「かわいそうな日本の私」というストーリーを作る歴史修正主義者、慰安婦問題を人権問題から外交・安全保障の問題にすり替えていく動きを徹底批判 2014.12.13

記事公開日:2014.12.19取材地: テキスト動画
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(IWJ・薊一郎)

※ 12月19日テキストを追加しました。

 「南京大虐殺事件が始まったのは、77年前の今日だ」

 「歴史修正主義という暴力にいかに抗うか」と題して、モンタナ州立大学の山口智美氏、大学非常勤講師の能川元一氏、植松青児氏の3者によるパネルディスカッションが、南京事件が始まったとされる12月13日、「安倍のつくる未来はいらない!人々」主催により開催された。

■ハイライト

  • パネリスト 山口智美氏(モンタナ州立大学、文化人類学)/能川元一氏(非常勤講師、哲学)/植松青児氏(印刷労働者、南京事件70周年東京シンポ〔2007年〕事務局)

「日本政府によって目論まれている歴史の忘却」

 討論は、「侵略や戦時性暴力への『無知』や『忘却』を強いられている」をテーマに、「歴史の忘却を日本政府によって目論まれているのではないか」との能川氏の指摘から始まった。

 能川氏は、昭和天皇が政治に関与したのは2.26事件と敗戦時だけという、いわゆる「2度の御聖断神話」を例に取り上げ、「そもそも歴史修正主義と認識すらされていない」と、誤った歴史認識について指摘する。

 さらに、「重要な文書を日本政府は公認していない」として、政府の姿勢を強く批判した。

 政府に認められていない重要な慰安婦問題の資料のひとつとして、能川氏は、京都大学の永井和教授により発見された1937年9月29日制定の陸達第48号「野戦酒保規程改正」を例にあげる。 ※陸達第48号「野戦酒保規程改正」は、アジア歴史資料センターで閲覧可能(レファレンスコードC01001469500)

 この改正規定により日本軍施設に慰安所を設けることができるようになり、「日本軍の正式な兵站施設であったという動かぬ証拠」であると能川氏は主張した。

慰安婦問題が情報戦に

 山口氏は、慰安婦問題が「大きな人権問題だったはずが、欧米を視野にした情報戦となっている」と指摘する。

 「なでしこアクション」など、右派の集会を観察している山口氏は、これらの団体が「慰安婦問題は中国 ・韓国による陰謀である。アメリカは騙されている。日本はいわれなき批判にさらされている」との論調になっていると報告。

 山口氏は、慰安婦問題の経緯を振り返るとともに、大きな人権問題だった慰安婦問題が、「保守派によってなかったことにされ、外交問題、安全保障問題だけとなっている。欧米を視野とした情報戦となっている」と指摘した。

歴史修正主義によるナショナリズムの活性化

 植松氏は、歴史修正主義者達が、「中国・韓国は邪悪で、私たちはイノセントであるという『かわいそうな日本の私』という物語」を作ることで、ナショナリズムを煽っていると指摘する。

 これについて山口氏は、アメリカでの右派団体の動きを解説。「海外の日本人がいじめられている、孤立しているというストーリー展開をしている」と述べ、在米日本大使館や外務省もそのストーリーに乗じていると指摘した。

インターネットを利用した歴史修正主義

(…会員ページにつづく)

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「「かわいそうな日本の私」というストーリーを作る歴史修正主義者、慰安婦問題を人権問題から外交・安全保障の問題にすり替えていく動きを徹底批判」への4件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     一番新しい歴史を改ざんしたのは他の誰でもなく、安倍晋三日本国総理大臣だ。2014年12月1日プレスクラブにおいて、1993年に自民党が下野した原因をテレビ局一社の報道のせいにしているが事実は全く違う。これはある程度の年齢以上の者なら一笑に付すが、低年齢の無知な有権者を狙ったデマであり非常に悪質である。Youtubeやブログでこのときの安倍首相の嘘に呼応した捏造の拡散が行われている。視聴数も多く油断できない。最初からグルである可能性が高いと判断される。
     1993年に自民党が下野した原因は全て自民党にある。いい加減有権者がそっぽを向いただけである。リクルート事件、東京佐川急便事件、右翼団体のほめ殺し中止を関東の広域暴力団に依頼した事件、大蔵大臣の秘書が起こした平和相互銀行に40億円で金屏風を購入させた事件、ガットのウルグアイラウンドによるコメの輸入自由化の危機に農家がそっぽを向いたことも大きい。自民党の大物議員が5億円の未申告でも罰金20万円の略式起訴に終わった事件では、検察庁の看板に黄色いペンキがかけられた。後に、検察が本腰を入れて捜査したところ、その大物議員の金庫からワリシンなど70億円の有価証券類が出てきた。原資はやみ献金ゆえに脱税したゼネコンからの献金だった。
     こういう事実が有りながら、無知な若者の有権者をデマでミスリードする首相は直ちに国会議員も辞めるべきである。

  2. うみぼたる より:

    饗宴Ⅴお疲れ様でした。まだ変容中なためボーっとしていますが、饗宴の後に手に取ったのがニーチェだったので、
    能川先生のところにコメントを残します。
    上村静先生のお言葉をお借りすれば、「宗教が神を見失っている」のならば、哲学はもっと拠り所になる、必要になるのだと思います。
    IWJのアーカイブには原発事故と被ばくを哲学者が語っているものもありますね。
    昨今の問題を哲学者に片っ端から語って頂きたい。
    饗宴がますますプラトンに近づいていく。

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「かわいそうな日本の私」というストーリーを作る歴史修正主義者、慰安婦問題を人権問題から外交・安全保障の問題にすり替えていく動きを徹底批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/213264 … @iwakamiyasumi 日本政府によって目論まれている歴史の忘却。これは新たな情報戦だ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/894894541412507649

  4. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「かわいそうな日本の私」というストーリーを作る歴史修正主義者、慰安婦問題を人権問題から外交・安全保障の問題にすり替えていく動きを徹底批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/213264 … @iwakamiyasumi 「ごねれば何とかなる」とでも思ってるのだろうが、こんな屁理屈は日本ムラでしか通用しない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/934899661759954945

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