日本が直面する独裁政治への第3フェーズ「問題を深堀する能力の喪失」――「報道ステーション」で遮られた話の中身とは?~元経産官僚・古賀茂明氏が会見 2015.4.16

記事公開日:2015.4.17取材地: テキスト動画
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(取材:IWJ・松井信篤、記事:IWJ・ぎぎまき)

※4月17日テキストを追加しました!

 2015年3月27日のテレビ朝日「報道ステーション」で、「I am not ABE」というプラカードを掲げ、安倍総理を批判した元経産官僚の古賀茂明氏が4月16日、日本外国特派員協会で記者会見を行い、外国人記者からの質問に答えた。

 「自由な民主主義国家から、独裁政治が生まれることはあるのか」

 古賀氏は会見の冒頭、安倍政権と歩調を合わせたような大手メディアの姿勢が、日本に独裁に近い政治状況を生みつつあるのではと指摘。それを、第一段階から第三段階に分けて論じ、今は最終段階にあるのでは、と強い危機感を示した。

 また古賀氏は、降板した日の「報道ステーション」の番組中、古館伊知郎キャスターから発言を遮られたプラカードの中身についても明らかにした。

■ハイライト

テレビ局と日本政府の特殊な事情

※以下、発言要旨を掲載します

古賀茂明氏(以下、古賀・敬称略)「日本のテレビ局は、政府との関係でどういう立場にあるのか。日本に特殊な事情をまずは、説明したい。テレビ局は総務省の管轄下にあり、免許が必要。安倍総理の意向に沿って動く組織が、直接、監督するという構造になっている。

 新聞や雑誌の業界も、政府に対して弱い立場にあることを付け加えておきたい。再販制度(再販売価格維持制度)を政府に維持してもらえるかどうか。もう一つは、消費税との関係。新聞や雑誌を軽減税率の対象にして欲しいと、政府に強く求めている。そういう意味で、政府と本気で闘うのは難しい状況にある」

独裁に近い状況が「正当な」手続きの中で進んでいる

古賀「日本は世界の中でも、非常に自由な言論が保障されている国。民主主義も定着していると思うが、自由な民主主義国家から、独裁というものが生まれることはあるのか、ということをいつも考えている。

 クーデターではなく、正当な手続きの中で、独裁に近い状況が生まれるとしたら、こういう段階をふむのではないか。

 まず第一段階として、政府がマスコミに圧力をかける。放送法の免許も一つの力になる。また、圧力だけではなく、懐柔すると。それが、軽減税率の適用対象にしますよと、働きかけるようなこと。そして、その圧力は懐柔に、メディアがどう反応するか。今、日本で起きているのは、圧力と闘うのではなく、表現を本来の範囲よりも狭めて書き、政権との軋轢を回避しようとする自粛の動き。

 マスコミのトップが、政権と非常に近くなる。権力側にすりよる現象が見て取れる。それによって、幼稚なことだが、政治を動かす、政権の中枢に入っているという感覚を楽しんでいるトップが増えているのではないか。トップがそういう雰囲気になると、現場は闘いにくくなる。現場には、いろいろな問題を掘り下げ、問題提起する役割を分かっている人も沢山いる。

 しかし、やった結果、権力との争いになった時にトップが自分たちを守ってくれるのか。信用していない会社が増えていると感じている。圧力と懐柔。第二段階は、マスコミの側が自粛とスリよりをしていくのが第二段階だと思う」

「報ステ」で話すことができなかった「第三段階」とは

古賀「3月27日の報道ステーションの放送の時に話せなかったことが、第三段階。それは何かというと、非常に重要なニュースが報じられない、または、報じられても小さくしか報じられないことがよく起きている。

 その例を一つ。小泉改革以来、改革の目玉であった政策金融機関の民営化について。その議論の中で、民営化する期限が決まっていた金融機関が2つあった。財務省と経産省所管の『政策投資銀行』と『商工中金』。

 株式をすべて売却する期限があったが、今国会で提出されている法案では、この期限がなくなり、民営化されない可能性が十分にある。民主党政権の時であれば、一面で扱われるニュース。国会でも大きな議論になっただろうが、小さくしか扱われていない。

 他にも、政府系の大きな金融機関のトップは、改革の過程で民間出身者になっていたが、安倍政権後、4つのうち3つのポストは天下りした元官僚に変わっている。『天下り規制強化』と大騒ぎしていた頃から逆戻りしていることを、マスコミは伝えていない」

自粛の次は、問題を掘り下げる能力の喪失

(…会員ページにつづく)

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「日本が直面する独裁政治への第3フェーズ「問題を深堀する能力の喪失」――「報道ステーション」で遮られた話の中身とは?~元経産官僚・古賀茂明氏が会見」への4件のフィードバック

  1. yf より:

    動画の前後の日付が2014年になっています。

    1. junsantomato より:

      yfさま
      ご指摘ありがとうございます。
      急ぎ修正いたしました。

  2. あのねあのね より:

     長年の金権腐敗体質、特にリクルート事件と前後する不可解な大型事件と消費税導入、ガットのウルグアイラウンドによる米の輸入自由化が原因となり自民党が下野して政権を失ったのが1993年であった。こういう事実に関して隠蔽を図るどころか、原因となった事件なるものを“創作”、そのフィクションを元に民放テレビキー局に脅しをかけたのが日本記者クラブにおける安倍晋三の発言だ。“発言”としてはそれなりに知られてはいたが、それに“事件”という呼称をつけ自民党下野の原因とする珍説は安部晋三の発言で初めて聴いた。嘘なんだから初めて聴いたのはしょうがないんだが。
     リクルート事件では安部晋三の父親の故安倍晋太郎の名前も出てきた。当時、他に名前が出た政治家は必ず秘書が勝手にやったことだと言い訳していた。故安倍晋太郎の秘書をやっていた安部晋三にもリクルート事件について聴きたいものである。

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    日本が直面する独裁政治への第3フェーズ「問題を深堀する能力の喪失」――「報道ステーション」で遮られた話の中身とは?~元経産官僚・古賀茂明氏が会見 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/242742 … @iwakamiyasumi
    独裁に近い状況が「正当な」手続きの中で進んでいる。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/589165830727802880

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