「政府が出した集団的自衛権の具体的事例は、思いつき」 ~橋下徹大阪市長 定例会見 2014.6.19

記事公開日:2014.6.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

 「日本の自衛権の、どこに不備があるのかという部分が、国民に伝わっていない」──。

 2014年6月19日(木)14時から、大阪市北区の大阪市庁舎で、橋下徹大阪市長の定例会見が開かれた。橋下市長から3つの市政報告があり、その後は質疑応答になった。質問のほとんどが、大阪都構想での法定協(大阪府・市特別区設置協議会)のメンバー入れ替えや、9月の本議会提出までの手続きの問題などに集中した。

 IWJは、集団的自衛権行使を限定容認する橋下市長の考えを確認した上で、安倍総理が示した「米輸送艦による邦人輸送」の想定について、「米国側は、そのような想定はしていない。日本政府も、6月11日の衆議院外務委員会でそれを認めているが」と、市長の見解を尋ねた。

 橋下市長は「情報が錯綜しているから、わからない」とし、「政府の出した具体的事例は体系的ではなく、思いつきの事例のように感じる」と述べた。

■全編動画 ※8分45秒後に始まります。ご了承ください。

高効率なエネルギー国家へ

 はじめに橋下市長は、「保育所保育料のみなし寡婦(夫)控除を、未婚のひとり親家庭に対しても適用することになった」と報告した。離婚など法的事実がある寡婦(夫)に限っていた控除を、未婚者にも適用するもので、保育料は月額1万9700円から1万5200円になる。約280世帯を対象に、平成26年6月分の保育料から実施する。橋下市長は「ただし、ひとり親家庭と、両親がいる家庭との不公平感の問題が出てくるので、ゆくゆくは寡婦(夫)控除という制度自体を見直さないといけない」と話した。

 続いて、平成27年度導入予定の「大阪城公園パークマネジメント事業」の事業者募集について話した。これは、大阪城公園を世界的な観光拠点にするため、民間事業者の柔軟なアイデアや活力を導入するというもので、民主体のPMO(Park Management Organization)事業者が、公園及び公園施設を一体管理することになる。

 橋下市長は「民間事業者が大阪城公園をフル活用して収益を生み、それを公園の管理に回す仕組みだ。大阪城公園西の丸庭園、豊松庵(茶室)、野球場、天守閣、音楽堂、その他既存施設の活用などが考えられる。大阪城公園の魅力を最大限に活用してくれる事業者を募集する」と述べた。

 この夏の節電については、「関西電力管内の電力需要は、昨年より厳しい状況だ。平成22年度と比較して11%以上の節電を掲げる」とし、7月から9月まで、市の施設で実施する節電対策を紹介した。その上で、「原発問題で『国富の流出』などと言われるが、石油の全体需要量を見れば、高効率なエネルギー国家を目指していくべきだ」と話した。

大阪都構想「反対意見を通したければ立候補すればいい」

 質疑応答に移り、大阪都構想について、「法定協の反対派委員が、浅田均会長に代表者会議を申し入れたが、拒否されて平行線に終わった。このまま法定協のメンバー入れ替えを強行するのか」という質問が出た。

 橋下市長は「反対意見は十分聞いた。メンバー入れ替えは解釈論。だから自分は、6億円をかけて市長選でそれを問いただした。反対派が意見を通したいのなら、自分を(選挙で)落とせばいいだけだった」と答えた。

 記者から「法定協で協定書をまとめればいいと言うが、府議会、市議会で協定書の修正は可能か。議会で十分に議論にして協議会に差し戻し、議論を尽くすのが、法の趣旨ではないか」と問われると、橋下市長は「それは間違っている。本議会で原案を作るのは大変だから、法定協で作るのだ。法定協で修正案の是非を問う必要はない。そうでないと、9月の本議会に間に合わない」と応じた。

