検察は「加害者とともに笑う」のか? 鮫川村仮設焼却炉建設 偽の同意書をめぐる告発が「不起訴」に 2014.12.2

記事公開日:2015.1.8取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・関根)

 福島第一原発事故で汚染された稲わらなどの廃棄物(8000ベクレル/キロを超える高濃度放射性廃棄物)の減容化のため、福島県鮫川村に焼却施設を建設する際、環境省と鮫川村は近隣住民にほとんど知らせないまま、「その土地の共同地権者たちの同意を得ている」として建設を進めた。

 それに対し、地権者のひとりである堀川宗則氏は、「同意はしていない。自分の署名と捺印は偽造された」と訴え、有印私文書偽造、同行使で告発。福島地裁に同施設の操業差し止め仮処分を申し立てた。

 2014年12月2日、福島地検は有印私文書偽造について、「同意書ねつ造の証拠が不十分」として不起訴処分を下した。これを受けた堀川氏らは、同日、福島県郡山市役所記者クラブにて、「鮫川村仮設焼却炉建設問題 鮫川村による地権者との未契約工事に関する刑事告訴についての記者会見」を行い、検察審査会に再審請求の申し立てをすることを表明した。

 さらに、同施設の周辺道路の整備について、私有地使用の同意がないことが明らかになり、鮫川村長の大樂(だいらく)勝弘氏を不動産侵奪罪で棚倉警察署に刑事告訴したことも報告した。

 環境省は、同じような施設を県内約20ヵ所に計画、最初に実行したところが鮫川村だった。周辺住民や隣接自治体への事前説明はなく、2012年11月着工、2013年8月に完成したが、操業直後に爆発事故を起こしている。この事故についての詳細も明らかにされず(情報公開請求で出た報告書は黒塗り)、その後、鮫川村住民限定の説明会を一度開いただけで、同施設は2014年3月18日に運転を再開している。

■全編動画

  • 日時 2014年12月2日(火) 15:30~
  • 場所 郡山市役所記者クラブ(福島県郡山市)

署名捺印を偽造されて、なぜ、不起訴なのか?

 冒頭、主催者から「鮫川村焼却事業停止仮処分と有印私文書偽造の告発に、検察庁郡山支部から不起訴の決定があった。引き続き、検察審査会に再審請求をした」との報告があった。

 まず、署名捺印を偽造された地権者の堀川氏に、今回の不起訴について感想を聞いた。堀川氏は開口一番、「なぜ、不起訴なのか、理解できない」と述べ、次のように続けた。

 「私に対する検察官の質問内容は、毎回変わった。最初は、『(あなたは)電話で承諾したことになっている。水掛け論になるから、立証しないとダメだ』と言われた。2回目には、『あなたは反対意志を誰かに伝えていたか』『(電話で承諾していないことを)証明しなさい、なんて検察は言ってません』と言われて、常に問題を蹴られる(拒否される)感じで、言葉巧みに、うまく退けられたと思う」

不起訴の理由は「建設に反対していた証拠がない」

 弁護人の坂本博之弁護士が、今回の経緯を説明した。

 「平成24年(2012年)5月、環境省が指定廃棄物焼却のための仮設施設の建設を、鮫川村の共有牧草地に計画。堀川氏を含む18名(うち死亡者4名)の共有名義であるその土地を、農地以外に利用する場合は地権者全員の同意が必要だが、堀川氏には事前の連絡もなく、勝手に同意書が偽造された。

 有印私文書偽造、同行使で、検察庁福島地検白川支部(常勤の検事不在のため郡山支部の検事が兼任)に刑事告発、2014年11月4日付で不起訴が決定した。

 その数日前に、担当検事から電話があったので、私は犯罪を否定する不起訴なのか、犯罪ではあるが温情など他の事由で不起訴にする起訴猶予なのかを尋ねた。

 検事は『不起訴』と答え、その理由を、『偽造者の有罪を立証する証拠が不十分。同意書が偽造された平成24年5月頃、堀川氏が建設に反対していたことを裏づける証拠がない』と語った」

検察官は腰が引けている

 坂本弁護士によると、実際に偽造したのは、ある地権者の配偶者で、その人は鮫川村内の別の人物から「堀川氏は同意している」と聞いて、堀川氏の名前で同意書に署名をしたのだという。

 (堀川氏の同意を伝えたという)その人物の供述の信用性を、検察は検討するべきだったと指摘した坂本弁護士は、「検察官は、偽造した人や周辺の人物の捜査に手を抜いた、もしくは手加減をしたのではないか」との疑問を口にした。

 さらに、「以前、ある検察官が『被害者とともに泣く検察を目指す』と言ったことがあるが、今回のケースは『加害者とともに笑う検察』ではないか」と痛烈に批判した。

 坂本弁護士は、「今回の事件は、国策で進められた原発の、事故後の後始末に関わることで、検察官や検察庁は非常に腰の引けた対応をしている。こんなことでは法治国家の日本を守れない。検察庁の存在意義が問われている。今回の不起訴決定は、堀川氏も納得できるものではないため、検察審査会に不服の申し立てをした。事実を精査して、『不起訴不相当』の結論を望みたい」と力を込めた。

鮫川村だけの問題に矮小化されてはならない

 郡山市議会議員の蛇石郁子氏は、「個人の人権が侵されていることは無視できない。同様のことが郡山市で起きたら、もっと大きな問題になるはずだ」と述べて、この問題が鮫川村で封じ込められて広がらないことへの懸念と、国への強い不信感を表明した。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページより御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録

関連記事

「検察は「加害者とともに笑う」のか? 鮫川村仮設焼却炉建設 偽の同意書をめぐる告発が「不起訴」に」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    放射性物質汚染対処特措法 が、いかされていないのでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です