「知事も時間をかけて米国まで行き、辺野古が唯一の解決策だと認識して帰ってこられるのではないか」

　5月末から6月初旬にかけ、翁長雄志沖縄県知事が訪米し、米政府関係者に「辺野古新基地建設」反対と普天間飛行場の返還を訴えて回ったが、菅義偉官房長官は徒労に終わるだろうといった見方を示した。

　大手メディアも翁長知事の帰国後、菅官房長官の見立てに沿うように「成果なし」「失敗」「沖縄冷遇」などと一斉に書きたてたが、実際はどうだったのか。

　翁長知事の訪米には、辺野古のある名護市の稲嶺進市長や沖縄の県議、市議、沖縄選出の糸数慶子参議院議員、沖縄経済界などからなる、約30名の訪米団も随行した。この訪米団の企画・同行を担当したシンクタンク「新外交イニシアティブ（ND）」が2015年7月2日（木）、永田町で報告会を開催し、メディアでは語られない翁長知事訪米の「成果」を語った。

• 登壇 糸数慶子議員、猿田佐世氏（新外交イニシアティブ事務局長）

• 日時 2015年7月2日（木） 18：00～
• 場所 衆議院第一議員会館（東京都千代田区）
• 詳細 新外交イニシアティブ（ND）訪米報告会 米国に声を伝える―沖縄訪米団による訪米行動を終えて―｜新外交イニシアティブ
• 主催 新外交イニシアティブ

「ワシントンの空気」を変える意義があった

▲ND猿田佐世事務局長（手前）と糸数慶子参議院議員

　NDの猿田佐世事務局長は今回の訪米について「大きな意義があったが、これが活きるかどうかは今後の動き次第」であると含みを持たせる。

　「重要な事は、明確に反対の意思を示したこと。もともと、今回の訪米で『米政府が辺野古案を撤回する』と思っていたわけではない。むしろ『唯一の選択肢だ』と言われることはわかっていた。『成果なし』と書くメディアは目標の据え方自体がおかしい」

　そのうえで猿田氏は「大半の米国議員は、辺野古をめぐる議論を知らないでいる。沖縄がどこにあるかさえ知らず、仲井真（弘多・前沖縄県知事）が埋め立てを承認した、沖縄がいいと言っているならいい、という空気がある」とワシントンの実態を紹介。もともと辺野古案に反対していた米議員も、仲井真前知事が辺野古案を承認したことで賛成派に回った。共和党のジョン・マケイン上院議員などもその1人だという。

　「翁長知事が『仲井真前知事の承認は公約違反だった、私は“辺野古反対”で勝った知事だ』と伝えたのは、ワシントンの空気を変える意味で非常に大きなことだった」

　訪米団は米国で15名の下院議員と、7名の上院補佐官、23名の下院補佐官の他、現地のシンクタンクや市民団体と面談した。「現地がこんなに反対しているのであれば、これは間違いなくよくない政策だ」と理解を示す議員もいたという。

「沖縄の人口は2000人？」まったく知られていない日本の現実！

　沖縄の民意は「辺野古反対」である。日本では広く知られたこの事実が、もう一方の当事者である米国ではほとんど知られていない。猿田氏は自身の体験を交えつつ語る。

　「初めてロビイング活動をしたとき、下院のアジア太平洋小委員会の委員長は、私に『沖縄の人口は2000人ですか？』と質問してきた。これが当時、沖縄問題を管轄する委員会の委員長だったのだから、他も推して知るべし」

　猿田氏の調べによると、日本の政策に強い影響を持つ、いわゆる「知日派」の議員は5人〜30人程度だという。