1960年3月21日、南アフリカのアパルトヘイトに反対した市民69人が、武装した警官に虐殺されるという事件が起きた。これを機に、人種差別に反対する国際世論が高まり、66年、国連は3月21日を「国際人種差別撤廃デー」と定めた。
それ以来、この日は世界各地で人種差別撤廃に関する運動が行われている。事件から55年目を迎えた3月21日、東京・渋谷周辺では「国際人権差別撤廃デー2014“NO HATE, SHARE THE LOVE!”」と題するデモ行進が行われた。差別反対のアピールデモ行進を主催したのは、毎週月曜日に東京都庁で午後7時から差別反対アピールを行っている「差別反対東京アクション」だ。
デモルートは渋谷の宮下公園を出発し、表参道や明治神宮前、青山通りにある国連大学前などを歩いた。主催者発表によると、約250人がデモに参加し、「差別をなくそう」、「あらゆる差別を撤廃しよう」、「一緒に生きよう」、「NO HATE SHARE THE LOVE!」とシュプレヒコールをあげた。
渋谷のシダックス・カルチャーホールでは、シンポジウム「ヘイトスピーチにNO!」大集会が開かれ、日本におけるヘイトスピーチに対抗する今後の社会運動について、ジャーナリストや政治学者が活発な議論を交わした。
- ゲスト 北丸雄二(ジャーナリスト)、五野井郁夫(国際政治学者)、安田浩一(ジャーナリスト)ほか
「ヘイトスピーチをどう潰していくか」
16日のヘイトデモの数時間前、主催の在特会は豊島公会堂で集会を開いたが、それを事前に聞きつけた市民らが、「ヘイトスピーチを行ってきた団体に、公共施設の利用を許していいのか」という抗議の声をあげ、開催を阻止しようという動きがあった。
この日、パネリストとして登壇した石川大我豊島区議も、区議会の場で同様の問題を追及。当日、公会堂は貸し出されたものの、「今後は、危険がおよぶような場合は、利用を制限する」という答弁を区から引き出したのである。
家庭内暴力に慣れきってしまった国民
パネリストの一人として参加した国際政治学者の五野井郁夫氏は、日本維新の会の石原慎太郎共同代表を「差別のデパートのような人」と揶揄。「欧米では、政治生命が絶たれるほどの差別発言を繰り返してきた人間を、日本社会は何度も政治家に再選させている。『家庭内暴力』に慣れきってしまっている」と指摘した。
五野井氏は、学者やジャーナリストが差別の問題に向き合ってこなかったことも大きな原因だと話し、人種差別や排外主義をなくしていくためには、そうした問題を見過ごさず、個々がはっきりとNOを突きつける必要があると改めて訴えた。
「日本にもカウンターが出てきたことは心強かった」
ニューヨーク在住のジャーナリスト・北丸雄二氏は、3月16日に池袋で行なわれたヘイトデモの現場を訪れ、大規模なカウンター抗議の風景を目の当たりにしたことと関連して、自身が知るエピソードを語った。