BBCの背中一段と遠く ~揺れるNHK、元経営委員・小林緑氏らが「独立性」軽視を非難 2014.3.15

記事公開日:2014.3.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年3月15日、神戸市中央区のあすてっぷKOBEで開かれた「第31回メディアを考える市民のつどい 緊急集会!NHKの危機、どうする~NHKを安倍政権の広報機関にさせるのか!」。元NHK経営委員の小林緑氏(国立音楽大学名誉教授)、メディア研究者の門奈直樹氏(立教大学名誉教授)、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表でもある醍醐聰氏(東京大学名誉教授)がマイクを握り、籾井勝人会長や経営委員の発言で揺れるNHKについて、激論を交わした。

 イギリス放送協会(BBC)に詳しい門奈氏は、「籾井氏の発言が話題を集める前にも、NHKに関する問題点はいろいろと指摘されていた」とし、「悩むのは、NHKの内部から『われわれはどうすべきか』といった声が、まったく聞こえてこないこと」と強調。その上で、次のように語った。

 「1980年代のサッチャー政権時代、故サッチャー氏は、頻繁にBBCの放送内容に干渉した。BBCは、それへの抗議ということで、たとえば、24時間の放送停止などに踏み切っている。BBCは、そういったことを通じて、ステークホルダー(利害関係者)である視聴者に対し、自分たちが今、どういう問題に直面しているかを伝えたのだ」。

記事目次

■全編動画
・1/2(12:57~ 2時間42分)

3分~ 開会/26分~ 小林氏/1時間5分~ 門奈氏/1時間49分~ 醍醐氏

・2/2(15:40~ 58分間)

1分~ 醍醐氏/7分~ 質疑応答
  • 登壇者 小林緑氏(元NHK経営委員、国立音楽大学名誉教授)/門奈直樹氏(立教大学名誉教授)/醍醐聰氏(東京大学名誉教授)
  • 日時 2014年3月15日(土)13:00~
  • 場所 あすてっぷKOBE(神戸市中央区)
  • 主催 NHK問題を考える会(兵庫)

 最初に登壇した小林氏は、2001年から2007年にかけて、NHKの経営委員を務めている(通算2期)。経営委員に選ばれたことに関しては、「周囲の推薦があったためではない」とし、次のように説明した。

 「私の就任は、平岩弓枝氏(作家)が、委員を1期だけ務めて辞めたのを受けてのもの。多分、総務省の担当者が、50代の女性で文化系の職業に従事しているという条件で検索したら、私の名前が出てきたのだろう。女性のクラシック作曲家の作品を紹介するという、希少な仕事に従事していたため、全国紙にも取り上げられており、その記事がデータベース化されていたと思われる」。

 そして、小林氏は、自身が委員を退任してから、すでに7年近くが経っていることを強調。「現任の委員たちが、今回の籾井氏の発言などについて口を閉ざすのは仕方がないとしても、元委員たちは、なぜ、こんなにも沈黙しているのか」と懸念を表明し、「今、NHKは発足以来、最大の危機に見舞われている。こういう時こそ、元委員が集結して、NHK再生に向けた建設的な議論を展開すべきではないのか」と訴えた。

経営委員会は「ETV事件」を取り上げたのか

 小林氏は、2001年に経営委員として、世に言う「ETV事件(NHK番組改変問題)」に遭遇している。これは、日本軍の慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー番組が、当時の内閣官房副長官、安倍晋三氏の圧力で内容が改変されていたとされる問題で、あらましは以下のようなものだ。

 NHKは、ETV2001「戦争をどう裁くか(2)戦時性暴力」という番組の中で、女性国際戦犯法廷(日本の慰安婦問題を追及するための、模擬法廷型抗議行動)を取り上げたが、実際に放送された内容が、取材時の説明とは違っていたことから、この模擬法廷を主催する「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)が、NHKと制作会社などを訴えた。最高裁まで争った結果、2008年にVAWW-NETジャパンの敗訴が確定している──。

