2014年6月14日に世界を変えた未完の大作をドキュメンタリーで追った『ホドロフスキーのDUNE』、7月12日に23年ぶりに監督した新作『リアリティのダンス』が連続公開となる、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が25年ぶりに来日。4月26日(土)、世田谷区にある龍雲寺で100人のファンと座禅会を行った。
(取材・文:松井信篤、記事構成:佐々木隼也)
2014年6月14日に世界を変えた未完の大作をドキュメンタリーで追った『ホドロフスキーのDUNE』、7月12日に23年ぶりに監督した新作『リアリティのダンス』が連続公開となる、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が25年ぶりに来日。4月26日(土)、世田谷区にある龍雲寺で100人のファンと座禅会を行った。
■ハイライト
「座禅は何かを得るためにするのではなく、何かを捨てる為にするものである」。
会の冒頭、龍雲寺の住職が座禅について説明した。住職は、座禅は足し算ではなく引き算であり、「人生という文章の中での句読点である」と語った。会ではその後、ホドロフスキー氏が説法を行い、最後に参加者100人とともに座禅を組んだ。
映画監督の他にも、タロットの占い師、バンドデシネ(仏語圏のマンガ)の原作者、舞台の演出家、サイコ・マジシャンなど多彩な顔を持つホドロフスキー氏は、メキシコで「禅」に出会い「瞑想」を学んだ。メキシコで出会った日本人の師は、ホドロフスキー氏に対し、「一羽の鳥が鳴き、黙って鳥の歌声を聴いた。そして、鳥が鳴くのを止めると『これが私の説法だ』と言い、その場を立ち去った」と、日本で禅を学んでいた時のエピソードを語ってくれたという。
ホドロフスキー氏は、「その小鳥は何も言えません。自然に歌っただけです。ですから私も歌います。今、私は歌っています。今、私が歌えるように歌っています。そしてみなさんはどのように歌うのでしょうか?」と会の参加者らに優しい口調で問いかけ、さらに説法を続けた。
「言葉の黒い雲が風によって流れて行き、その後の静寂の中で皆さんは歌うのです。言葉の中には知性というものが入っています。私の思考の中に言葉が浮かばない時は私の思考は歌っていると言えます。私の心が否定的な感情が無いときには私の心は歌っています。私に女性的な力への(性的な)欲望が無いときには歌っています。全く不必要な動きが無い時には私の肉体は歌っています。私は思考であり、心であり、性であり、肉体であり、カルマです。魂も歌います。自由な時に、名前が無い時に、年齢が無い時に、国籍が無い時に、定義が無い時に、 これが私の魂が語る小鳥の歌です」。
ホドロフスキー氏はさらに、性的欲求と創造性について、話を続けた。
「全ては常に変化しており、私の心は何かに属したいと思っています。現実と共に繋がりたいと心は思っています。私の性的活力はもっと創造したいと思っています。つまり創るというのは与えるということです。私の肉体はもっと生きたいと思っています。小鳥の歌う歌の美しさ・楽しさは皆さんが良い気持ちになることです。そして、歌う小鳥が木にいるとここに樹がある事が分かります。もし、そこに樹がなければどこにも樹はない。
皆さんがここに居る時、皆さんの完璧な全体がここに存在するのです。他でもないここに今、皆さんはいるのです。ここに限界のない感性と思考があります。そして、誰も批判しない心があります。創造的な性があります。無駄な事をしない肉体があります。私達の中で最も無駄な事というのは期待、恐怖。今、持っていないものが欲しいという時に今、持っているものを失いたくないと恐怖します」
ホドロフスキー氏の説法は、終盤になるにつれ、いよいよテーマである「金と欲望」について核心に迫っていった。
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