「ヘラルド・トリビューン紙上で、白雪姫が日本の汚染リンゴを食べて死んだマンガを発表した。それについて、日本政府は抗議した。海外はマンガで政治批判を許している。
今年のピューリッツァー賞マンガ部門では、福島原発事故のテーマで受賞した。つまり、外国からは日本は危ないと思われている。それは、正確な情報を発信していないからだ。日本は、命を守るというスタンダードを緩めてしまった。これから日本は、海外諸国から信用されなくなるだろう」
元外務省国際情報局長の孫崎享氏に2011年4月25日(水)、岩上安身がインタビューを行なった。福島原発事故の問題に関し、正しい情報を明らかにすると、その周辺も巻き込まれ、風評被害も懸念されることについて、岩上安身の問いに孫崎氏はこのように答えた。
- 日時 2011年4月25日(水)
- 場所 孫崎邸(東京都内某所)
原発事故を契機にマスメディアを信用しなくなった
冒頭、岩上安身が「Deep Night @大阪、の告知も含め、原発事故を契機にして、さまざまな情報のあり方について、孫崎氏に話をうかがいながら問い直したい」と前振りを話した。
孫崎氏は、「今回は、天災と人災が合わさった。今後、再び同じことが起こりうる。今、原発のあり方を見直す時期になった。原発撤廃に動いているドイツに注目している。そして日本は、エスタブリッシュといわれる有識者、政府などから、原発の有無に対し、率先して意見が発せられるはずなのに、まったくない」と主張。
これを受けて岩上安身は、「マスコミのあり方が、まず問題。抗議デモなど、いっさい取り上げない。報道しないと、存在しないことになってしまう。その状況を今、ソーシャルメディアなどネットが補い、世の中を変えつつある」と補足した。
孫崎氏は、「原発事故を契機に、国民は今までの政府、政治、財界、マスメディアの言動に、真実を伝えていない、と疑うようになった。今までは疑っていても、それを発信することができなかった。しかし、ツイッターなどで個人が意見を言えるようになった」と、ソーシャルメディアへの期待に触れた。
岩上安身も、ソーシャルメディアの特性や、世間への影響の大きさ、そして、記者クラブや東電、保安院の妨害と抵抗、そして独立系メディアの増大する影響力などに言及した。
インテリジェンスとインフォメーションの違い
テーマは、安全保障上の原発の危険性に移った。
孫崎氏は、「地震・津波の起こる可能性が、他国からの攻撃より多大な可能性がある。なぜ日本は、事故が一度起こったら、ひとつの国が吹っ飛ぶくらいなのに、危険に思わないのか。現状はネットメディアで拡散していくしかない」と危機感を露わにする。