▲2014年10月30日付の日本農業新聞のコラム「万象点描」
「いずれ関税撤廃は自民党の多くの議員も同じ考え」
私はコラム「万象点描」で、次のように書き、自民党の「二枚舌」を批判しました。
「2012年末の総選挙で、自民党は『ウソつかない。TPP断固反対。ブレない』というポスターを全国各地に貼り、JAの支持を取りつけて政権を奪還した。しかし安倍総理は、13年2月22日の日米首脳会談で、オバマ大統領に対して早々にTPP交渉参加を約束。3月15日には、TPP交渉への参加を正式表明した。
こうした安倍総理の姿勢は、JA、並びに全国で農業を営む方々に対する明白な裏切りである。『聖域』という名の『重要5品目の関税』、という最小限の約束も、実は守る気などさらさらない」
▲2012年12月の衆院選で自民党が掲げたポスター
大西議員秘書が「確認したい」と言われたのは、これに続く、次のくだりです。
「自民党の大西英男衆院議員は、13年5月14日に私がインタビューした際、自民党が掲げた農産品の『聖域』について、『すぐにではなく、いずれ関税撤廃ということ。自民党の多くの議員も同じ考えだ』と語った。これが、自民党の本音なのである」
「すぐにではなく、いずれ関税撤廃ということ。自民党の多くの議員も同じ考えだ」という大西議員のこの発言部分について、大西議員の政策秘書は、「この大西の発言とされる内容が、事実、大西が述べた内容なのか、岩上氏が内容を意訳なされたものなのかを確認したい」とIWJに問い合わせてこられたのでした。
JAの方々は「聖域は守る」という自民党の公約を素朴に信じ、選挙でも応援してきたのかもしれません。それだけに、大西議員の発言は、自民党への信頼をぐらつかせるものであり、本当に事実としてそんな発言をしたのか、我が目、我が耳を疑う思いで、大西議員事務所へ問い合わせをしたのでしょう。
その中には大西議員の選挙区である東京16区、江戸川区の有権者の方々もいたことでしょうが、他の都道府県の農家の方々からの問い合わせもあったかもしれません。
しかし、もちろん、私が虚偽の事実を書いたわけではありません。残念ながら、というべきか、大西議員は、確かに私の書いたとおりに発言されました。
大西議員の口から語られた「事実」とは
ここで、該当箇所の映像と、実際に大西議員の口から語られた「事実」を、文字起こしでお示しします。
※該当箇所の映像
岩上「じゃあ次に参りたいと思います。次は大西さんの、大西先生のTPPの」
大西「さんでいいですよ。さんでいいです。どうぞ」
岩上「考え方ということで、これが色々出ました。そして、色々、アンケートにお答えになった資料というものをお送りいただきました。ずいぶんたくさんのメディアから、アンケートが来ていて、それに対してお答えになっていらっしゃるんですよね。
これです。はい、アップしてください。これです。これが、平成24年衆議院選挙においてのTPPに関わるアンケート回答。これ、このまま出しません。その部分のところだけ引用させてもらいます。
読売新聞に対して、『日本はTPPに参加すべきと思いますか? 思いませんか?』と言ったら、これは『やや賛成』とお答えになっていらっしゃる。『TPPへの参加について、あなたの考えは次のAとBどちらに近いですか?』『A:海外の需要を取り込み、経済成長が望めるのでよいことだ』『B:日本の農家の収入を脅かすのでよくないことだ』
『ややAに近い』に近いと。だから、海外の需要を取り込み、経済成長が望めるのでよいことだというところにやや近いと」
大西「まあまあ、これ長くなりますからね。はっきり申し上げますよ。条件付き賛成ですよ。全部」
岩上「条件付き賛成…」
大西「で、毎日新聞だけは、こういう問いをしてきたんですよ。ね?『TPPに反対ですか?賛成ですか?』それだけ。で、さらに加えて、あの、『TPPの農業分野についてあなたの考えにもっとも近いものをひとつ選んでください』」
岩上「なるほど」
