開日:2016.2.4取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田充)

※2月4日テキストを追加しました!

 「医療費が40兆円を突破した」──。

 2014年度の医療費の総額(患者負担と保険給付)が、厚生労働省から発表された昨年9月、こういった調子のタイトルが、新聞紙面に踊った。これを見て、多くの読者はどう思ったか。「これは大変だ。日本の医療費を早急に削らねば」と受け取ったのではないか。

 2016年1月12日、神戸市内で講演した本田宏氏(医療制度研究会副理事長、医師)は、国民がこうした考えを抱けば医療費を抑制したくてしょうがない国の思う壺だ、と力を込める。政府による、財政健全化主義を背景にした「公費削減のメス」は、人々の健康を支える医療分野には馴染まないとの信念をにじませた。

 本田氏は、「海外の先進諸国では、医療費の自己負担ナシが珍しくない」と発言。関連するデータを示して説得力を持たせつつ、日本の医療費は問題視すべき水準ではないと断言した。

■全編動画

  • 講演 本田宏氏(NPO法人医療制度研究会副理事長、医師)
  • ゲスト 雨松真希人氏(「保険で良い歯科医療を」全国連絡会代表世話人、歯科技工士)

「週の平均労働時間が70時間」「5年以内の離職率が75%」~歯科技工士が「業界の窮状」訴える

 本田氏の講演に先立って、雨松真希人氏がマイクを握り、自身の職業フィールド(歯科技工士界)の厳しさを訴えた。

 「週の平均労働時間が70時間」「5年以内の離職率が75%」などと、歯科技工士の実態を明かす雨松氏。背景にあるのは、歯科の診療報酬の伸びの鈍さに由来する低賃金と、それに根ざした慢性的な人材不足だという。歯科技工士の年齢構成を見れば、今や5割が50歳以上だという。

 「医療費の伸びはニュースに取り上げられるが、歯科医療費に関しては、(歯科をめぐる低医療費政策が響き)伸び率が低い。高い学費を奨学金で納めて専門学校に入学し、技工士の国家資格を取って卒業した、いわば多額債務者の若者が、数年で別の業界に移らざるを得ないケースが一般的である。近い将来、半数以上が60歳以上になっても、ちっとも不思議ではない」

 雨宮氏は、状況の改善には、1. 低所得世帯の受診抑制の緩和につながる、医療費のうちの患者負担の大幅軽減、2. 保険診療適用枠の拡大、3. 診療報酬の引き上げ──の3つが必要であると力説した。

 続いて登壇した本田氏は、「医療費40兆円を突破」とのタイトルの、昨年9月3日付の日本経済新聞紙面をスクリーンに映し出し、「このタイトルから『日本の医療費は安いから、もっと診療報酬を上げねば』という正しい考えに至る一般人は、まずいまい。『40兆円』という年間の医療費の総額がクローズアップされているが、そのうち税負担は38%にすぎない」と口調を強めた。

「海外では医療費の自己負担ナシが珍しくない」~盲腸手術におけるイギリス、カナダと日本の比較

 日本の医療費の伸びを問題視する必要などまったくない。本田氏はそう言い切る。

 「日本だけのグラフを見れば、確かに右肩上がりだ。が、日本の医療費の対国内総生産比率を見ると、(日本と欧米の34先進国が加盟する)経済協力開発機構(OECD)平均を、わずかに上回っているにすぎない」

 本田氏はさらに、「日本はこれほど高齢化が進展しているのに、仏独やスウェーデンといった、他の高齢化国に比べると医療費の伸び率は低い」と展開し、「日本の新聞・テレビは、とにかく医療費を抑え込みたい国に不都合になる情報を国民には与えない」と批判した。

(…会員ページにつづく)

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「「海外では医療費の自己負担ナシが珍しくない」――意図的なミスリード?「日本の医療費40兆円を突破」の“トリック”を医師・本田宏氏が暴く!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「海外では医療費の自己負担ナシが珍しくない」――意図的なミスリード?「日本の医療費40兆円を突破」の“トリック”を医師・本田宏氏が暴く! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/282024 … @iwakamiyasumi
    日本の新聞・テレビは、国に不都合になる情報を国民には与えない
    https://twitter.com/55kurosuke/status/695210201389993984

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