北九州市がPCB追加受け入れ容認 「どうなる?破綻した国策の後始末」~原田和明氏が講演 2014.5.24

記事公開日:2014.5.24取材地: テキスト動画
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(IWJ中継市民 こうの みなと)

 2014年5月24日(土)10時から、福岡県北九州市小倉北区の小倉生涯学習総合センターにて、元化学会社社員で、現在、大学職員を務める原田和明氏が「北九州市がPCB追加受け入れ容認 どうなる?破綻した国策の後始末」と題し、約1時間半にわたって講演をおこなった。

 PCB処理の根本的な問題点については、こちらの記事をご参照頂きたい。

※動画はございません。ご了承ください。

  • 講演 原田和明氏(大学職員)
  • 日時 2014年5月24日(土)10:00~
  • 場所 生涯学習総合センター(福岡県北九州市)

あっさりとPCB処理延長受け入れを決めた北九州市

 PCB(ポリ塩化ビフェニール)の無害化処理をめぐり、JESCO北九州事業所での追加処理を環境省から要請されていた北九州市の北橋健治市長は、4月23日、上京して石原伸晃環境相と会談し、あっさりとPCB受け入れを決めた。

 環境省は、全国の処理施設で、2015年度までにPCBを全量処理する計画であったが計画は破綻。これを受けて、2013年10月に、北九州市の処理場で当初の処理予定量約1万トンに加え、約6000トンの追加処理を要請していた。

 北九州市が環境省へ提示していた受入条件は、1.処理の安全性確保 2.期間内での確実な処理、3.地域の理解、4.取組みの確実性の担保 であり、現在のJESCO北九州事業所の老朽化対策や、再度の追加処理を要請しない確約なども国に要求している。この受け入れ表明により、処理期間は2014年度末から9年間延び、2023年度末までとなる見通しとなった。

地元住民を納得させる方法=有料道路無料化

 北橋健治市長は、石原環境大臣と会見した翌日の4月24日の定例記者会見で、JESCOのある北九州市若松区と都心部を結ぶ若戸大橋と若戸トンネルの通行料を無料化する時期について、PCB処理財源を活用して当初の「2027年以降」から前倒しする方針を明らかにした。無料化する具体的な時期の明言を避けており、これまでの経緯からして実際に無料化されるかは非常に怪しいところであるが、PCB処理に伴う地元民の反発を抑える意図があることは明白である。

 また、北九州市と同じくPCBの追加受け入れを表面した北海道の室蘭市は、北九州市よりもより具体的に、「環境科学分野などをテーマにした新たな体験学習施設の整備。」「新エネルギー(水素)事業への積極支援。」などの見返りを環境省に求めている。

 こうしたことからも、原子力政策と同じく、PCB処理が利権誘導型の公共事業であり、不健全な税金の流れを生み出しているのではないか、との指摘が相次いでいる。

JESCO北九州:約96億円 民間業者:約4億円 24倍も高コストなJESCOでの処理方法

 日本が国際的な公約としているストックホルム条約での最終的なPCB処理期限は、2028年である。

 しかし、現在行われている非効率かつ高コストな「化学分解方式」と「プラズマ溶融方式」に固執する限り、「これらの期限を守れるかどうかも非常に怪しい」と原田氏は指摘する。

 現在、PCB処理を行う方法は大まかに分けて3つある。

(1)化学分解方式
…PCB濃度0.5%以上でPCBの液体そのものしか処理できない。全国5ヶ所(北九州・大阪・豊田・東京・室蘭)のJESCO事業所で実施。

(2)プラズマ溶融方式
…PCB濃度0.5%以上でPCBを含んだトランス等の固形物を処理。 全国2ヶ所(北九州・室蘭)のJESCO事業所で実施。

(3)焼却方式
…PCB濃度0.5%以下でPCBの液体・固形物を処理。一般的には、ロータリーキルン式の焼却炉で高温処理される。全国の民間業者で行い、処理は、(1)(2)に比べ大幅に低コスト&短期間で可能。欧米では、PCB濃度0.5%以上で焼却方式を採用している。

 2013年、沖縄県の旧米軍基地で発生したPCB汚泥322トン(ドラム缶1794本)の処理を巡り、防衛省は入札をおこない、福島県いわき市のクレハ環境に焼却方式で処理させることを決めた。落札金額は合わせて3億9500万円だった。

 しかし、このPCB汚泥は、当初、JESCO北九州事業所で処理される予定であり、高コストのプラズマ溶融で行うと約96億円がかかる計算だった。つまり、防衛省はPCB濃度0.5%以下と判断し、民間業者への入札に変更したことで、90億円以上の予算を節約したことになる。

 欧米では、PCB濃度0.5%以上で焼却方式を採用しており、PCB処理は既に完了しつつある。原田氏は、「北橋市長の言う安全確保は、JESCOに今後もどんどん税金投入するということ」と指摘する。

 原田氏は、「もし、この先、日本が2028年までのストックホルム条約の期限を守れないとなった場合、現在のPCB濃度0.5%以上という、法律にもなっていないガイドラインをこっそり改定して、どんどん焼却方式で処理できるようにしていかざるを得ないのではないか?」と指摘した。

 ならば、なぜ初めから焼却方式に方針転換しないのだろうか? 疑問の声はあがる一方だ。

■原田氏のパワーポイント資料

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