大西「『コメなど可能な限り多くの例外品目を設けるべきだ』と言ってるんですよ。ね? 賛成か反対か? そのときに、私は条件付きの賛成ですから、これ本来だったら、どちらにも丸を付けないほうが良かったんでしょうね。毎日新聞だけです。あとは全部一貫してますよ。条件付き賛成。はい。
それをね、それを見ないでね。この毎日新聞だけ、なんかインターネットかなんかで公開されているんでしょうか? それで、大西はTPPに反対だと孫崎さんが発言した。それによって大変ですよ。ツイッターが。選挙でTPPに反対したのに、なぜ今、賛成してんだ。お前は議員辞職しろとかさ。とんでもない言論の暴力でしょ。ね? だけど、私ははっきり述べてるんだから、自分の信念を」
岩上「条件付き賛成なんですか?」
大西「そうですよ。だからTPPは、日本の経済の発展のために必要なことである。しかし、農業の問題だけはしっかり守らなければいかんということで、農業については条件付きでやりなさいと。
こう言ってきた。安倍総理は、そのようにオバマ大統領と会見をして、その条件付き、ね? 関税撤廃無制限でないという言質を得た。それでオバマ大統領との会見を終えて日本に帰ってきてから、TPP交渉に踏み切ることにしたんですよ」
岩上「この場合の、『聖域なき』というのはどのように解釈されるんでしょうか?」
大西「ん?」
岩上「オンザテーブルということ。つまり、すべてが交渉の上に挙げられると。これは、USTRもはっきり言ってるわけです。ということは、一切、もう論議することもなく、聖域確保、撤廃なしというような約束というのは、誰もしていないはずなんですよ。これは、必ず、テーブルに載せられると。
そこで、重要なことがひとつあって、先日、そのUSTRに直接、訪米した訪米団があったわけです。
元議員や議員のグループなんですけれども、そこで帰朝して報告会をやった。そうしましたら、聖域と言いますか、例外扱いしてくれるのかと。この方たちも農業を守りたいとおっしゃっているから、志は同じだと思うんですけれども。守りたいと思っているので、それは聖域扱いをするのかと言ったら、これは、カトラーさんという、USTRのトップですけれども、No.3ですか。
彼女が、『関税の完全な撤廃を目指しているんであって、関税を残すということは一切ない』と(発言した)。ただ、それが段階的に減らすか。つまり、時間をかけて減らすか。つまりなくしてしまう。ゼロに。でなければ、一時的なセーフガードが認められるだけで、いわゆる聖域として関税を残すということはないと言ってるわけですよね」
大西「いや、だから、そういうことですよ。それは、だから、もちろん、その半永久的にね。この関税を残せなんて言ってないんですよ」
岩上「あ、そうなんですか?」
大西「そうですよ。それは、やっぱり日本の農業の体質改善や、日本の農業の競争力の強化を図りながら、そして、ゆるやかな形で日本農業の改革を進めるなかで、関税を撤廃をしていこうというような基本的な考え方は、私は持ってますよ。そして、自民党の多くの人たちも持ってますよ。
それを、TPPに入ったから、即関税撤廃だということはありえない。それは、アメリカも、農産物の関税は、撤廃したいけど、自動車は守りたいんですよ。あれ、自動車だって10年後に協議しようということで落着したでしょ? だから、これはまた、そこからの論議です。
なんで、アメリカさん、自動車だけは、関税撤廃を認めないで、日本の農業だけ、なんで即、関税撤廃だという話になるでしょ。それはありえない、外交交渉では。
ですから、これは、TPPを締結したあとに、しかるべき形で論議が進んでいくことだと思うんですよ。
自民党「TPP対策に関する決議」とも根本的に矛盾する
読者の皆さんには、おわかりいただけたと思います。
大西議員は、「半永久的に関税を残せなんて言っていない」とし、「日本農業の改革を進めるなかで、関税を撤廃をしていこうというような基本的な考え方は、私は持ってますよ。そして、自民党の多くの人たちも持ってますよ」と、確かに発言されました。