 小林氏は「経営委員会で議論されるテーマは、事務局によって決められていた」と説明し、当時の委員会には、同事件に触れるのを避ける雰囲気が漂っていた、と明かした。

 このままでは、委員会の中で事件が風化してしまうと案じた小林氏は、最後の最後に手を上げ、「(NHK側が200万円の賠償金支払いを命じられた2審を不服とし)上告したことを、なぜ、経営委員会で報告しないのか」とNHKの執行部に迫ったという。「しかし、返ってきた言葉は『進行中の事案なので話せない』という、そっけないものだった」。

 ETV事件について、NHKは「政治の圧力に屈したわけではない」とのコメントを発表している。これに違和感を覚えた小林氏は、経営委員会の席で、「そこまで自信があるのなら、『元のフィルムを上映してほしい』という、VAWW-NETジャパンからの要求に応じてはどうか」とも提案しているが、これもまた、「著作権がらみの問題で上映はできない」とのひと言で退けられたという。

恐縮するほど高額なNHK経営委員の報酬

 小林氏からは、当時の経営委員の「好待遇」に関する言及もあった。「月に2回、1回2時間の委員会への出席以外にも、事前に送られてくる、かなりの量の資料に目を通す仕事があったが、それを考慮しても報酬は高すぎて、世間に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。最近の経営委員会のことはよくわからないが、あの時のNHKには、『こういった人たちを集めて、こういった経営委員会を開いている』という、アリバイづくりをやっているふしがあった」。

 小林氏は「経営委員会で議論されるテーマには、経営委員が練り上げる部分があっていい」と力説する。「毎回、事務局が用意した議題を消化するだけで終わってしまっていた。各経営委員が、NHKに感じている疑問点などを出し合えるだけの余裕がほしかった」と振り返った。

 委員時代の小林氏は、自身の判断でメディアの取材を何度か受けており、そこでは経営委員会がらみの発言もしているという。小林氏は「NHKから注意を受けたこともあり、2期目は、経営委員を務めていて、つらい部分もあった」とし、委員でありながら、VAWW-NETジャパンの集会に顔を出していたことにも触れた。「1人の女性として、慰安婦問題を勉強したいという思いが強かった」。

長谷川三千子氏と対決「あなたは経営委員失格」

 最後に小林氏は、この1月22日に参議院の議員会館で行われた反戦集会で、安倍晋三首相がNHK経営委員に起用した長谷川三千子氏と「対決」したことを報告した。

 集会の参加者であった長谷川氏が、マイクを半ば強引に握って、「私は安倍首相の応援団であり、NHK経営委員の長谷川だ」と名乗り、安倍首相を擁護するスピーチを始めたというのである。それを聞いていた小林氏は、「このまま黙っているわけにはいかない」と挙手し、「私も、かつてはNHK経営委員だった。NHKを監視する立場の経営委員が、時の総理の応援団であるとは、いかがなものか。あなたは経営委員失格だ」と告げたとのこと。それに対し、長谷川氏はうまく言い訳をして、その後も滔々とスピーチを続けたという。

BBCは政府から独立している

 続いて登壇した門奈氏は、NHKとBBCを比較して議論を行った。

 「BBCの放送免許は、女王から交付される。したがって、形式的には国営放送だが、NHK同様、受信料収入で放送活動が支えられているため『公共放送』の位置づけになる。ただし、BBCは受信料の支払いが『義務化』されている点でNHKとは異なる。受信料支払者は、BBCのステークホルダー(利害関係者)になる」。

 門奈氏は、日本人よりも英国人の方が「民度」が高く、それが「自分たちのBBC」という価値観につながっている、との見解を披露した。

 英国政府は、2006年に出した放送白書の中で、「BBCは、政府から独立した放送局でなければならない」と明記しているという。門奈氏は「むろん、『政府からの独立』という考え方は、BBCの中には昔からある」と付け足し、自身が英国に留学していた折のエピソードを紹介した。

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