「なぜ、あなた自身が主語で謝らないのか。この場でお詫びをしたらどうなんだ。安倍首相は不誠実だ」――。
2015年8月24日の安保法案を審議する参院特別委員会で、社民党の福島みずほ議員が、戦後70年にあわせて発表された「安倍談話」を取り上げ、安倍総理に歴史認識を質した。
安倍談話が、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としてはもう二度と用いてはならない」と他人事のように述べたことを踏まえ、福島議員は安倍総理に「日本の行為を侵略と認めるか」と詰問した。
安倍総理は、「中には侵略と『評価される』行為もあったと思う」「侵略という言葉の定義に当てはまればダメであるが、当てはまらなければ許されるというものではない」と答え、やはり自身の「侵略」の定義を保留。曖昧な答弁に終始する「不誠実」な姿勢を見せた。
さらに福島氏は、安保法案について、自衛隊の海外での武力行使を可能にするものであることを指摘し、「談話で美辞麗句を並べながら、こんな戦争法案を作る。安倍首相は国民をだましている」と糾弾し、安保法案の撤回を訴えた。
質疑は九州電力・川内原発(鹿児島県)の再稼働の問題にも及んだ。2015年8月11日に川内原発が再稼働されたわずか4日後、約50キロ離れた桜島の噴火警戒レベルが、3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げられた。
専門家は、日本における20世紀以降最大の火山災害「大正大噴火」(VEI5)クラスの噴火が起こりうると警告していたにも関わらず、原子力規制委員会・田中俊一委員長は「(川内原発の)運転期間中に影響が及ぶようなことはない」と断定。従来の見解どおり、巨大噴火の予兆はモニタリングでつかめるといった見方を改めて示した。
福島氏は、「手前勝手な都合がいい理屈だ」として、再稼働撤回を強く訴えた。
以下、福島みずほ議員の質疑全文を掲載する。
福島みずほ議員、質疑全文
福島みずほ議員「社民党の福島みずほです。まず、桜島の噴火の件は、大変心配をいたしました。被害に遭われた皆さんに心からお見舞いを申し上げます。川内原発の火山噴火対策についてお聞きを致します。
規制委員会はたった1回の審査で、九電の運転期間中に周辺火山が巨大噴火を起こす可能性は、十分に低いとする主張を妥当とし、巨大噴火の兆候を把握できるとの説明を認めました。
しかし、日本火山学会が、巨大噴火の観測例が少なく、兆候の把握は困難として、2014年11月に審査基準の見直しを求めて、まとめた提言があります。なぜそれを聞かないんですか?」
規制委員会・田中俊一委員長「川内に影響のある火山については、周辺火山について、すべて調査しまして、そのことでこの運転期間中に影響は及ぶようなことはないという判断をしております。桜島の火山について見ると、いわゆる桜島薩摩噴火というのが約1万3千年前に起こっております。これが最大です。歴史上。
これで、この時に、川内の原発付近に火山灰が積もったと。それがだいたい12センチ程度で、それを15センチ程度まで積もるという事を仮定して、それでも安全基準が確保できるようにしたということがあります。
それから、予知の問題ですけれども、これは、カルデラ噴火についての問題でありまして、カルデラ噴火というのは、南九州、九州全域に影響を及ぼすような噴火になります。こういったものは、過去観測例がないということで、正確な予測技術が確立されているわけではないけれども、先日も私どもの委員会で設けました、火山の専門家の話し合いのなかで、ある程度の変化は見られると。
要するに数万年に一回の火山ですので、かなり前からその変化をきちっとモニタリングすることによって、見られるということは皆さんご同意いただいております。なおかつ、そういったことはありますけれども、そもそもこの川内原発30年の間に、こういったものが起こるということはないという判断をしております。
ですから、そういったことで、それでもなおかつモニタリングをして、念には念を入れて、予兆が見えた場合には予め、空振り覚悟で原子炉を止めるという判断をさせていただこうということでご了解いただいているところでございます」
福島議員「はい。鹿児島地裁の一審判決も予知はできないということについては、判決を出しております。自分たちが運転中には、そんな巨大噴火が起きないというのは手前勝手な都合がいい理屈ではないでしょうか。
火山学者の人たちは、予知はできない。巨大噴火の予知はできないと言っています。そもそも、こういう危険な原発の再稼働をすることについて、強く抗議をし、再稼働撤回すべきだということを強く申し上げたいと思います。
