やらせ疑惑でNHKを厳重注意した総務省・高市大臣、11月10日の記者会見でBPOの意見書に反論! 配達ミスの続くマイナンバー、閉会中審査については「分かりません」! 2015.11.10

記事公開日:2015.11.11取材地: テキスト動画
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(城石愛麻)

※11月11日テキストを追加しました!

 「放送法に抵触する事案があった場合には、放送法を所管する立場から、行政指導等の必要な対応を行うものでございます」――。

 いったい、いつから、この国の放送事業者は、政府の「御指導」を仰がねばならなくなったのだろうか? NHKの報道番組「クローズアップ現代」の放送内容に「やらせ」があったとされる問題で、NHKに「厳重注意」を行った総務省・高市早苗大臣は、2015年11月10日の記者会見で、放送事業へのあからさまな政治介入を正当化する趣旨の発言をした。

 国の公共放送たるNHKが「やらせ」をしていた、という一点においても重大な問題ではあるが、それを受けた政府が放送事業者に対し「行政指導」をしたのであれば、これは一企業の問題を超えた、日本の民主主義の根底に関わる事態に発展しかねない。

 10日の記者会見では、もう一点、通知カードの配達ミスが相次ぐマイナンバーについて、IWJ記者から質問を投げかけた。前日9日、総務省は日本郵便の高橋亨社長に対し、「郵便局において配達等に携わる職員への指導の再徹底、職員指導・配達体制の強化を強く求める」として「厳重注意」を通達した。

 総務省は、通知カードの配達ミスが、国民のマイナンバーに対する「不安を惹起させかねない」として神経をとがらせる。2015年11月2日に日本郵便に再発防止を要請した後も、ミスは相次ぎ、要請からわずか1週間後に「厳重注意」を発令するにいたった。

 配達ミスはあってはならないとして、日本郵便を締め付ける一方で、マイナンバー制度に責任を負うのは総務省のはずである。

 総務省にこそ、一連のミスの説明責任があるのではないか? IWJ記者は、10日の記者会見で、「閉会中審査で議論をする予定はあるのか?」と質問。高市大臣の答えは、「今日私が答弁をするべく通告を受けている衆議院予算委員会での質疑の中には、その内容はなかったと承知しています。明日の参議院では分かりません」とするだけであった。

■ハイライト

  • 日時 2015年11月10日(金) 9:30頃~
  • 場所 総務省(東京都千代田区)

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税金で賄われる公共放送が「やらせ」~問題の背景となるNHK「クローズアップ現代」問題

 政府が放送事業へ介入したとされる問題の発端は、NHKの報道番組「クローズアップ現代」で2014年5月14日に放送された「追跡 “出家詐欺” ~狙われる宗教法人~」の中で、NHKによる「やらせ」があったとされるものだ。

 番組の内容は、寺院で「得度」の儀式を受けると、戸籍の名前を変更でき、これを悪用した「出家詐欺」が横行している、という実態をドキュメンタリーで伝えるものであった。

 「やらせ」とされたのは、番組中に出てくる「多重債務者」が「ブローカー」を介して得度し、名前を変えて住宅ローンなどの詐欺を行う様子だ。この「ブローカー」男性が、今年の3月、「週刊文春」の取材で、「自分はブローカーではなく、記者にブローカーの演技をするように依頼された」などと告発したことで、やらせ疑惑が浮上した。

 これ以降、NHKは局内に調査委員会を設置し、番組関係者にヒリング調査を行った。そして4月28日、「過剰な演出」や「実際の取材過程とかけ離れた編集」があったとしつつも、「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』は行っていない」とする結論を発表した。

「放送倫理の番人」BPO、「重大な放送倫理違反」

 NHKのこの問題を第三者機関の立場から検証したのが、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)だ。BPOは、NHKと民放連により、2003年設置された機関である。

 BPOは、11月6日に意見書を出し、議論となった「クローズアップ現代」の番組内容について、「視聴者に著しい誤解を与える致命的な問題があった」とし、「重大な放送倫理違反」を認めた。

 一方のNHKは、11月6日、BPOの意見を受けて、「再発防止策を着実に実行して、信頼される番組作りにあたっていきます」とコメントしている。

 もちろん「やらせ」や「裏付けの不十分な取材」などは、メディア業界全体に共通する重大な問題であり、これだけでも十分大きな事件だが、この問題はこれだけでは終わらなかった。