この発言は、私が日本農業新聞のコラムで書いた「自民党の大西英男衆院議員は、(中略)『すぐにではなく、いずれ関税撤廃ということ。自民党の多くの議員も同じ考えだ』と語った。これが、自民党の本音なのである」という箇所と一致します。
大西議員は、ご自身のみならず、多くの自民党議員が、関税撤廃への意思を持っていることをはっきりと明言したのです。
また、大西議員は「TPPに入ったから、即関税撤廃だということはありえない」と言いつつ、「TPPを締結したあとに、しかるべきカタチで議論が進んでいく」とも発言しています。これは、TPPの参加が、関税引き下げ交渉の「ゴール」ではなく、締結後にも、交渉が続いてゆく、即ち関税のさらなる引き下げ、あるいは完全なる撤廃の圧力が米国からかかり、日本側も応じる用意があることを意味しています。
TPPは交渉の終わりではない。そして日米間協議が続く中で、いずれ、「関税を撤廃していこうという基本的な考え方」を、大西議員も、他の自民党議員も持っているというわけです。
大西議員のこの主張は、インタビューのわずか2ヶ月前、2013年3月13日に出された、自民党による「TPP対策に関する決議」の中の文言と矛盾しています。
「決議」の中では、「TPP対策委員会第4グループとりまとめ」の項において、「TPPでの日本の主張」として次の文言が掲げられています。
「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象となること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」
10年を超えるような、長期にわたっての段階的な関税撤廃も認めないと、自民党ははっきり言いきって決議までしています。この部分の約束を、全国の農業関係者の方々は頼もしく思ったことでしょう。
自民党は表向きには重要品目の関税撤廃を永続的に認めないとし、あくまで「聖域を保つ」と断言して、農業関係者の歓心を買いながらも、実際には、大西議員の言うように、いずれは関税の撤廃を目指している、という本音を腹の底にたくわえているわけです。
自民党の二枚舌が、私のインタビューの中で、図らずも露呈されたことになります。
大西議員事務所から、インタビューのデータを送るか、サイトでインタビュー全体を見られるようにして欲しい、という申し出がありました。大西議員側だけに見てもらって確認してもらうのは、インタビューの本来の趣旨と違いますので、多くの方に御覧になっていただけるように、11月20日に再配信し、その後もどなたでも御覧いただけるようにフルオープンにしております。どうぞ、御覧ください。
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1000万票のJA票を裏切り、切り崩す安倍政権
農協は自民党の「最大の支持組織」として、長年、自民党を支えてきました。農家数は年々減少していますが、農協は、正組合員と准組合員を合計すれば、いまだに1000万人近い組合員を擁しています。巨大な「農協票」です。
09年の選挙では、民主党が農家への「戸別所得補償制度」を打ち出したことで、農協票の大半が民主党に流れたと言われており、これが政権交代に大きく影響していたとも分析されています。
民主党・菅直人政権時に持ち上がった日本のTPPへの交渉参加問題。農協が2011年に集めたTPP反対署名は、日本の人口の約10分の1にあたる1160万筆を超えました。2012年の衆院選で、自民党は「TPP断固反対」を掲げ、農協票を再び取り込み、政権を奪還したのです。
しかし、安倍政権が、アベノミクスの一環として今年6月に閣議決定した「新成長戦略」は、政権交代の「恩義」のあるJAに対して、「仇で返す」ようなものでした。
「新成長戦略」の最大のポイントは「農協改革」です。これはJAの事実上の解体であり、農家の発言力の低下を狙ったものです。