次に、70年談話についてお聞きを致します。総理、日本の満州事変以降の行為を侵略と認めますか?」
安倍総理「今回の談話は、『21世紀構想懇談会』において、有識者の方々が共有した認識であります。その報告書の上に立って作成したものであります。報告書にもある通り、中には侵略と評価される行為もあったと思います。
だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉をあげた上で、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としてはもう二度と用いてはならないということを先の大戦への深い悔悟の念と共に誓ったと表現したわけでございます。
先の大戦における日本の行ないが、侵略という言葉の定義に当てはまればダメであるが、当てはまらなければ許されるというものではないわけでありまして、かつて日本は世界の大勢を見失い、外交的経済的な行き詰まりを力の行使によって打開し、あるいは、その勢力を拡大しようとしたわけでありまして、その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが今回の談話のもっとも重要なメッセージであります。
その上で、具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては、歴史家の議論に委ねるべきであると、このように思います。重要な点は、如何なる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならないということでありまして、これが、私たちが過去から学び教訓とし、反省すべきことであります」
福島議員「結局、植民地支配もそうですが、侵略については、判断しないと。総理は、満州事変以降が侵略だと認めないということですね。イエスというふうに答えてください。今の答弁はそうですね?」
安倍総理「今の答弁はそういう単純な答弁ではないわけでありまして。今申し上げましたようにですね、今申し上げましたように、端的に申し上げましょう。報告書にもある通りですね、中には侵略と評価される行為もあったと思うということでございます。
まあ、だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉をあげたうえで、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならないことをですね、先の大戦への深い悔悟の念とともに誓ったと表現したわけであります。その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが、今回の談話のもっとも重要なメッセージであります」
福島議員「委員長、問いに対して、なぜ総理は、答えをしないんですか? 侵略戦争と認める、認めない、分からない。でも、これは事変、侵略、戦争としか書いてなくて、侵略戦争だと認めてないですよ。
有識者会議は、はっきり侵略だというふうに認めていて、侵略だとなぜ認めないんですか。総理の今の答弁も不誠実ですし、安倍総理談話も不誠実ですよ。
もう1つ、自分の言葉でお詫びをしていません。繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。何故、総理自身がお詫びをしないんですか? ここでお詫びをされたらどうですか?」
安倍総理「先の大戦における行為に対する痛切な反省と心からのお詫びの気持ちはですね、戦後の歴代内閣が一貫して持ち続けてきたものであります。そうした気持ちが戦後50年にあたり、村山談話で表明され、さらには戦後60年を機に、小泉談話においても、その反省とお詫びの気持ちは引き継がれたわけであります。こうした歴代内閣が表明した反省とお詫びの気持ちを私の内閣においても、揺るぎないものとしてですね、引き継いで行くことを明言をしているわけであります。
そのことを今回の談話の中でも明確にしたわけであります。他方ですね、戦争となんら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちが、謝罪を続けなければならないような状況を作ってはならないと。これは、今を生きる私たちの世代の責任であると、このように考えているところでございます」
福島議員「そういう質問してないですよ。あなたが何故、あなた自身が、主語で謝らないのか? ということを聞いてるんです。他の人が謝り続けてきましたってことではないですよ。それから、今だって生きて、被害を受けている人たちがいる。何百年経とうが、謝らなければならないことがありますよ。総理、なぜ自分の言葉で謝らないんですか?
