2012年6月19日(火)、経済産業省本館10階で、枝野幸男大臣の定例会見が開かれた。大飯原発2基の再稼働が決定したが、原子力安全委員会のチェック体制が停止しているため、他の原発についての再稼働の安全審査には着手できない状況を会見で明らかにした。
現在、福島原発事故の原因究明を検証しているのは、政府事故調、国会事故調、民間事故調の3つの委員会。大臣は、政府が拘束されるのは政府事故調の検証結果のみで、他は「参考にする」とした見解を示した。報告によっては、担当者を更迭するなどの可能性もあるのかという質問に対し、「責任を追求するのが検証委員会の目的ではない」と述べた。
昨年の原発事故発生直後に、米国が独自に測定した放射性物質の拡散予測を文科省と保安院が入手していた問題について、当時官房長官だった大臣にも情報が伝わっていなかったことを明らかにし、「情報が活かされなかったのは誠に遺憾。被害者のみなさんには大変申し訳ない。保安院に対し、強く指導した」と語った。
- 日時 2012年6月19日(火)
- 場所 経済産業省本館10階(東京都千代田区)
<大臣会見フルテキスト>
大臣「私の方から発表事項はございません」
朝日新聞(記者不明)「再生エネルギーについて…」
大臣「ドイツやスペインの先行事例というのは日本にとって良かったり悪かったり、参考になりますので、そこの状況を把握して、この間も努力をして行きたい。特に今回、初年度の…価格がありましたけれども、今後、実際の価格等についてきちんとフォローをしながら、それを反映させていくということをしっかりとやっていくことが重要だと思っています」
朝日新聞 質問、聞き取れず。
大臣「もちろん油断をしてはいけないと思っていますので、ドイツ、スペインの例について更に最大限努力をして今後もやって行きたいと思っていますし、実際にスタートした以降は価格が一番中心ですけれども、様々な状況をしっかりと聞きながら進めていくことが重要だと思っています」
朝日新聞「TPPについて…」
大臣「各国ともそれぞれ状況、立ち位置が違いますので、我が国としては引き続き、協調参加に向けた協議を勢力的に進めて参りたいと思っています」
朝日新聞 質問、聞き取れず。
「国内における様々な検討ももちろん必要だと思っていますが、それは様々なご意見があると思いますので、あらかじめ後ろを向いて、と受取れられかねないお話はしない方がいいと思います」
時事通信社 高橋記者「国内の商品先物市場について…」
大臣「ご指摘の通り、必ずしも活気を呈していて、取引市場の経営や運営に余裕がある状況ではない。活性化を図るべく努力をしなければいけない状況だと思っている。ただそれを活性化するために、これを一つをやれば大きな効果があるという性格のものではなく、だからこそ審議会においても様々な施策を進めていくべきだという提言をいただいたばかり。これについて一個一個、できるところから着実に進めていきたい」
時事通信社 大塚記者「愛媛県の中村知事が安全性を確認した上で、再稼働する必要があるという考えを認めましたが、大臣としては伊方原発の再稼働の必要性というのは、どうお考えか」
大臣「特に今、規制と利用が同じ経産省の中で併存していたというのが問題であるという観点から、新規制機関の国会審議が進んでいるという状況であります。まさに規制と利用が現時点では、私の元に情報併存しているという状況の中で、伊方については残念ながらまだ安全性についての確認プロセスが終わっていません。その段階で、必要性について私の立場で何か申し上げることは、規制と利用が別々であるという観点から適切でない」
大塚記者「新しい規制機関ができるまでの間、伊方について進めるつもりがないということですか。それとも、あくまでも安全委員会が審査をしていないから、進められないということですか」
大臣「後者です」
愛媛新聞 タダ記者「愛媛県知事は、新たな原子力規制機関ができるまでは、原子力安全委員会でストレステストの二次評価等を審査しろと言っていますが、これについての大臣のお考えは」
大臣「そういう仕組みで昨年の7月に大臣合意をして、それについては基本的に安全委員会のご了解いただいていたものでありますから、当然進めてご了解いただいたことで対応していただきたいと、私どもは思っております」
フリーランス カミオ記者「規制庁について。三党合意で規制庁が…。当初の政府案と比べて、どういう所が良くなったのかということを国民に対して説明する必要があると思うのですが、新しい案について何がポイントなのか、担当は違うと思うのですが、同じ原発に関わっている大臣としてポイントの整理をしていただけますか」
大臣「二重の意味でお答えする立場でない。一つは新規制機関についての所管は細野大臣にある。それから今、国会で審議されている法案は議員立法なので、そのポイントなりメリットは提案した…が行うべきことだと思います」
テレビ朝日 記者不明「昨日も会見とかで明らかになっていますけども、アメリカが発災直後に、放射性物質の拡散状況を調べて、まさにSPEEDIと同じで…ということを外務省を通じで保安院と文科省に伝達したと。これが活かされることがなかったということについての、大臣の受け止めを教えてください」
大臣「本来、情報は政府の中で、適切に共有されたり活用されなかったりするのは大変残念でありますし、これに対し被害者のみなさんには、大変申し訳ないと思っております」。