「事情聴取」に「厳重注意」! 表現の自由など「どこ吹く風」の政府

 実は、このやらせ疑惑を受け、自民党の「通信戦略調査会」が、NHKに事情聴取を行ったのだ。また、NHKの調査委員会が報告をした4月28日、総務省の高市大臣が、NHKの籾井勝人会長に宛てて、「厳重注意」を出していた。

 「厳重注意」の内容は、番組のやらせが『放送法』に反するものとして、「(放送法の)規定に抵触するものと認められる。よって、今後、このようなことがないよう厳重に注意する」というものだった。

 高市大臣はさらに、「情報の共有や、企画や試写等でのチェックなどについて、誰が、いつ、どのように実行するのか。踏み込んだ対応が求められる」として、厳しい生活指導を行う体育会系教師よろしく、NHKに迫っている。

政府介入は「放送の自律を侵害する行為」! BPOが政府の「傲慢」を糾弾!

 この総務省の「厳重注意」について、BPOは11月6日の意見書の「VI. おわりに」の中で、「行政指導という手段により政府が介入することは、放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのものとも言えよう」として、強く非難した。

 憲法21条の「表現の自由」は、放送の自由にも適応されると解釈されており、放送法1条2項は、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」と定めている。

 BPOは、ここでいわれる「不偏不党」や「真実」や「自律」は、放送事業者側の義務を定めたものではなく、時の政府が政治的な立場から放送に介入するのを防ぐために保障されたものだ、と主張する。

 そして、総務省が厳重注意の根拠とした放送法第4条第1項各号についても、政府が放送内容に干渉するための根拠となる「法規範」ではなく、あくまで放送事業者番組編集にあたる際の基準となる「倫理規範」である、とした。

 よって、「政府が放送法を根拠に、個別の番組に介入することは許されない」とし、総務大臣による「厳重注意」は「極めて遺憾である」と、BPOは断言したのだ。

BPO委員長代行・是枝裕和監督、「BPOは政府の『お手盛り』に堕さない」!

 BPOの委員長代行を務める、映画監督の是枝裕和氏は、自身のブログでも、政府による放送法の悪用に反論を述べている。

 是枝氏は、放送法が敗戦のわずか5年後に規定された歴史を振り返り、「『公権力』と『放送』が結託したことによってもたらされた不幸な過去への反省からこの『放送法』はスタートしているわけです」としたうえで、放送法を「民主主義の成熟の為に『権力』が『公共』に対して示すべき大人の対応だと思います」と評した。

 そして、放送局の自主自律を守るため、BPOが決して「お手盛り」に堕すことなく、総務省の放送への介入を批判した意見書を、「力作」だと語った。

「最終判断は政府」主権在民否定の姿勢を崩さぬ政府

 こうした、BPOや是枝氏からの猛烈な批判を受けてもなお、政府は強硬姿勢を崩さない。

 11月10日に行われた記者会見で高市大臣は、「放送法を所管する総務省は、放送事業者に対して、放送法の規定の遵守を求めるという立場にございます」と、とびきりの「上から目線」を披露し、続けて、「ですから、放送法に抵触する事案があった場合には、放送法を所管する立場から、行政指導等の必要な対応を行うものでございます」として、BPOの意見を退けた。

 さらに、BPOが放送法を「倫理規範」とした点についても、「過去に国会でも答弁されているとおり、正しくは『法規範性』を有するものでございます」と反論している。

 高市大臣は、11月6日発表の「NHKの番組に対するBPOの意見についての総務大臣談話」でも、放送法における番組準則に違反したかどうかを最終的に判断するのは、総務大臣だ、としており、今回の記者会見での発言は、BPOの意見書を再度否定する形になったものだ。

 ちなみに、11月9日に行われた自民党記者会見で、谷垣禎一幹事長は、「報道の自由があるから一切やらせに対して口をつぐんでいるというのがよいとは私は思いません」と述べた。また、NHKによると、菅義偉官房長官も、11月9日の記者会見で、BPOの意見書について「指摘はあたらない」と断言した。