このままだと、謝らないでしょうが、どうして自分の言葉で謝らないか、この安倍談話は、まさに不誠実極まりないものですよ。もう1つ、この談話のなかで、『戦時下、多くの女性達の尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み続けます』。これは何を指しているんですか? それから誰が傷つけたんですか?」
安倍総理「今、福島委員はですね、私がということをおっしゃったわけでありますが、私が私的に安倍晋三として談話を出したわけではないわけでありまして、日本国総理大臣としてですね、閣議決定をして、談話を出したわけでありまして、私がという私的な感想を述べるべきものではないと、こう思っているところでございます。
そして、今、おっしゃったことでありますが、まさにそれはですね、忘れてはならないのはですね、まさに戦争の影に多くの女性、戦争の影には深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも忘れてはなりませんと、このように申し上げているわけであります。
戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となった。そして、戦場の影には深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも忘れてはならないということで、まさに、私たちの問題として、ここに痛切な反省を述べているわけでございます。
大切なことはですね、そこからどういう教訓を汲み取るかということでございまして、私たちは21世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み続けますと。だからこそ、わが国はそうした女性たちの心に常に寄り添う国でありたい。21世紀こそ女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいりますと。今後の日本の進むべき方向、そして歩みについてですね、示しているところでございます」
福島議員「委員長。まったく答えてないですよ。この件は、いわゆる慰安婦の問題も含んでいるんですか?」
安倍総理「すでに何回も、この委員会等も含めまして、いわゆる慰安婦の方々がですね、辛酸をなめたということにつきまして、心が痛む思いであるということは申し上げてきたとおりでございます。
そうした方々も含め、多くの女性たちがですね、女性たちが戦争の影で名誉と尊厳が傷つけられたということを申し上げているわけであります」
福島議員「この談話は、主語がないんですね。で、河野官房長官談話が、軍の関与のもとに、と主語があります。慰安婦のことを言っていると言いながら、傷つけられたと受け身で、誰がやってるか、言ってないんですよ。この談話は極めて、不誠実なものだというふうに思います。
そして、もう一つ、この談話のなかでですね、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としてはもう二度と用いてはならない、というふうにあります。で、総理。要件ではなく、効果についてお聞きをします。安保法制、戦争法案において、海外で武力行使をすることはできますね? あり得ますね?」
安倍総理「他国の領土や領海や領空にですね、武力行使を目的に自衛隊を派遣する。これはまさに一般に海外派兵と言われていることでありますから、これは憲法上できないということになります」
福島議員「しかし、この戦争法案、安保法制は、海外で武力行使をすることはできますね?」
安倍「戦争法案とはどの法案のことでしょうか? この、平和安全法制についてですね、もしご指摘になっておられるのだとすればですね、今申し上げたようにですね、当然、憲法の制約を受けるわけでありますから、他国の領土、領海、領空に行ってですね、自衛隊を、武力行使を目的として、空爆とかですね、大規模な砲撃等々を行なうために、自衛隊を送ることは一般に禁じられている。これは海外派兵につながっていくと、このように思うわけでございます」
福島議員「だって、これの法案のなかでは、海外で最小限度と要件としか書いてありませんし、海外の武力行使が目的でなくても、集団的自衛権の行使を認める法案ですから、海外で武力行使ができるんですよね。海外で武力行使ができることを認めている法案である。それでよろしいですね?」
安倍総理「これは、また同じ答えになるんですが、海外でということがですね、海外でということは、まさに他国の領土、領空、領海を指しているのであればですね、それは、個別的自衛権の時とも同じでございますが、必要最小限度を超える。つまり、武力行使を目的に、自衛隊を派兵する。そして、空爆を行なったり、あるいは大規模な砲撃を行なう。敵を殲滅する。そうした行為をすることはですね、一般に禁じられている海外派兵とみなされるわけでございますから、それはできないということでございます」
