【第139号】岩上安身のIWJ特報!オバマ大統領の来日に向けて、ネオコン・シンクタンクが狙う日米の軍事同盟強化路線 ~ヘリテージ財団、CSISでの講演の翻訳を公開 2014.4.23

記事公開日:2014.4.22 テキスト独自
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(岩上安身)

★有料メルマガ「岩上安身のIWJ特報!」最新号を発行しました(4月23日)。尖閣問題、歴史問題、TPP、エネルギー問題、シリア・ウクライナ問題。。。ジャパンハンドラーたちの手の内はいかに?

 米国のオバマ大統領の来日が、4月23日夜から25日の2泊3日という日程で確定となった。「国賓」として迎えられる大統領は、安倍総理との首脳会談や、天皇皇后両陛下との会見などに出席する予定である。

 IWJでは、オバマ来日の目的を探るべく、米民主党に近いシンクタンクとして知られるブルッキングス研究所で3月6日に行われた、トーマス・ドニロン前大統領補佐官の講演内容をご紹介した。

 一方、米国保守派のシンクタンクは、今回のオバマ来日をどのように考えているのだろうか。ドニロン氏の講演の2週間後、ほぼ時期を同じくして、二大ネオコン・シンクタンクである、ヘリテージ財団とCSIS(戦略国際問題研究所)で、それぞれ講演が開催された。

 3月19日のヘリテージ財団の講演には、「安倍総理への指令書」とも言われている『第3次アーミテージレポート』の作成に関わったランドール・シュライバー氏、そして「日本のナショナリズムの高揚が、米国の政策目標を達成する絶好の機会」と論じた『クリングナー論文』の著者であるブルース・クリングナー氏が登壇した。

 そして、3月21日のCSISの講演では、上記アーミテージレポートの共著者である、リチャード・アーミテージ氏とジョセフ・ナイ氏が登場。北朝鮮や中国の軍事的脅威に備え、日米同盟をさらに強化すべきという、従来からの主張を繰り返した。

 ヘリテージ財団とCSISという二大保守派シンクタンクが、現在の日本の対米政策にいかに大きな影響を与えているかは、あらためて言うまでもないだろう。

 ヘリテージ財団では、石原慎太郎氏が東京都知事だった2012年4月16日、「東京都が尖閣諸島を買います」と発言し、現在の尖閣問題の「火付け役」となった講演を行った。クリングナー氏の言う、「米国のために日本のナショナリズムを煽る」道化役を、石原氏が見事に演じた場所だ。

 そして、CSISは、昨年2月22日、オバマ大統領との会談を終えた安倍総理が講演を行い、「Japan is back(日本は戻ってきました)」「I am back(私は戻ってきました)」と宣言したシンクタンクである。総理は、会場最前列にいたアーミテージ氏に対して、「アーミテージさん、ありがとうございます」と謝辞を述べ、「日本は一流国になりたいのか、二流国でかまわないのか」というアーミテージ派の無遠慮な問いに対し、「日本は二流国にはなりません」と子供のような約束をし、対米従属の姿勢をさらけ出した。

 オバマ大統領に先んじて、4月5日・6日にはヘーゲル米国防長官が来日。日中間の尖閣問題を巡り「日米安保条約に基づく防衛義務を果たす」ことを確約し、北朝鮮の脅威に対してイージス艦2隻を横須賀に配備することで合意した。ネオコン・シンクタンクが主張する「日米間の軍事同盟強化」への地ならしは、着々と進んでいる。

・ロイター 2014年4月6日 「米国防長官、尖閣めぐり中国けん制 日本にイージス艦2隻追加配備」
http://bit.ly/1eWtYzW

 以下、両講演における各氏の発言の要約を翻訳し、ご紹介する。講演の模様は、各シンクタンクのホームページに公開されている。

・ヘリテージ財団: http://herit.ag/1hxDKVa
・CSIS: http://bit.ly/1eTQ0D0

 ネオコン・シンクタンクの政策に対しては、これらに反対する識者の意見も海外メディアに出てきている。今後、これらの反論も紹介しながら、引き続きオバマ政権の対日政策についての情報を提供する予定である。


Preview of the President’s Asia Trip

Wednesday, Mar 19, 2014
http://herit.ag/1hxDKVa

ヘリテージ財団 「大統領のアジア訪問のプレビュー」

2014年3月19日(水)

講演者

ランドール・シュライバー(元ブッシュ政権国務次官補)

ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団上級研究員)

司会

ウォルターローマン(ヘリテージ財団・アジア研究センター長)

記事目次

ウクライナ政変と日米同盟のありようのリンケージ ~ランドール・シュライバー氏:3月19日ヘリテージ財団講演より

シュライバー氏「オバマ大統領の日本訪問は、絶好のチャンス(Window of Opportunity)です。日本は政権が安定しており、安倍政権2.0は非常にうまくやっていて、支持率も高い。アジアリバランス戦略においては、日本がその戦略基盤となります。ウクライナやシリア問題があるなかでも、アジアに注意を向けていることを示す機会になります。中国や北朝鮮の脅威によって、日米同盟の役割がますます重要になっており、これらの機会を実行に移すことにエネルギーを注ぐべきです。

 TPPや日米協議の進展は難航しており、にらみ合いが続いていますが、まずは米国が動かなければいけません。TPA(貿易促進権限)がなければ、日本にタフな要求をすることは難しくなります。米国の信用問題にかかわることで、大統領のリーダーシップが問われる問題です。日米の二国がうまく行かなければ、交渉全体はがれきのように崩れてしまうでしょう。

 軍と軍の関係も課題です。日米共同の自衛ガイドラインをどう作るか。オバマは歳出自動削減条項(セクエストレーション)の問題を含めて、どのように日米で防衛協力していくか、強い確信を示す必要があります。オバマが日本の集団的自衛権に関して、憲法解釈の変更を支持するとのお墨を与えれば、官僚たちがしっかり仕事できます。憲法9条も議論されている今が、タイムリーです。

 日米同盟は軍事だけでなく、エネルギー問題でもパートナーシップとなり得ます。日本は原発事故後、エネルギー問題に悩まされていますが、米国が問題解決の大きな一助となることができます。TPPが進めば、LNGの輸出などもしやすくなるでしょう。ウクライナ問題で、ロシアから(日本へ)の供給が不安定になれば、なおさら重要です」

 ウクライナの内政問題に、米国は自分の庭であるかのように首を突っ込んでいる。米国は、ウクライナで2014年2月に樹立した新政権を支持し、3月にはさっそくヤツェニュク首相とオバマ大統領の会談を行っている。そして、クリミア自治共和国とセヴァストーポリ特別市がロシアへの編入を訴える声を上げ始めると、米国はロシアに対する経済制裁を行った。さらに、ウクライナ東部で親ロシア派勢力が市庁舎などの占拠を行うと、米国はその背後にロシアがいると決めつけ、ロシアへの制裁をさらに強めることを検討し始めた。ウクライナ問題が、米国対ロシアの対決として浮かび上がってきたのである。

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  1. 日中関係はハンドラーの手に余る より:

    オバマ大統領が来日し、正式な外交対話が一応なりたつと、権謀術策で日本だけを何とかしようとして中国とのバランスを欠くジャパンハンドラーは言葉の妖術がうまく使えないようです。安倍さんほか旧ブッシュ政権の幻影にたよるねじれきった権力依存症者たちは、どこまでいっても、宇宙までいっても変更不可能です。

日中関係はハンドラーの手に余る にコメントする コメントをキャンセル

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