中山泰秀外務副大臣は、10月30日の定例会見で、従軍慰安婦を「性奴隷」とした国連人権委員会の「クマラスワミ報告」をめぐり、日本政府がクマラスワミ氏と直接面会して記述の一部修正を求めたものの同氏に拒否されたことについて、「非常に残念だ」と述べた。
朝日新聞が、済州島で慰安婦を強制連行したとする故・吉田清治氏の証言を撤回して以降、自民党を中心に、「クマラスワミ報告」に強く反論をすべきだとの声があいついでいる。
しかし「クマラスワミ報告」に関しては、吉田氏の証言だけでなく、同証言に疑義を呈する歴史家の秦郁彦氏の研究も参照されており、朝日新聞による吉田証言の撤回をもって、同報告の趣旨を否定するのには無理があるのではないか、との指摘もある。
中山副大臣は、朝日新聞による吉田証言の撤回とクマラスワミ氏への修正要求の因果関係について聞かれると、「今、ご説明申しあげたとおり」と言葉を濁した。
- 日時 2014年10月30日(木) 15:30~
- 場所 外務省(東京都千代田区)
以下、記者会見での中山泰秀副大臣とIWJとの質疑応答です
ウクライナ議会選の結果、「歓迎したい」
IWJ平山「先日、ウクライナ議会選挙が行われ、ポロシェンコ大統領を中心とする親欧米勢力が勝利をおさめました。他方で、ウクライナ東部では親ロシア派が独自に選挙を行うと見られており、ウクライナ分断の固定化が懸念されています。
副大臣は現在のウクライナ情勢をどのように見られ、また、政府としては今後、ロシアに対してどのように働きかけるべきだとお考えでしょうか。ご見解をお聞かせください」
中山副大臣「ウクライナの最高会議選挙は、おおむね自由かつ平穏に実施されたということを承知しており、これを歓迎したいと思います。我が国はウクライナにおいて、新しい議会および政府がすみやかに組織され、諸課題の解決に向けて、前進することを期待しています。
また、ウクライナの繁栄と安定の実現に向けて、同国を支援していきたいと思っています。また同時に、ルガンスク州、ドネツク州の選挙で、投票が実施できなかったことに関してですが、ウクライナの平和と安寧の実現のためには、今回の選挙の平和的かつ民主的な実施が重要であり、これを妨害した親ロ派武装勢力の動きを非難する立場にあり、今回の選挙においては、全国225選挙区のうち、クリミア及び東部2州の分離派占領地域では投票が実施されず、これら選挙区の議席は、空席になると承知しています。
一方、それ以外の地域では、選挙がおおむね自由かつ平穏に実施されたと承知しており、選挙の正統性に関し、問題はないと理解しております」
「クマラスワミ報告」問題、「国際社会にしっかり説明」
IWJ平山「慰安婦問題に関連して、政府がクマラスワミ氏に対して、報告書の一部撤回を求めた件についておうかがいします。日本側からの修正要請はクマラスワミ氏に拒否をされたわけですが、同報告書をよく読むと、吉田清治氏の証言からの引用はほんの一部で、吉田証言を批判する学者の学説の引用や、その他80人近い証言が引用されています。
朝日新聞の報道撤回をもって、同報告書の趣旨を否定することには無理があるとの指摘もあるのですが、政府として、このクマラスワミ報告についてどのようなご認識をお持ちなのか、改めて教えてください。さらに、今後も同様の撤回要請を続けていくのか、そして今後、そのことを米国を含む諸外国に対しどのように説明するのか、副大臣のご見解をお聞かせください」
中山副大臣「本件の報告書に対する政府の立場は、これまでも人権委員会など、国連の場で説明してきましたが、今般の朝日新聞の報道撤回といった最近の進展があったことから、政府関係者が14日、クマラスワミ氏本人に直接面会をして、同氏の見解を修正することを求めました。
我が国の基本的立場、また、同報告書の提出後に実施されたアジア女性基金事業および女性の人権の促進に向けた日本の取り組みについても、説明をさせていただきました。
クマラスワミ氏からは、『報告書を修正する立場にない、吉田証言は証拠のひとつに過ぎない、引き続き報告書の立場を維持する』という趣旨の反応があったと承知しています。それに対する政府の見解としては、非常に残念である、ということです。
政府としては、国連人権委員会をはじめとする国際社会に対して、適切な機会を捉えつつ、我が国の基本的立場、これまでの取り組みに関して、しっかりと説明をして、理解を求める考えに、何ら変わりはないということです」
IWJ平山「今のご説明で、1点だけ確認させてください。クマラスワミ氏に抗議をしたというのは、朝日新聞が報道を撤回したということをもって、という順序だという理解でよろしいでしょうか」
中山副大臣「その点に関しましてはですね、今、ご説明申し上げたとおりであります」