まず、全国約700の農協の司令塔である「JA全中」を新たな組織に移行させ、単協に対する経営監査などの権限の大幅縮小を打ち出しました。また、生産から卸し業まで一括した管理体制で農作物を流通させているJA全農を株式会社化するとし、農業法人への企業の出資の規制緩和も目指すとしています。さらに、農業生産法人の設立要件も緩和するとしており、企業の農業参入を促進してゆくというのです。
自立した家族農・自営農の集まりである協同組合を企業の形態に再編することは、将来的に何を意味するのでしょうか。
会社法改正以後の一般企業がそうであるように、株式企業となれば、株主支配が貫徹されることになり、株主には高い割合で外資が含まれることになるでしょう。農業法人が、日本の国土の多くを占める農地を所有し、その農地を外資が株主支配すれば、領土を巡るまがまがしい侵略戦争など引き起こさなくとも、無血で日本の国土を事実上、手に入れることができます。その農地をまた別の目的に転売することも可能でしょう。
もしそうしたグローバル資本の思惑に抵抗しようとして、政府や地方自治体が国土保全のための規制をかけようとすれば、TPP参加後であれば、ただちにISD条項による提訴が行われることでしょう。
小規模農家は次々と農地を手放し、農家を廃業するか、農業法人の従業者とならざるをえなくなります。何にことはない。戦後の農地解放以前の「小作人」へ逆戻りです。
農業関係者の悲鳴「我々はなぜ殺されようとしているのか」
こうした日本の農業と農家の切り捨て政策について私は、コラムの中で、次のようにも書き、警鐘を鳴らしました。
「安倍総理がTPPへの参加を表明した真の理由は、『強い農業』の復活による経済成長などというものでは、もちろんない。安倍総理の狙いは、JAの解体であり、日本の小規模な家族経営農家を消滅させ、農業と農地を株式会社化した上で、大資本に売り渡すことである。
7月30日付けの産経新聞の報道によれば、安倍総理は、TPPに反対するJAを指し、『日教組のような抵抗組織だな』と周囲に怒りをぶちまけたという。かつての小泉政権が郵便局を『抵抗勢力』として『悪魔化』し、新自由主義改革を推進したように、安倍政権はJAを『悪魔化』するキャンペーンを張ろうとしているのだ」
安倍政権の「裏切り」を前に、農業関係者の方々は、「我々はこれまでさんざん自民党に尽くしてきたのに、なぜ、こんな扱いをされるのか」と疑問に感じているでしょう。
これもコラムで書きましたが、私は今年7月、全国のJAの組合員の方々、百数十人を前にして、お話をさせていただく機会がありました。
私はTPPに対する批判者であり、したがってTPP参加をすすめる安倍政権への批判者でもあります。今は「TPPは交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人にも名を連ねています。そんな私に、自民党の「最大の支持組織」であるJAの関係者が講演を依頼するとは、どんな風の吹き回しでしょうか。「講演依頼をなぜ私に?」とおたずねしました。
「我々は、なぜ『殺されようとしているのか』わからないです。なぜなのかを、知りたい」。担当者の方は、そう率直に答えられました。
「我々はTPP反対という自民党の公約を信じ、衆・参の両選挙で自民党を盛り立て、安倍政権を誕生させました。しかし、その公約はあっさり反故にされ、それどころか、JA全中解体を迫られています。尽くしたあげく、なぜ、殺されなければならないのか、わかりません」
切実な口調でした。本気で自民党を信じ、そして裏切られた、その悔しさがひしひしと伝わってきました。
一方で私は、新鮮な驚きを覚えました。この期におよんで、まだ自民党を信じていたのか、という驚きです。
安倍政権は、なぜJAを殺すのか
コラムで記した通り、安倍政権の狙いはTPP参加であり、新自由主義政策の貫徹です。そのためにも「抵抗組織」として名指しするJAを解体し、農協を株式会社化した上で、土地を大資本に売り渡そうともくろんでいると考えられます。