 「問題点の指摘が不十分だ、という意見もあるが」と重ねて問われると、「問題点を挙げたらきりがない。まとまるものも、まとまらない。最後は、議会の議決が決めるからいい」と返した。

 記者は「このまま強行すると、『維新の会だけで作った協定書に正当性があるのか』という議論に必ず発展する」と食い下がったが、橋下市長は「民主主義のルールである多数決に基づき、法定協のメンバーを選出し、原案を作った。あとは議会の議決で決めればいいだけだ」と繰り返した。

関西電力はまったく経営能力がない

 関西電力の株主総会での質問内容を尋ねられると、「去年の質問の延長だ。2年前に、この事態(経営悪化)を予測して質問をした。関電が誠実に応じていたら、こんな経営状態になっていなかった。株を10%持っている株主(大阪市)の意見に、まったく耳を傾けない関電の経営陣のせいだ」と批判した。

 「電気料金の値上げが理由で、今年も株主総会出席を決めたのか」と問われると、「関電はやることが後手後手で、まったく経営能力がない。火力発電所の入札は150万キロワットしかやっていない。東電は600万キロワット。株主総会では、将来をどう予想しているのか、そこを一番、聞いてみたい」と答えた。

近現代史を学ぶ施設、国がやらないなら大阪市で

 橋下市長が意欲を示す、近現代史をテーマにした大阪市立の教育施設構想に関して質問があった。先行企画の「東京裁判の展示」については、議会の承認が得られず、補正予算案から削除されている。今後の文科省への働きかけのスケジュールを訊かれた橋下市長は、「事務方に任せている。必要があれば、自分が陳情に行く」と答え、「(東京裁判の先行展示が議会で否決されたのは)行政的に難しかった。施設の基本構想は進めるが、東京裁判の模擬法廷までは予算がなかった」とした。

 その上で、「もう一度、東京裁判を考えるような企画は、国はビビってやらない。それなら自治体が、やれるところまでやらなきゃいけない。いろんな見解を示しながら、東京裁判やサンフランシスコ講和条約を考えてもらう。教科書だけではわかりづらいので、学べる施設が必要だ」と持論を展開した。

米輸送艦による邦人輸送は「集団的自衛権の適用範囲」

 IWJの柏原記者が「市長は、集団的自衛権について限定容認を掲げているが、安倍総理が示した『米輸送艦による邦人輸送』について、適用範囲だと考えているのか」と質問。橋下市長は「適用範囲だと思ってます」と答えた。

 柏原記者は「米国は『防護の要請どころか、米輸送艦による日本人の避難は想定していない』としている。政府は11日の国会で、それを認めたが」と、重ねて尋ねた。

 橋下市長は「それは朝日新聞が言ったやつでしょ。 産経新聞は違うと言ってますよね。米国の方針は、誰が言ったの?」と確認し、柏原記者が「11日の衆議院外務委員会で、加藤勝信官房副長官が認めた」と言うと、橋下市長は「この件については錯綜している。わからない」とした。

政府の具体的事例は「思いつき」

 政府の出した事例について、橋下市長は「限定容認かどうか、概念を議論しても意味はない」とし、「新しい自衛権を認めるのかどうかは、解釈によって結論が分かれる。重要なことは、典型的な事例に分け、体系的に整理し直すことだ。『国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合』の『おそれ』を入れるか入れないかの議論は意味がない」とし、次のように語った。

 「司法研修所で散々やってきたが、概念を定立しても、実際の法律を作る時に、再び『おそれ』があるのかどうかで議論になる。日本の自衛権の不備を指摘する政府の具体的事例は、体系性において、私は疑問を持っている。思いつきの事例のように感じる」。

 橋下市長は「あのような具体的事例を挙げるより、いくつかの典型例に分類して、これは新しい自衛権として認めるべき、という方向性を決めて、細かな話はあとですればいい。(今の段階では)日本の自衛権の、どこに国際情勢上の不備があるのかという部分が、国民に伝わっていない」と述べた。

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