「アジアの緊張を高めているのは、間違いなく我が国の総理大臣と呼ばれる男、それを支える閣僚たち、武器輸出で儲けようとしている大企業、特に経団連だ!」――。
安保法案の強行採決が刻一刻と迫り来る中、東京・渋谷駅のハチ公前広場で、ONE PEACE FEST 2015が開催され、生活の党と山本太郎となかまたち代表・山本太郎氏が登壇した。久々の晴れ間に恵まれた東京の夜空のもと、山本議員は集まった参加者を前に、この国の「暴政」のありのままの姿を、次々と暴いていった。
「戦争法案」をめぐる一連の闘いにより、支持率を落としてきた安倍政権だが、「功績」としてアピールし続けるのが、アベノミクスによる景気回復だ。だが、山本議員は、大多数の国民が、実際にはアベノミクスの恩恵など受けていないことを、声を大にして訴えた。
国民がアベノミクスの恩恵を受けていない原因について、山本議員は、「政治はみなさんを見ていない」としたうえで、「選挙時に金銭援助をしてくれた大企業と政治の結びつき」が問題の根本にあることを指摘した。
消費税増税、労働者派遣法の「大改悪」、残業代「ゼロ」法案、武器輸出の拡大、そして安保法案――。安倍政権がこれまでに進めてきた法案は、「1%のリッチ」のためにあり、「99%のその他の人たち」の首を絞めるものだ。山本議員は、「今だけ、カネだけ、自分だけ」のために動くこの国の政治を、厳しい口調で非難した。
この国の、このような「異常事態」をどうしたら良いのか。山本議員は、「来年夏の参議院選挙でねじれを作るしかない」と断言した。「自公」が衆院でも参院でも、圧倒的な議席数を保っている現状では、どんなにとんでもない法案でも、「数の力」で通ってしまう。それを端的に示すのが、2015年9月11日に衆院本会議で可決され成立した「改正労働者派遣法」だ。
前回2014年12月の衆院選では、有権者の52.66%しか投票をしていない。山本議員は、残りの約50%が投票に行けば、国民をなめきった政治の現状は「ひっくり返せる」として、「そのために野党が一つになるしかない」と意気込み、人々のさらなる政治参加を期待した。
- 出演 沖野修也/DELI/山本太郎/三宅洋平/喜納昌吉ほか(敬称略)
- タイトル 「ONE PEACE FEST. 2015」
- 日時 2015年9月12日(土)18:00〜
- 場所 渋谷駅ハチ公前(東京都渋谷区)
- 主催 ONE PEACE FEST. 実行委員会(詳細)
すべては「経団連」のカネ儲けのため――「国民」の首をしめる日本の政治家
「参議院議員になって2年、永田町の最前線ではっきりしたのは、政治はみなさんを見ていないということ」
安保法制の国会質疑で、安倍総理や中谷防衛大臣を相手に舌鋒鋭く迫ってきた、「生活の党と山本太郎となかまたち」代表・山本太郎氏が、渋谷のハチ公前広場に集まった大勢の聴衆を前にして、日本の政治の「暗部」を容赦なく晒した。
「税金をたくさん払った自分が受けられるサービスはない、どうしてこんなことになるんでしょう?」と問いかけた山本議員は、「選挙時に金銭援助をしてくれた大企業と政治の結びつき」を指摘し、『経団連』の存在をその根本原因にあげた。
たとえば、消費税8%増税。政府は当初、増収分はすべて社会保障に割り当てると約束していたはずだが、実際には増税分の大半が景気対策や大企業減税に使われた。一方で、年金や生活保護給付額は下がり、弱い立場にある人ほどしわ寄せをくらっている。
「改正労働者派遣法」と、「残業代ゼロ法案」は、労働者の首を絞める法案だ。
これまで、企業は、原則一年、最長三年の制限付きで派遣労働者を受け入れることが決められていた。ところが、2015年9月11日に衆院本会議で成立した「改正労働者派遣法」では、企業は3年ごとに人を入れ替えれば、ずっと派遣を使うことができるとされた。