福島議員「法律にはそんなの、何も担保もありません。まったくそういうのはありません。防衛大臣は、『海外で武力行使することができますか?』と言ったら、『できます』と答えていますよ。海外で武力行使ができるんですよ。そしたら、武力行使ができるわけですから、この条文の国際紛争を解決する手段として、武力の行使をしないということとまったく矛盾しますよ。
それからもう一つ、この中で、安倍談話の中で、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的、外交的に解決すべきであるとあります。だったら、こんな法案いらないじゃないですか。この法案は、集団的自衛権の行使を可能にし、そして、後方支援という名のもとに、弾薬もすぐそばで提供できる。これを可能にする法律です。
やるかやらないかは、別にしても、そのことを可能にする法律です。まず、法の支配を壊しています。そして、違憲そのもの。それから、力の行使ではなく、平和的外交的に解決すべきであるとするんであれば、こんな法案いらないですよ。力の行使で、まさにやろうとしている。
これ、法を作っていることと、それからこの安倍談話が真逆であると。美辞麗句のきれいごとで、国民をだますなと言いたいですよ。実際、戦争ができる。戦争ができる。後方支援もできる。そんな法案を作っているのに、こんな文句はないですよ。いかがですか?」
安倍総理「はい。まったくその、国際情勢の認識が違うと。このように思うわけであります。残念ながらですね、国際情勢のなかにおいて、武力による威嚇や現状変更、力による現状変更は行われているわけでありまして、それがない世界にしていかなければならないということでございます。正にそれこそが、我々は先の大戦によりですね、教訓として、学んだことであり、そういう世界を作っていきたいということであります。
しかし、残念ながらですね、それを唱えるだけでは、実現できないというのは現実にさまざまなできごとを見れば、お分かりのとおりだろうと思います。
私たちは日本人の命と、そして平和な暮らしに責任を持っているわけでありますから、もちろん、まずは外交において解決を図っていく。これは当然のことであります。
国際社会と協力をしながら、そういう紛争を未然に防いでいくというなかにおいて、万が一の備えとしてですね、日米の同盟関係をより効果的に発揮させ得るということを示していくことによってですね、日本が侵略を受ける可能性は、より薄くなっていくわけでありますし、紛争を未然に防いでいくことにつながっていくと、このように確信しております」
福島議員「中国の軍拡と北朝鮮の脅威とおっしゃいますが、それは個別的自衛権の話ですよ。総理のデマゴギーあるいはミスリード、あるいは、この国民をだましている最大の理由は、集団的自衛権の行使を個別的自衛権のように説明する。でも、集団的自衛権そのものじゃないですか。
日本が武力行使を受けてないのに、海外で武力行使をすることを可能にする法案です。そして、戦場の隣で、後方支援という形で、そして弾薬も提供する。これは、今、子供や何を守るのか、この子供を守る、妻を守る、国を守る、戦前、第二次世界大戦中に、日本はお国のために妻子を守る、そんなことでですね、侵略戦争をやって、海外で若者が死んだんですよ。そのことと同じことをまさにやろうとしている。
国際紛争を解決する手段として武力の行使をやろうとする。それがまさにこの安保法制、戦争法案ではないですか。口で説明していることと、個別的自衛権の話ではないです。今回の法案は、個別的自衛権の話ではありません。
個別的自衛権で解決するのであれば、こんな法案出す必要はありません。専守防衛は変えないと言いながら、海外での武力行使を認める。こんなの、デマですよ。こんなの、国民をだますものではないですか。こんな安倍談話は、まさに今国会で議論になっている戦争法案とまったく真逆であり、そして、侵略だということ、植民地支配ということすら、談話のなかで認めない。これだったら、過去の反省に立っているとまったく言えないですよ。
そして、今、まさに武力行使をする、武力行使が可能となる、望めば武力行使ができる。望めば戦場の隣で、後方支援ができるようにする、そんな法案は、まったく憲法違反であり、許されないと。こんなきれいごとの美辞麗句の安倍談話は、真のことを言ってない。謝罪もしてなければ、植民地支配も、侵略も認めてない。これで戦争法案、これは撤回をすべきであるということを申し上げ、質問を終ります」