日本に徴兵制!? 「若年層から賛同者続出の可能性あり」――内田樹氏が9条で激論、政府批判せぬ「朝日新聞」への叱咤も 2015.3.7

記事公開日:2015.3.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※3月19日テキストを追加しました!

 「この経済力で、人口が減っているとはいえ1億人もいる中で、日本が北朝鮮化したら、『イスラム国』よりはるか怖い、東アジア最大のリスク要因が発生することになる」──。

 「北朝鮮化」という言葉を使い、今の日本をこう評したのは、哲学研究者で武道家の内田樹氏。2015年3月7日に神戸市内であった、「九条の会・ひがしなだ」9周年記念講演会で、ゲストスピーカーとして登壇した。

 たとえば尖閣諸島で、自衛隊員が中国軍に殺されたら、日本の右傾化メーターはあっという間にレッドゾーンに達し、「徴兵制」が甦ることも十分考えられると、内田氏は言う。そして、今の日本には、戦後70年間「いい子」を演じてきたことによる疲れが見え隠れする、とも述べ、こう懸念を表明した。

 「そういう状況で、『別に、悪い子でいいではないか』という気運が高まると、沈静化することはできないと思うし、そういった気運が高まったとしたら、日本社会の下層で貧困にあえぐ若者らは、それに飛びつくと思う。『自分は徴兵を受ける』という声が続出するのではないか」――。

 この日の講演タイトルを「『街場の戦争論』~グローバリズムと憲法九条」とし、護憲・平和勢力の弱体化を背景に、「改憲」気運が高まっている現状を、米国がどう見ているかが、日本の憲法問題の今後を左右する、と強調する内田氏。

 他方、この日の講演時間の半分を内田氏はマスメディア批評にあてた。ことに、部数減少が激しい朝日新聞には辛らつな言葉を浴びせ、インターネットの普及なども背景にしながら、今後、日本人に新聞離れが続けば、「日本は、世界に冠たる財産である知的中産階級を失うことになる」と、強い調子で警告を発した。

記事目次

※ 録画状況により音声が断続的に途切れるところがあります。ご了承ください。
■ハイライト

  • 講演 内田樹(うちだ・たつる)氏(神戸女学院大学名誉教授)
  • 対談 内田樹氏×泥憲和(どろ・のりかず)氏(元陸上自衛官)/司会 小山乃里子氏(ラジオ・パーソナリティ)
  • 日時 2015年3月7日(土)18:30〜
  • 場所 東灘区民センターうはらホール(神戸市東灘区)
  • 主催 九条の会.ひがしなだ

朝日新聞社員は危機意識が薄い

 「最近の国会は、重要法案がさほど審議されずに、どんどん通されていっている印象だ。だから、新聞やテレビの報道が追いついていないように映る」

 スピーチの序盤で、こう述べた内田氏は、大手メディアの政府批判力が衰えている背景には、最近の永田町に顕著な「早すぎる展開」に、記者らが翻弄されてしまい、批判できるまでに至らない事情も多少はあるのかもしれない、との見方を示した。

 ただし、そういった点を考慮しても、日本のメディアの劣化は目に余ると、内田氏は言いかぶせ、批判の矛先は朝日新聞に向けられた。

 「朝日といえば、リベラルで左翼的で、原理主義的な物言いをするところが魅力だったのに、最近は政府の御用聞きに成り下がっている。(政府寄りの)読売と産経は論外として、朝日新聞が安倍政権批判を行えていないのは、(民主主義国家として)実に恐ろしい状況だ」

 さらに内田氏からは、朝日新聞社の社員の危機意識の薄さに関する、このような言及もあった。

 「今から3年ほど前、朝日の発行部数の減少ペースは年間で5万部ほどだったが、その時は『約800万部発行しているから、ゼロになるまで160年かかる』という呑気な言葉を、朝日の社員から現に聞いている。

 でも、去年(2014年)は例の誤報問題も響き、通年レベルで20万部ほど減った。今年はどうか。私は40~50万部減っても、ちっとも不思議ではないとみている。最近になって、私のまわりにも、朝日から東京新聞に乗り換えた人間がだいぶいるからだ。来年は100万部ほど減るのではないか」

新聞は国民的議論のプラットフォームだった

 「朝日の記者らにぜひ言いたいのは、『このまま死んでいくわけにはいかない』という闘志を持ち、政府批判を、ぜひ復活させてほしいということ。そうすれば、東京新聞に流れた読者が戻ってきて、ビジネス的にもプラスになる」と口調を強める内田氏は、全国紙の深刻な販売減は朝日新聞に限った話ではない、とも述べ、こう警鐘を鳴らした。

 「日本人の新聞離れがこのまま続けば、日本の『知的中産階級』は間違いなく崩壊する」

 今、40代以下で新聞を定期購読している日本人は極めて少なく、新聞をよく読んでいるのは60~70代が中心である、と説明する内田氏。「これは危うい状況だ」とし、「新聞が、日本人全体によく読まれていた時代には、全国紙の発行部数を足し合わせると、3000万とか4000万といった規模があった。これは全国紙が、国民の『言論プラットフォーム』の役割を果たしていたことを意味する」と語った。

 新聞購読が当たり前だった頃の日本の社会には、その時々のニュースに関する事実関係やオピニオンで、大勢の日本人が共有すべきものを共有できていた時代が存在していた、との主張である。

 内田氏は、庶民が雑談のレベルで、当該のニュースをめぐる新聞報道ならではの言葉使いや単語を口にしただけで、相手がぱっとそれに反応して会話が始まるというのは、とても凄いことだ、と力を込める。

 「新聞が日本ほど読まれていない(=知的レベルの階層化が激しい)欧米社会に照らせば、これは戦後の日本が獲得した大きな財産なのだ」

ネットメディアの普及に陥穽あり

 内田氏は、民法テレビの衰退にも触れた上で、「日本はすでに、その財産をだいぶ失っている」と訴えつつ、インターネット上の言論空間では、日本の「知的中産階級」の崩壊は止められない、と表明した。

(…会員ページにつづく)

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  1. なんと内田樹さん講演! より:

    神戸女学院名誉教授・武道家の著名人、内田樹さん、IWjに登場!身振り手振りをまじえ熱のこもったお話。ツイッターやブログ、ご著書と寸分たがわぬ凛とした姿勢に感服!!(あっ、内田さん、今年はサバティカルとおっしゃっていましたっけ)

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