「本当の意味で社会のためになる本を出し続けることが我々の信念だ」出版社23社が右傾化に抗して即売会を開催 2014.11.1

記事公開日:2014.11.4取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・原佑介)

 「改憲、右傾化、戦争を許さない」。危機感を同じくした出版社23社が合同で11月1日、「戦争前夜 本の街で『平和』を考える」と題した書籍即売会を東京・神保町で開催した。

 この日は雨天だったが、会場には大勢の来場者が訪れた。トークショーも三度行われ、のりこえねっとの辛淑玉氏や右翼団体「一水会」の顧問・鈴木邦男氏、元NHKのプロデューサー・永田浩三氏などが登壇。どの回も客席は満員となった。即売会に参加した出版社は次の23社。

あけび書房 大月書店 凱風社 学習の友社 かもがわ出版 金曜日(週刊金曜日) クレヨンハウス 現代書館 現代人文社 合同出版 高文研 子どもの未来社 コモンズ 彩流社 三一書房 自治体研究社 旬報社 新泉社 新日本出版社 水声社 柘植書房新社 デイズジャパン 同時代社

■ハイライト

  • ミニ講演会 平井康嗣氏(『週刊金曜日』編集長)
  • 対談 池田恵理子氏(元NHKディレクター)× 永田浩三氏(元NHK制作局プロデューサー)
  • 鼎談 佐高信氏(評論家)× 辛淑玉氏(のりこえねっと)× 鈴木邦男氏(「一水会」顧問)
  • 日時 2014年11月1日(土)10:00~19:00
  • 場所 神保町「STORAGE」(東京都千代田区)

「本当の意味で、我々の社会のためになる本を出し続ける」

 会場で店番をしていた柘植書房新社の木下耕一路さんは、柘植書房新社の信念は「本当の意味で、我々の社会のためになる本を出し続けること」だと語る。「歴史的には反ヘイトスピーチのような本もいっぱいあった」と振り返る。

 木下さんは、「経営なんかはしんどい。でも、売れるためにヘイト本を作ったとしても、1発当たっただけですぐに潰れる出版社だって多い。昔はこういうもの(平和を訴える本)でも、初版で7000部刷るような売れた本はいっぱいあった。人間が変わり、社会も変わったんだろう」と話した。

 凱風社の代表・小木章男さんは原発事故後、それまで隠されていた「メルトダウン」の真実をいち早く断定し、どこよりも早く「メルトダウン」をタイトルにつけた本『JVJA写真集 3・11 メルトダウン(編集:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)』(凱風社、2011年7月)を出版した。

 「3.11関連の本は、1年間で1000冊(種類)ほど出た。この問題をいろいろと追ったのは、ほとんど出版社だった。反原発の機運が盛り上がったのは、間違いなくNHKなどではなく、出版物の影響だったと思う。まだ力があるなぁと感じた。必ずしも大メディアだけでなく、出版物が力を発揮する場合もある」と述べ、クオリティ勝負で「譲れない作品」を出版し続けていくと話した。

 同じく凱風社の新田準さんは、安倍政権下で進む右傾化や、ヘイト本ばかりが売れるなどの問題について、「出版社1社では対抗できない」としつつ、カウンターの動きは広がっていくだろうと期待を込めた。

「差別も暴力だし、自分以外の他を認めないというのも暴力」

 若い来場者の女性は、「DAYS JAPAN」のfacebookページでこの日の即売会を知ったという。「母が韓国人なので、ヘイトスピーチに関してもそうだし、人権に関する本とかが気になる」。女性は、「ヘイトスピーチは実際に渋谷で聞いたことがある。私自身、詳しく知らないが、言葉も暴力だと思った」と語る。

 女性は、購入するために加藤朗氏の著書『13歳からのテロ問題―リアルな「正義論」の話』(かもがわ出版、2011年9月)を手に取っていた。この本を選んだ理由を「差別も暴力だし、自分以外の他を認めない、尊重できない、というのも暴力。正義について知りたいと思った」と話した。

 岡裕人氏著『忘却に抵抗するドイツ―歴史教育から「記憶の文化」へ』(大月書店、2012年6月)を手にとっていた男性は、「日本とドイツは同じ敗戦国であり、全体主義国家だった」とし、両国の現在を比較する。

 「ヨーロッパはEUというかたちになり、犬猿の仲だったフランスとも今は一緒にやっている。ドイツは、なんらかの許しを請う部分があったのだろう。かつて占領した国とも一緒になって政体を運営している。『融和』の中では、過去を忘れ去ることができないメカニズムになっているのではないか」

 一方、日本について、「島国なので、閉じこもると、忘れ去ることができてしまう。閉じこもれば、過去の戦前の日本に戻ることもできると思う。だから、ヘイト本などの『内側』へ向けた本が売れるのではないか」との見解を示し、未来を案じた。

「改憲していないのに改憲に倣った動きが自主的に出てきているのは怖いこと」

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「本当の意味で社会のためになる本を出し続けることが我々の信念だ」出版社23社が右傾化に抗して即売会を開催」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「本当の意味で社会のためになる本を出し続けることが我々の信念だ」出版社23社が右傾化に抗して即売会を開催 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/201709 … @iwakamiyasumi
    本を愛する一人として嬉しく思います。この日販売した本のリストが知りたいな。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/529967944277581824

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です