テレビ朝日「関連ですが、間もなく政府事故調、各種事故調の結果が出てくると思うのですが、これを踏まえた国の責任というのはどこかで問わなければならない。特に、保安院や安全委員会含めて、こういう所に瑕疵がなければこんなことは起きなかったわけで、こういういものを政府として、検証とけじめを…するつもりがあるのかをお聞かせください」
大臣「まさにその検証のために、政府は独立性の検証委員会を作っている」
テレビ朝日「すいません。何かが間違っていたという漠然としたことではなく、役所の中でどこに責任があって、誰かを処分するといったことまできちんと踏み込むお考えはありますか」
大臣「独立性の高い検証委員会が検証をされているところだという風に考えております」
時事通信社 大塚記者「今のは検証の結果、どうされるのかを聞いているのに対して、検証がどうするかというのは全く答えになっていないと思うのですが」
大臣「検証の結果が出てきた所での、それは答えになります」
大塚記者「その段階で判断するということですか」
大臣「今、検証の結果はまだ報告をいただいていませんので、今の段階で何かを申し上げる段階ではありません」
大塚記者「これまで政府は全く個人として、誰一人責任を取っていないという状態であることは、これはそういうことでよろしいのですか」
大臣「それが目的ではありませんが、なぜ事前に事故が止められなかったのか、その問題を広く、独立性の高い検証委員会いただけるということです」
大塚記者「例えば、東京電力は今度の株主総会で、勝俣会長を始め取締役のほとんどが退任して行きますが、彼らも個人的に何か、津波の検証や耐震について責任を持っていたわけではないですが、責任を取ってやめるということにはなりますから、それに対して政府が誰一人責任を取ってやめるなり、その責任を取らないということは、同じように原子力行政をやってきた者として、あまりにアンフェアではないですか」
大臣「まず、今政府として、事故をなぜ止められなかったのか、そして拡大を防ぐ余地があったのかどうか、あったとすればなぜ拡大をより小さくできなかったのか、まさに独立性の高い検証をいただいている。その検証を待っている、ということです」
大塚記者「大臣があれだけ追求した東電は、検証を待つまでもなく、責任を取っていますよね」
大臣「私は東京電力の事故の発生そのものについて、責任を追求するようなことを申し上げたことはありません」
テレビ朝日「一つの考え方としてですね、検証を待って、これは国や行政に責任がないということはあり得ないわけですから、役所の誰かを更迭、更迭という言葉は私は嫌いですけれども、誰かをやめさせるとか、減給させるとか、昇進を止めるとかか、そういことをやるお考えはあるのかないだけお聞かせください」
大臣「今まさに、さまざまな検証をいただいているということです」
カミオ記者「今の質問に関連して。検証という意義は…国会事故調、これが一番新しく、我々自身もオープンに参加して意義があると思っていますが、それと政府事故調、民間事故調、3つを合わせたものが検証と…。それと、今までの流れを見ていますと、それぞれの検証委員会でどうも責任は追求しないというニュアンスがある。そうすると、国民の一般的な意識として、これだけの事故が起きて誰も、みなさんがおっしゃるように、何も全く責任という形が取れていないとなると、色々な意味で不満が残るし、色々なことをやってくれても一緒になる。今後の問題にもなってくる。これについてどう思われますか」
大臣「それは色々なお考えがあると思います」
カミオ記者「検証という意味は…」
大臣「先ほども申しました、検証が何か責任追求を目的にしてるものではないことは、それぞれの検証委員会が仰っていることだと思いますが、事実関係が解明されて分析がされなければ、イメージだけでものごとを進められる話ではない。
政府は自ら設置をして、独立して検証いただいている政府の事故調には拘束されます。国会は、国会の独自の判断で設置をされている。もちろん、参考にはいたします。法律に基づいて」
朝日新聞 記者不明「米国から与えられたデータの問題ですが、我々は3ヶ月以上前から保安院に対して取材をしてきたにも関わらず、ほとんど放置されていた状態で、全く保安院は開示を示してこなかったのですが、その点はまた事故調の検証とは別に、省内として何らかの調査をするなり、どうしてこういう物の情報公開ができなかったのか、長い間放置したのかという問題に対して、大臣としてどう対応していく予定があるのか、考えがあるのかお聞かせください」
大臣「もうすでに取り組みました。…に対応できなかったのは誠に遺憾でありまして、保安院の中において適切に情報共有され役割分担がなされずに、適切に対応できなかったのは大変反省すべき。保安院に対し強く指導すると共に、今回の事例を教訓に、管理職が率先して取材対応の進捗を把握、管理する等、今後の改善に務めるよう指導しました」
朝日新聞「もう一点。文科省も保安院もこの情報はどこにも上げていなかった。当時大臣は官房長官でしたが、この時期にアメリカからデータを与えられていたというのは、大臣はご存知だったのか、全く知らなかったのか」
大臣「少なくともこの時期には存じ上げませんでした。アメリカが空からモニタリングしたという話については、かなり後に、報道か何かで知ったという記憶だけ残っています」
(了)