AIIBには現在までに52カ国が参加し、インドネシアの高速鉄道計画では日本を差し置いて採用されるなど、国際的な存在感を急速に増している中国。しかしその反面、上海での株価暴落によって世界規模の株安を引き起こし、また天津市で起こった大規模な爆発事故や、人民元の切り下げなど、様々な問題を抱えている。
エコノミストで、富士通総研主席研究員の柯隆(かりゅう)氏は、2015年8月27日にジャーナリスト・富坂聰氏とともに外国特派員協会で行った会見で、「総括して言えば、いわゆるチャイナリスクが顕在してきた」と語った。
柯隆氏は、様々な問題の根本原因を「共産党一党独裁の政治体制」にあると分析する。
「独裁政治をしていると、権力者は自分の権力を過大評価しがちである。北京のまるでお城のような天安門に登れば、下に見下ろす人々が10分の1の大きさに見え、この国のすべてをコントロールできるかのように錯覚してしまう」。
そして、こうした考え方が経済運営にも影響しているのだという。柯隆氏はは、そもそも株式市場が「国有企業の資金調達」を目的として生まれたという、中国独特の経緯に触れ、「そもそも動機不純のマーケット」と指摘。上海の株価が大暴落すると、中国政府は「PKO」と言われる株価対策(買い手側は自由に買えるが売り手側は自由に売れない)で暴力的な市場介入をすることに触れ、「日本や米国から見ると『なんて無茶なことをするんだ』と思うことが、権力の座に座っていると理解できない」と批判を展開した。
そのうえで柯隆氏は、いわゆる中長期的な「チャイナ・リスク」を3つ挙げた。1つ目は、政策が前触れもなく突然宣告され実施されるという中国国民にとっての政治リスク。2つ目は、河川汚染などの環境リスク。最後に、日本と違ってボトムがケアされない「底なしの格差」だ。
柯隆氏はこれらのリスクを踏まえ、中国人の政府幹部から一般庶民に至るまで、「自分が被害者だと思っている」と指摘。「本来安心して中国国内で自分の子供が生活できるようにすべきだが、それができないという所が中国の最大のリスクではないか」と語った。
一方、習近平政権が推し進めている国内の統制と腐敗撲滅のための政策について、富坂氏は「長年、中国を見てきましたが、これほどすさまじい反腐敗キャンペーンというのを見たことはない。今、だいたい一日平均で500人処分されている」と報告した。
以下、会見動画と2人の発言全文文字起こしを掲載する。