そしてこの構想は、米国の思惑と表裏一体です。
安倍政権は、「愛国」的なイメージとは裏腹に、米国から突きつけられた要求を従順にこなす、「従米政権」です。安倍政権は米国と日本国民の利害の間の「中間管理職」の役目を担っているに過ぎません。郵政民営化の時には、米国の狙いは、「郵貯・簡保」の資金でした。今度は「農林中金の資金」に目をつけていることは間違いありません。
安倍総理はたびたび「日本を企業が世界で一番活躍できる国にする」と口にし、国民のほうを向いているように見せかけていますが、その内実は、米国発のグローバル企業にとって都合の良い国にする、という改革であり、安倍政権に命令を下す「上司」であるワシントンD.C、ウォール街などの顔色ばかりをうかがっています。
「上司」が郵貯・簡保の市場を開放しろ、農協を解体し、参入させろ、と「中間管理職」である安倍政権は、「上司」の命令に忠実に従い、結果として、矛先がJAにも向けられました。
自民党を長年支えてきたJAは、その甲斐もむなしく、日本の市場に手付かずで残された「ビジネスチャンス」として、米国に差し出されようとしています。
TPPに対する米国の執念は本当に侮れません。
「夜寝ているオバマを電話でたたき起こして、『(日本に求める)優先順位はなんだ』って聞いてごらん。1にTPP、2にTPP、3にTPP、4にTPPと言うだろうね。集団的自衛権は多分、『あ、そう言えば…』って言って、19番目くらいに(集団的自衛権が)出てくるかもしれない」
こう証言したのは、米国の元NSC(国家安全保障会議)高官のモートン・ハルペリン氏。元内閣官房副長官補の柳澤協二さんに、ハルペリン氏が米国の実情を紹介するうえで語ったといいます。12月21日にIWJが開催した「饗宴V」の中で、パネリストとして登壇していただいた柳澤さんが明かしてくれました。
オバマは、米国は、日本のTPP参加をそれほど悲願に考えている、という事実を端的に表す証言でした。
それでも「消極的」に自民党を支持するJAの選択
それでもまだ、自民党を支持する農業関係者もいます。佐賀と熊本のJAグループは、消極的ながらも自民党を推薦し、農協票を託すと決定しました。産経新聞の記事を紹介します。
「JA佐賀の政治団体『佐賀県農政協議会』は11月29日、選挙区と比例の自民候補3人に推薦を決定したが、政策協定書ならぬ『誓約書』を提出させ、当選後はJAの意に沿った活動をするよう確約を取った。同協議会は昨夏の参院選でも、TPPの対応をめぐり、佐賀選挙区の新人候補の推薦をいったん撤回するなど揺さぶりをかけた。
JAグループ熊本の熊本県農政連からは、候補者が提出した政策協定書に、『内容がぬるい、JAを甘く見ているのではないか』と不満が噴出した。このため、梅田穰委員長は推薦を決定する予定だった11月28日の会合で『政府自民の農政に不信感が募っている』と語り、推薦決定を保留した。
2日後の30日、協定書の文言の『遵守』を『厳守』に変えさせるなどし、自民と次世代の候補計6人の推薦を正式に決めた。
『共産や社民候補を推薦した方がマシじゃないかと冗談まで出るようになった。とはいえ、すんなり推薦を出さないことぐらいしか候補者へのプレッシャーにできないのが現状だ』」
※産経新聞(2014.12.6)農協票 TPPと組織改革、不満呑み込み自民推薦
09年の民主党のような「受け皿」が存在していないことが響いているようです。
票を託せそうな野党がない。であれば、効果が薄いかもしれないが、選挙後に自民党が少しでも「手心」を加えてくれるよう、ささやかでも歯止めとなる約束を取りつけておくのが得策だ。誓約書や協定書の細かな文言を担保に、選挙後、少しでもダメージの少ない政策を期待する。そうした戦術を選択する他なかったのかもしれません。
茨城県や新潟県でも同様の動きがあります。
