中東やアジアの法律家から懸念の声「世界平和に重大な影響を及ぼす法案だ」――世界90ヵ国の法律家が所属するIADLなどが反対声明〜外務省HPの重大誤訳も指摘! 2015.8.20

記事公開日:2015.9.8取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山)

※9月8日テキストを追加しました!

 「今回のIADLの声明は、『憲法は、そもそも変えることができない』という主張です。周辺国に惨禍をもたらした日本は『戦争を二度とやりません』と憲法に書いて、国際的に誓いを立てた。その誓いを破ることは、国際法の常識に反する」──。

 世界90ヵ国の法律家が参加する国際民主法律家協会(IADL)と、日本国際法律家協会(JALISA)は、2015年8月20日、安保関連法案に対する反対声明を発表し、東京都内で記者会見を行った。青山学院大学大学院教授で、IADL事務局長の新倉修氏は上記のように話すと、「安保関連法案をめぐって、政府・与党が憲法に抵触する動きをしていることが、ものすごく気になる」と懸念を表明した。

 弁護士の笹本潤氏は、外務省のホームページで安保関連法案の英訳が「law」と書かれていることを問題視。「法案は『bill』だが、(成立前にもかかわらず)『law』とか『new law』と書いているので驚いた。このままでは海外で誤解を招く」と指摘した。

 その上で、笹本氏は憲法9条を国際法としてとらえるべきだとし、「9条は『軍隊を持たない、戦争しない』と、日本国民だけではなく世界に対して言っている。したがって、国際的に見ると単なる道義的な義務ではなく、法的にも縛りがある。これを突破する今回の安保法案はおかしい」と述べた。

 2015年7月16日付のトリビューン・ド・ジュネーブ紙が、安保法制は憲法違反だと書いていることに触れた、名古屋学院大学准教授の飯島滋明氏は、「国際社会が、安保法案をどう見ているのかを正確にとらえるべきだ。海外で戦わないと言ったのに、自衛隊が世界中で戦えるようになる。これは、国際社会の平和を作る観点から問題だ。戦争法案と呼ばれるものは、国内だけの問題でなく、国際社会でも重要な懸念を持たれている」と訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 内容 安保関連法案に対するIADL声明について
  • 日時 2015年8月20日(木) 13:30~
  • 場所 日比谷図書文化館(東京都千代田区)
  • 主催 国際民主法律家協会(IADL)、日本国際法律家協会(JALISA)

憲法9条の誓いを、為政者は破ることはできない

 戦後70年の今、憲法に抵触するような安倍政権の動きが、「ものすごく気になる」という新倉氏は、安保関連法案の問題は、単に憲法に反するのではなく、9条をないがしろにしていることであり、9条を変えることは国際法に違反するとして、次のように続けた。

 「今回のIADLの声明は『憲法は、そもそも変えることができない』という主張だ。憲法は気まぐれで定めたのではないし、好みで変えられるわけでもない。日本は、戦争という惨禍を周辺の国にもたらした。これを『二度とやりません』と、日本国民は憲法に書いて、国際的に誓いを立てた。その誓いを自ら破ることはできないし、国民は破っていないのに、為政者の一番の責任者である安倍首相が、『(立憲主義による)拘束は、もともとなかった』などと言うことは、ますますおかしい。国際法の常識に反する」

 コスタリカの憲法裁判所は、一国で何かをやることは国際法的に何の関係もないのか、という論点に対して、『そうではない』という見解を示している。国際的な拘束力は、一国が宣言するだけでも十分に発揮される。これは国際法で専門的に言うと「国家実行」というものだと、新倉氏は説明した。

 代表的なものは原爆の問題である。国際司法裁判所は勧告的意見で、「原爆の使用は国際法に違反する」としている。また、日本の下田判決では、「原爆投下は国際法に照らして違法だ」と言った。新倉氏は、「こうした判決が国際的拘束力があるわけだから、その上位規範である憲法が、『国際的効力がなく、いつでも好きなように変えられる』ということにはならない」と力を込めた。

成立前なのに安保法案を「New Law」と書く外務省

 次に、笹本氏が、「7月16日に(安保法案が)衆議院を通過した。この問題は世界的に知らせて止めなければいけないと考え、IADLのメーリングリストに投稿した。その際、外務省のホームページにあった安保関連法案の英訳を見て驚いた。成立していないのに『law』という書き方で説明してある。法案は『bill』だが、それを『law』とか『new law』という形で全部説明している。このままでは海外で誤解される。これは国会で追求すべき大問題だ」と憤った。

 IADL執行部からの反応について、笹本氏は、「インドの前IADL会長は、『これは9条を突破する意味でも世界的な問題で、日本だけの問題に止めてはダメだ』と指摘した。ベトナム、ネパール、バングラデシュの方も、『世界平和にとって、この問題は重大な影響を及ぼす』と言った。中東のアラブ法律家連合は、これは国際的な憲法原則にも違反するので、IADL声明を支持すると伝えてきた」と、各国の法律家の見解を紹介した。

 その際、コスタリカの法律家からは、「日本は、ポツダム宣言を受諾している。ポツダム宣言には日本の非武装化が明記され、それを受け止めて9条が成り立っているのだから、これは一種の国際条約であり、国際的な義務が発生する。これを破っては大変だ」との指摘がなされたという。

 「9条は『軍隊持たない、戦争しない』と、日本国民だけに言ってるわけではない。世界に対して言ってる」と笹本氏。その性質から、一方的に宣言した憲法9条だが、国際的に見ると単なる道義的な義務でなく、法的にも縛られる義務があるのだという。

 「だから、これを突破する今回の安保法案はおかしい、というひとつの法的根拠になる。さらに、今回の声明では、国連憲章24項・武力行使禁止の原則にも触れている。日本国憲法9条は、国連憲章を受けてできている。また、不戦条約も受けている。したがって、憲法9条を壊すことは、こうした国際法の大きな流れにも反する。国際法の中のひとつの法律として憲法9条をとらえなくてはいけない。そういう意味でも、9条を破る法律ができることは、国際的に問題である。これが、今回のIADL声明のひとつのポイントだ」

安保法案は9条だけでなく、平和的生存権にも違反する

(…会員ページにつづく)

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  1. 嶋袋豊治 より:

    この記者会見は、国内の憲法学者と違い、国際法学者の立場からの会見で非常に参考になりました。
    ぜい1ページに記載していただきたいと思います。SELDSの皆さんにも非常に参考になると思います。
    よろしく。

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