2014年3月5日(水)18時20分ごろより、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。
設置が予定されている「放射線審議会」に関連し、放射性物質に関わる基準について、田中委員長は、「例えば、避難の基準はあるが、帰還の基準は国際的には明確ではない、ということや、食品の摂取基準も非常に疑問に思っている」と述べ、「日本は欧州の10分の1。なんで日本だけ10分の1にしなければいけないのか」と、現在の日本の基準値に対して疑問を呈した。
その上で、国際放射線防護委員会(ALARA)の議論も含め、基準は厳しくしたが、別の被害も出ているとし、「それらも含めてバランス良くしていくということだ」と、放射線審議会で基準の緩和も検討していく考えをにじませた。
- 日時 2014年3月5日(水) 18:20〜
- 場所 原子力規制庁(東京都港区)
田中委員長「深刻な状況は脱した」
東京電力福島第一原発の事故から3年が経とうとしている。これまでの廃炉作業について、田中俊一規制委員長は記者からの質問に対し、「非常に深刻な事故が起こらないとは言えないけど、そういう状況は脱したと思う」と所感を述べた。
福島第一原発に対しては、「いまだ日々予測できないトラブルが起きているが、どういうところがリスクが大きいかは、ある程度予測している」とし、報道に対しては、「汚染水だけに関心が行きがちだが、他にももっと問題があることを理解していただきたい」と注文つける場面もみられた。
廃炉作業の課題点として、田中委員長は、高濃度汚染水が最大の問題であり、4号機の燃料取出し作業は順調に進んでいるが、装置が壊れた建物の上にあることが問題だと発言。その次の段階としては、溶けた燃料をどうするかが問題だが、「今のところ見通しは全然ない」と述べた。
加えて、原発労働者の作業環境が悪すぎる問題や、中長期的に廃棄物をいかにきちんと処理して管理するか等、まだまだ多くの課題があるとの考えを示した。
石棺するという専門家の意見もあるが
福島第一原発を石棺化し、時間が経ってから処置するという専門家の意見もある。これについて田中委員長は、核燃料の半減期が短いものであれば良いアイデアだと思うと述べた。
ウラン、プルトニウムなどは、半減期が非常に長いので、時間を稼いでどうにかできるものではない。田中委員長は「100年待っても状況は変わらない」との考えを示し、「これは科学の問題。いろいろおっしゃる人には勉強してほしいと思う」と語った。
再稼働判断は「地元住民の判断が大きなステークホルダー」
全国43自治体が、2013年度内に防災計画を作成できないと応えていることについて、コメントを求められた田中委員長は、今後の再稼働までにきちんと作っておかないと、住民の方も安心できないと思うと述べ、規制委は、「できるだけいい避難計画を作るためのデータを提供していきたい」との方針を示した。
再稼働については、「いつも言っているが、再稼働の判断は我々ではない」と述べ、「住民の方の判断が大きなステークホルダーになるが、その方が安心できない状況では難しいでしょうね」と語った。
さらに、「それでも納得がいかないということであれば、それは地方の問題だから、そこは、再稼働とかのところで議論されたらいいと思う。こちらには関係のないところだ」と、規制委側が再稼働の判断には関与しないことを強調した。
食品の放射線量基準値「非常に疑問」
3月5日午前の原子力規制委員会の議題に挙がっていた放射線審議会について、田中委員長は、「基準がばらばらだ、放射線審議会に期待したい」と発言。記者団から詳しい説明を求められると、「低線量被曝の問題は、国際的に統一されているわけではないが、ある程度、相場観というのがある。それらを加味して検討したい」と応じた。
放射性物質に関わる基準について、田中委員長は、「例えば、避難の基準はあるが、帰還の基準は国際的には明確ではない、ということや、食品の摂取基準も非常に疑問に思っている」と述べ、「日本は欧州の10分の1。なんで日本だけ10分の1にしなければいけないのか」と、現在の日本の基準値に対して疑問を呈した。その上で、国際放射線防護委員会(ALARA)の議論も含め、基準は厳しくしたが、別の被害も出ているとし、「それらも含めてバランス良くしていくということだ」と、放射線審議会で基準の緩和も検討していく考えをにじませた。
さらに、「日本は東京電力福島第一原発の事故を経て、いろんな経験を現実にした。今の緊急時の被曝の問題も、日本がこれだけ苦労しているわけだから、それを踏まえて国際的にリードするような発信力をもつべきだ」と締めくくった。