「県JAグループの政治団体『県農協政治連盟』(加倉井豊邦委員長)は一日、常任委員会を開き、衆院選での県内小選挙区の推薦、支持者を決め、発表した。茨城1、5区は自民、民主両党の立候補予定者を支持する。
推薦はいずれも自民前職の額賀福志郎氏(2区)、葉梨康弘氏(3区)、梶山弘志氏(4区)、丹羽雄哉氏(6区)、永岡桂子氏(7区)の五氏。1区の自民前職の田所嘉徳氏と民主元職の福島伸享氏、5区の自民前職の石川昭政氏と民主前職の大畠章宏氏は支持とした。
JAの組合員の意見を聞き、農業に理解が深い立候補予定者を選んだ。県農政連の要領で推薦は一選挙区一人と決まっており、二人の場合は支持とした」
※東京新聞(2014.12.2)農業に理解が深い5氏推薦4氏支持 県農政連
「県内JAグループの政治組織『県農政刷新連盟』(県農政連)は3日、14日投開票の衆院選について、県内全6小選挙区の自民党候補者を推薦することを決めた。態度を保留していた地域農協の意向を3日までに確認した結果、県内25の地域農協で野党の候補者を強く推す声がなかった。安倍政権が農協改革を進めようとする中、自民党との関係を悪化させたくない思惑もあるとみられる」
※新潟日報(2014.12.4)県農政連、県内全区で自民推薦
他にも福井県も自民党を推しましたが、JA内でも意見が対立し、票をまとめきれていないようです。
「福井県農政連(山田俊臣会長)は28日、来月の衆院選で自民党公認の稲田朋美氏と高木毅氏を推薦することを決めた。一方で、政権公約に農協改革を掲げた自民党に対する反発は強く、農政連の動きとは別に、26日には県内11JAの組合長が衆院選では中立の立場で臨むことを確認。表裏一体の県農政連とJAは足並みがそろわない状況となっている」
※福井新聞(2014.11.29)衆院選で農政連とJAに隔たり 福井、農協改革で足並みそろわず
自民大勝を歓迎し、TPP推進を期待する米国
自らの首を締めるように、自民党をサポートするJA。衆院選の自民大勝を受けて、米国の農業団体などからは、TPP交渉推進を期待する声が上がっています。
全米豚肉生産者協議会(NPPC)は12月19日、ニュースレターで、衆院選後のTPP交渉に関する見通しを提示。今後安倍政権は構造改革を推進してゆく分析し、特に農業はその「最大の候補」と主張。「日本農業を競争力のある産業にするには、農産物の輸入障壁をなくすべき」だとしました。
そのうえで、日本がTPP交渉で農産物重要5品目を関税撤廃の対象から例外にしようとしていることを挙げ、NPPCは「大幅に改善された日本の提案を要求し、特に豚肉の差額関税制度の撤廃を求め続ける」との立場を表明しました。
さらに米国のシンクタンク・米戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員らも衆院選翌日の15日、今回の選挙結果を分析。「与党の勝利は、安倍首相を農業重要品目などの問題を前に進めるための有利な立場に置いた」と高く評価しました。
麦などの生産者らで構成される「米国穀物協議会」は、今回の衆院選の意義をホームページで紹介し、「もし安倍首相が支持を得られれば、農業分野などの政治的に難しい問題に取り組む大幅な権限を与えることになるだろう」との見解を提示しました。
安倍政権の大勝を歓迎する米国とは対照的に、JAは、いよいよ窮地に追い込まれたといえるでしょう。
※日本農業新聞(2014.12.23)TPP前進 期待多く 「農業こそ構造改革を」 衆院選・自民大勝受け米国団体
佐賀県で始まる「安倍政権vs農協」の代理戦争
一方で、改めて安倍政権と対峙しようとする動きも見え始めています。2015年1月11日投開票の佐賀県知事選で、佐賀県農政協議会は自民党推薦の立候補予定者への支援を見送ることを決定しました。安倍政権とJAの「代理戦争」が勃発しようとしています。毎日新聞の記事を引用します。
