「この(官邸前という)場所は、政治の中心というよりも、民主主義の最前線、センターなんだぞ、ということを言うために来ました」
12月10日、特定秘密保護法は施行された。しかし、同法に対する国民の懸念は消えていない。施行日前日の12月9日(火)午後7時より、特定秘密保護法に反対する学生有志の会「SASPL」主催による「特定秘密保護法に反対する首相官邸前抗議」が行われた。
「特定秘密保護法反対!」、「I Say 憲法、You Say 守れ」、「Get Up Stand Up Stand Up for Your Right」、「Get Up Stand Up Don’t Give Up the Fight」、「Tell Me What Democracy Looks Like」、「安倍は、やめろ!」、「言うこと聞かせる番だオレたちが」――。
スピーカーから流れる音楽に合わせ、シンプルなメッセージを軽やかなリズムにのせて幾度も歌い上げるSASPL。コールの合間にはスピーチをする有志の学生が登場し、法が強行採決された昨年2013年12月を振り返り、それぞれが運動に参加した動機や思いを語った。時に感極まり、涙を流しながら施行反対を訴える学生も見られた。気温がみるみる低下し、冷たい風に体温を奪われながらも、夜を徹して、熱のこもった抗議行動が展開された。
途中、飛び入りゲストとして登場した政治団体NAU(日本アーティスト有意識者会議)代表を務める三宅洋平氏もマイクを握り、若者たちに向けて、これまでの活動と今後の展望を情熱的に語りながら、世代を越えた連帯を呼びかけた。
- 日時 2014年12月9日(火) 19:00~
- 場所 首相官邸前(東京都千代田区)
- 主催 SASPL(特定秘密保護法反対する学生有志)
「『何かが終わった』と誰かが言ったその日に、僕たちは新しく始めようと思ったんです」
昨年2013年のSASPL設立に関わった奥田愛基氏は、12月10日の特定秘密保護法施行の後も、抗議運動を継続して展開し、民主主義の再興へ、たゆまぬ挑戦を続けていく決意を語った。
「特定秘密保護法が強行採決された昨年2013年12月6日、ある人は『この国の民主主義は終わった』、とか、ある人は『絶望の国だ』、『もうこの国は終わった』とか、いろいろを言いました。しかし、『何かが終わった』と誰かが言ったその日に、僕たちは新しく始めようと思ったんです。そのことをちゃんと声に出していっていくということ。
私は諦めきれないのです。それが自由なのか、民主主義なのか、分かりませんが、この(官邸前という)場所は、政治の中心というよりも、民主主義の最前線、センターなんだぞ、ということを言うために来ました。
決して諦めてはいけません。まだ何も終わってはいません。むしろ、終わりがあるということは、常に始まりがあるということ。僕は、まだこの国が諦められません。『絶望の国』のなかで、どのように生きていきたいのか、自ら決めるという夢を、諦めきれないのです。
主権者として、私は今日、声を上げます。それこそが私が信じる民主主義であり、自由であり、たとえ、この法律に8割の人が賛成したとしても、僕はこの法律に反対します」
可決に至るプロセスへの批判――安倍政権の「暴走」
加えて奥田氏は、特定秘密保護法が可決されるまでの拙速な議論、強引なプロセスが、安倍政権の「暴走」であると批判した。
「他の重要法案に比べ、明らかに審議時間が短い。また、世論で8割以上の修正を求める声が上がったにもかかわらず、強行採決という形がとられました。また、通った後で、国民に説明を求めていく、というありえないスタイルが採られていることからも、安倍政権は暴走していると言えます」
党派を越え、音楽を通した連帯感――今、ここを生きる市民活動
抗議行動に参加した女子学生は、SASPL主催の運動が持つ魅力を、「どこの党派にも染まることなく、ヒップホップなどの音楽を使ったりして、『格好良くしないと人が来ないよね』ということは、いつも皆と話しています」と語り、こう続けた。
「SASPLという枠に捕われないで、『考えようよ、動こうよ、選挙に行こうよ』ということが大事です。だから『施行がいつか』とか、(施行された後、これから新たに始まる抗議運動が)『どれだけかかるか』、ということは差し置いて取り組んでいく、というスタンスでやっています」
施行に反対する理由――立憲主義に反する特定秘密保護法
参加者の男子学生は特定秘密保護法に反対する理由として、次のように述べ、SASPLの持つ明快な論理を示した。
「この法律は、立憲主義に反し、権利や自由を侵していると言えます。
第一に、知る権利について、特定秘密保護法は、あいまいな規定によって、いくらでも秘密の範囲を広げられるようになっています。そして、それをチェックする第三者機関も、すべて内閣内にあるものであり、第三者機関とは言えません。
第二に、行政はいくらでも恣意的に、僕らを取り締まれる可能性があるということです。煽動や教唆など、秘密を得ようとすることまで取り締まろうとしています。
第三に、プライバシーについて、この法律の適性評価とは、公務員、非公務員を分けることなく、秘密を取り扱う人に調査が行われます。その調査の項目は、僕らのプライバシーの侵害になるような項目が含まれ、その調査を断った場合の僕らの身分の保障はされていません」
三宅洋平氏「自分が一次メディアになれば、明日には新しい風景が広がっている」