派遣労働者を無期限で使えるとなれば、企業は正社員よりもコストの低い派遣労働者を取っかえひっかえしながら、雇いかえてゆくことになるだろう。派遣労働者には3年で雇い止めとなり、正規社員になる道が閉ざされる。非正規社員の数が増え、今まで非正規であった人が正社員になれる可能性も下がり、不安定な雇用が固定化する恐れがある。
「残業代ゼロ法案」こと「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」は、労働者の賃金を勤務時間ではなく成果にもとづき決定しようというものだ。政府が成長戦略の目玉の一つとしているものであり、生産性向上につながるとされる。だが、それは資本にとって都合のいい論理だ。過労死につながりかねないほど、残業代なしで働け、といっているに過ぎない。
法案が成立すれば、年収1075万円以上の者に適用されるが、適用範囲が拡大されないとも限らない。また、裁量労働制と生産性の関係についても疑問の声は多い。さらに、この法案では、超過勤務に対する手当を払う必要がないため、残業代で生活費を稼いでいた人にとっては、「残業代ゼロ法案」として、不安の声が広がっている。
このような「悪法」がまかり通ってしまう背景には、経団連の強い要求がある。例えば、山本議員は、「経団連の提言では2025年までに、消費税率を19%にしろと言っている」と言う。また、もっと安い労働力で働ける人を大量につくりたいのも、経団連の本心だ。「労働者の体を壊せという法律でしょ」として、山本議員は激しく批判した。
大企業と経団連のために作られた法案は、これだけではない。
2014年4月1日に閣議決定された「防衛装備移転三原則」は、武器の輸出を原則禁止していたそれまでの方針を一台転換し、(1)国際条約の違反国などには輸出を禁止する(2)輸出を認める場合を限定し、厳格に審査し情報公開する(3)目的外使用や第三国への移転が行われないよう適正管理する、という三条件を満たせば、武器の輸出が認められる、としたものだ。
だが、こんな歯止めに何の意味があるだろうか?武器を売って良い国と、悪い国という基準は、どうやって決めるのだろうか?いったん輸出した武器が、転売されることを現実的にどうやって監視し、それを食い止めるのか。武器であろうとなかろうと、売却して所有者が移転したモノの「その後の行方」をコントロールすることなど、ほとんど不可能であろう。
そもそも、何のために武器を輸出するというのか!? 山本議員は、「武器でもってもっと儲けさせろという経団連の意向」が大きく働いている、と断じる。大企業や経団連の言い分は、「企業がもうかれば給料が上がり雇用が増える」という「トリクルダウン」の理屈を持ち出すが、山本議員は、「今までそんなにうまくいったことがあったか?」と振り返り、「トリクルダウン」が決して実現しない空約束であることを指摘し、「今だけ、カネだけ、自分だけしか考えていない」と声を荒げた。
企業の利益再優先の政治が行われているという一番の好例は、この国の奨学金制度である。日本で唯一の公的奨学金は、日本学生支援機構による「貸与」の奨学金だ。貸与であるために、学生は返還義務を負うことになる。また、貸与型の奨学金を借りる学生のうち、7割の学生は「利子付き」で借りている。そして、返還が滞れば「延滞金」が課されることになる。
山本議員は、奨学金によるビジネスの問題を追及してきたが、その中で、2012年度に日本学生支援機構の延滞債権回収業務を受託した、「日立キャピタル債権回収株式会社」と「エム・ユー・フロンティア債権回収会社」が、2社合計で40億円以上の債権を回収し、3億円以上の売り上げをあげていることを突き止めた。
奨学金返済に苦しむ学生が後を絶たない一方で、行政機関と企業が一体となって巨額の利益を稼ぐシステムを突き止めた山本議員は、「この国の政治は、若い人たちを企業への恩返しに使おうとしている」と憤った。
「次の夏にねじれをつくれなければ、本当に危ない」