「『(選挙への影響は)かなり出ると思う。あんなに嫌われるとは思わなかった』。佐賀県知事選に自民党推薦で立候補する樋渡啓祐(ひわたし・けいすけ)前武雄市長は22日、党本部で記者団に語った。県農政協議会は『農政そのものが岩盤規制』と首相に同調する樋渡氏を避け、元総務官僚の山口祥義(よしのり)氏を推薦する対抗手段に出た。
(中略)
全盛期ほどの力はなくなったものの、なお一定の集票力を持つ農協の政治団体『全国農政連』は衆院選を前に、各地の候補者に対し、農協改革を骨抜きにする政策協定への署名を推薦の条件として突きつけた。あるベテラン議員は『推薦を取り付けるまでに政策協定書を3回書き直した』と明かす。『改革に前向き』だとして農協組織へのポスター掲示を最後まで断られた議員もいたという。農政連が推薦した190人の自民党候補の多くは政策協定に同意した模様だ。
(中略)
政府は年明けにも農協法改正案の骨子を策定し、与党に提示したうえで、年度末に改革の具体案をまとめる日程を描いてきた。統一地方選を前に『伝統的な支持組織とあまり事を構えてほしくない』(同党地方議員)という声は根強いが、経済官庁幹部は『今さら先送りはあり得ず、農協との全面戦争は避けられない』と語り、年明けから攻防が激しくなるとの見方を示した」
※毎日新聞(2014.12.22)農協改革:揺れる自民 選挙実動部隊、無視できず
「この道」の先に待ち受けているもの
「一人でも多くの農家の方々に、自分たちは自らを絞首刑にかけようとする者のために、自らロープを編んでいるのだ、と気づいてもらいたいと思う」
私がコラムの最後に書いた言葉です。
安倍政権は米国の要求にならい、これまでの日本のかたちを変え、米国型グローバリズムに付き従ってゆこうとしています。この選挙で、安倍・自民党は300議席を獲得するとも報じられています。それが現実の結果となった場合、暴走する安倍政権に、どうやってブレーキをかければいいのでしょうか。
選挙前に書いた誓約書や協定書を突き出し、「約束が違うではないか」と迫ったところで、何の効果もありません。前回の衆院選後に、「TPP断固反対」の公約をあっさりと反故にして、交渉参加を決めた「実績」のある自民党です。自民党が「二枚舌」をためらわないのは、大西議員が証言したとおりです。
自民党は今回の選挙で「景気回復、この道しかない。」とスローガンを掲げていますが、「この道」の先には、どのような日本の農業の姿が待ち受けているか、火を見るよりも明らかではないでしょうか。
一農家です。
JAが、100%良い組織とは、思っていませんが、無くてはならない組織と思っている一人です。
大手メディアが、TPPの本質を全く報道しないもんだから一般の国民は つぎに何が来るのか全くわかっていない。
「IWJ」を始め ネット上には、TPPがどういう内容なのかはかなり転がっているのに 危機感が全くない。
交渉のテーブルに参加した時点で、抜けられないという報道のあるので、もう水面下では参加しているのだろう多分
あとはじわじわと 内容を小出し
協定内容は4年間秘密
更には 特定秘密保護法案
正確な内容なんか もう知るすべがありません
個人で周りの人に話しても変人扱い。
この大きな流れを何とか食い止めないと、と思っているのですが どうにもならない。
アメリカ(国ではなく政治経済を牛耳っているシオニスト)の傍若無人ぶりに ただ飲み込まれるのをただ待っているだけでいいのか
今
2014/12/22 【饗宴アフター企画】「人生に意味はないが、価値はある。生きているだけで充分に幸せだ」 岩上安身による上村静氏インタビュー(後半)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/222668
これを見ていますが、根本の原因が、わかってきた気がします。
今の世界の宗教を理解しないと、大枠が見えてきません。
このテーマの JA解体問題ですが
裏にある 農林中金の資産 JA共済の保有資産 目的は多分これ
上記の資産を分離させてそれぞれのJAで独自で、生き残れと言っていますが、果たして可能なのでしょうか?