 さらに、朝日新聞によれば、安倍首相も10日の予算委員会で「単なる倫理規定ではなく法規であり、法規に違反しているのだから、担当官庁が法に則(のっと)って対応するのは当然」と述べている(http://www.asahi.com/articles/ASHCB5KPHHCBUTFK00L.html)。

「最高責任は私」と主張する安倍政権、「なんでも政府に決めさせろ」で国民は納得しない

 「最終判断は、政府にある」。高市総務大臣はこれまでに、マイナンバーのセキュリティ問題や、放送法の問題に関し、自らの「責任」を強調してきた。

 安保法制の議論の際に、「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ」(2014年2月14日 朝日新聞)と言い張った安倍総理の言葉とも響きあう。

 しかし、政府の言う「責任」とははたして、何を意味するのだろうか? 「最後は国が決める」、「政府が決める」。国民の耳には、「なんでも政府に決めさせろ」と言っているようにしか聞こえない。

 この国のあり方を決める「主権」は、いつから政府のものになったのか? 集団的自衛権の行使容認、安保法制の採決の「強奪」だけにとどまらない、政府の圧力が日に日に強まっているようだ。

 IWJ代表でジャーナリストの岩上安身は、先にアップした早稲田での集会でスピーチした際、トーマス・ジェファーソンの言葉を引いて「真の報道なくして真の民主主義は存在しない!」と訴えた。報道に政府が介入するようになれば、失われるのは報道の自由だけでなく、民主主義そのものだ。現政権がやろうとしていることが、どれだけ恐ろしいことか、今回の事件からだけでも、窺い知れるのではないか。

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「やらせ疑惑でNHKを厳重注意した総務省・高市大臣、11月10日の記者会見でBPOの意見書に反論! 配達ミスの続くマイナンバー、閉会中審査については「分かりません」!」への3件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

      総務大臣の高市早苗が言う放送法に抵触する“事案”とは、安倍晋三内閣にとって都合が悪い内容全てのことである。日本記者クラブにおける記者会見に於いて安倍晋三は、1993年の自民党下野について自らの父親である故安倍晋太郎も関与したリクルート事件を始めとした自民党の金権腐敗体質が招いたにもかかわらず報道のせいにした。その時彼がターゲットにしたのは一つの民法キー局である。当時を知る多くの中年以降の有権者にとって、安倍晋三の日本記者クラブでの記者会見に於ける1993年の自民党下野の原因についての発言は詭弁どころか、嘘八百の御苦労さんでしかない。安倍晋三も当時父親の秘書をやっていたクセによくも言ったものだ。
     何故、安倍晋三は失笑を買うような嘘の発言をしたか甚だ疑問であったが、安倍晋三の嘘を事実としてマスコの方を中傷するブログやYoutubeへの投稿を見ていて合点がいった。それは、新聞やテレビや週刊誌を見ない若者に対して嘘を事実として教え込むと云う安倍晋三内閣や一味のいつもどおりのやり方であった。今回の高市大臣も安倍晋三と同じ穴の狢で、放送法をたてに報道を自分たちの思い通りに操ろうとしているの過ぎない。イカレた大臣だ。
     安倍晋三の嘘を事実としてマスコの方を中傷するYoutubeの投稿者でアクセス数が多いものにKAZUYA Channelがある。明らかにプロが作った撮り方と構成なのでこの投稿者には注意を払うべきで、マスコミは関係者について取材を進めるべきである。出版や講演もセットにされており広告代理店が描いたとしか結論ない動きをしている。SEALDs批判をするなど安倍晋三一味のカネと力が動いていることは間違いない。

  2. 武尊 より:

    安倍独裁者の次に現れる独裁者は何所まで行っちゃうんだろう(恐)
    官僚と政治家が結託すれば、全てを「国に決めさせろ」になるに決まっている。
    これは何所の国でも起きている。
    「山河全紅国」だって「金一家国」もそう!
    今の所の日本が違うのは、盾突くと拘束され牢屋に入れられるか、撃ち殺されて犬に食わされてしまうなどという事にまではなっていない事だけ、、。
     最早日本は民主主義国家では無くなりつつ有るってことだ、、。

  3. 武尊 より:

    間違えました!
    >拘束され牢屋に入れられる
    はもう始まっていますね!!違いは行方不明にまではなっていない位かな??

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