東大教授の安冨歩氏と元衆議院議員平智之氏による「モーレツ!政治経済教室」が、6月12日(木)に行なわれ、ミュージシャンの片岡祐介氏と平塚市議会議員の江口友子氏がゲストに招かれた。
現代にも活かされるべきドラッカー、論語の思想 ~Wトンチ博士のモーレツ!政治経済教室8 2014.6.12
(IWJ・松井信篤)
記事目次
- ドラッカーと石橋湛山
- フィードフォワードの問題点
- 寛容の論理で厳しい倫理
- コミュニケーションは受け手の行為
- 表裏一体の長所と短所
- マネジメントとは全体主義との戦いから生まれた
■ハイライト
- テーマ 「ドラッカーと論語」
- 場所 平智之事務所(東京都渋谷区)
ドラッカーと石橋湛山
この日は、20日に発売される安冨氏の新刊『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社、2014.6)をテーマに話が展開された。
安冨氏は、経営学者ピーター・ドラッカーがソ連崩壊を予見していたことや、元内閣総理大臣の石橋湛山が論文で提唱した、植民地放棄論に自身が感銘を受けたことを振り返り、「予見能力のある学者にならないと、科学的とは言えないのではないか」と考えたエピソードを紹介。
ドラッカーは、何かの事態に対応する際、事前に計算が可能で、それに対してプランニングしていくという(フィードフォワード)は不可能だと言っている。他方、何か行動を起こして、その結果を受けて自分を作り変えていく(フィードバックと学習)が有効であると提唱しており、「未来は分からない」と言っていることだけが、未来を指し示すと伝えているという。
フィードフォワードの問題点
これに関して平氏は、フィードフォワードな思考が、初めの段階で、自身の想念に合った考えに近づけていく性質を持つことから、その危険性を次のように指摘した。
「核燃料サイクルを作るんだとか、集団的自衛権にもとづいて、日本も普通の国になるのだと決めてしまうと、国民世論、世界各国の反応を、自分の目的に(都合の)いいように解釈して、その方向をさらに進める」
他方、経営の仕組みについて、安冨氏は「トラブルこそ最大の資源」という。現場でトラブルが起きた場合、経営陣は問題の構造全体を理解し、現場に対して調整していく必要が出てくるため、それがチャンスにもなり得る情報源であると指摘。しかし、現状はトラブルの隠蔽や、トラブル対処のフリをした、現場へのフィードバックがなされないと安冨氏、平氏の両氏は述べた。
寛容の論理で厳しい倫理
続いてドラッカーと論語の共通点に話しがおよんだ。ヨーロッパの学問やキリスト教的考えは、最期の審判に向かって前に向かっている倫理だとされるのに対し、論語は、後ろに向かって自分を振り返り続ける倫理であることから、体系が違うと安冨氏は説明する。
論語の有名な言葉「過ちを改めざるこれを過ちという」は、フィードバックと学習のシステムを作動させていないことが過ちであり、ひとつひとつの行為の善悪は問題ではない、寛容な論理だという。行為を振り返り、自分自身をいつも作り変えよという非常に厳しい倫理を、ドラッカーのフィードバックと学習、そして論語は持ち合わせているのだ。
コミュニケーションは受け手の行為
ドラッカーは、「72年の段階においては、もはや欠乏しているのは情報ではなく、コミュニケーションである」と述べており、コミュニケーションは発する側ではなく、受け手のみがする行為だと言っている。「どのように受け取るか」は、受け手が決めることだからだ。
今日では、コミュニケーション能力というと、発信する側の能力ととらえられがちだが、安冨氏は、ドラッカーが言うように、コミュニケーションは受け手がフィードバックをして、それをどう変化させていくかがコミュニケーションの規模だと説明。
そして、論語では全員がフィードバックする必要はなく、自身で反省して作り変えることができるのは君子であり、他の者はそれに従うようにと伝えている。大事なのは、そのように生きられる人を見出して指導者にする以外に、人間社会の秩序を形成するのが論語の考えであるという。
表裏一体の長所と短所
(…会員ページにつづく)
毎回内容が充実しているので、サマリーにするのは大変だったと思います。ご苦労様です。
私は番組視聴中はフィードフォワードというのを聞き取れなかったので、サマリーで初めてこのようは方法を知りました。
フィードバックは教育現場や職場で習いますし、日常的に用いて有効なのを知っていますが、
フィードフォワードはどのようにスキルを身につけて用いるのか疑問に感じました。
扱い方を間違えると、やりたい放題のバーチャル空間に突入していしまいそう。
(日本の某政権みたいですが。)
サマリーにはありませんが、江口さんが時間の捉え方について質問をされたあたりも興味深く参考になります。
予言はできない。
可能なのは、学習とフィードバックだけ。
『ドラッカーと論語』安冨歩