【東京都知事選】多くの問題を含む築地市場の移転計画 宇都宮氏は見直しを明言 2014.1.25

記事公開日:2014.1.26取材地: テキスト動画
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(IWJ・ゆさこうこ)

 東京都は、東京築地の中央卸売市場「築地市場」を豊洲新市場に移転する計画を進めている。築地市場の豊洲への移転にはどのような問題があるのか。1月25日に開催された「築地移転問題は、卸売市場を殺す」と題された対話集会で、市場移転の問題点について討議が行われた。

 この問題は、単に市場の場所が変わるということだけではなく、私たちの「食」、ひいては生活そのものに大きく影響する問題である。東京都知事選挙に立候補している宇都宮健児氏は、知事に就任したら築地の移転は見直すと明言した。

■ハイライト

  • 基調講演 中澤誠氏(東京卸売市場労働組合書記長)
  • パネルディスカッション 中澤誠氏 / 安田美絵氏(『サルでもわかるTPP』著者)/ 宇都宮健児氏(東京都知事候補、元日弁連会長)
  • 企画 築地移転問題を考える会実行委員会

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豊洲新市場の問題点

 豊洲の新市場予定地は、東京ガスの工場の跡地であり、毒性のベンゼンやシアンによる土壌汚染が深刻であると言われる。ベンゼンは処理基準の4万3000倍、シアンは処理基準の930倍であることが確認されている。また、地下水も汚染されているという。

 東京中央市場労働組合書記長の中澤誠氏は、豊洲新市場の耐震にも疑問を持つ。震度5弱までしか耐震しないと言われており、それ以上の地震が起こった場合、液状化する可能性がある。一方で、築地市場は2011年3月11日の地震の時はびくともしなかったと中澤氏は述べる。

 宇都宮氏は移転を見直すべきだとし、「誰かが政治的決断をしなければいけない。都民にとっても大きな財政負担になる」と述べた。そのうえで、「築地の活性化のために商店街を活性化するべき」と語り、知事になったら「現場に足を運んで意見を取り入れ、政策に反映したい」とした。

卸売市場の規制緩和

 築地市場の移転問題は、汚染や耐震等の問題を抱えているだけではなく、卸売市場という制度そのものを壊してしまう契機になりうる。

 農林水産省は1999年と2004年に卸売市場法を改正し、大胆な規制緩和を行った。農林水産省は、流通コストの削減、多様なビジネスチャンスの拡大、仲卸業者数の削減、休業日の営業の実現などを基本方針として掲げている。つまり、卸売市場のあり方を変えていこうという方針である。

 中澤氏は「これ以上卸売市場制度が壊されれば、地方は疲弊し商店街は空洞化する。食糧自給率を上げる政策が必要」と指摘する。さらに、「卸売市場は、『施設』ではなく、人間。適切な規制の中で、人が知恵を絞っていくというのが一番いい」と述べた。

TPPは卸売市場制度を壊す

 さらに、TPPへの参加によって、卸売市場制度が撤廃されることも考えられる。『サルでもわかるTPP: 入るな危険!「強欲企業やりたい放題協定」』の著者である安田美絵氏は、「食糧を他国に握られてしまうということは、生殺与奪権を握られてしまうということ。相手の言うなりになるしかなくなってしまう」と言う。

 さらに、「TPPで市場の活性化が進むということが言われているが、生産者が安く買いたたかれ、人件費の安い途上国でしか生産が行われなくなる。日本で生産が行われなくなるということは、職業選択の自由すらなくなっていくこと」とTPPの危険性を指摘した。

 宇都宮氏は、韓国とアメリカの二国間貿易協定(米韓FTA)を例にあげて説明し、遺伝子組換え食品の表示が撤廃される等、韓国では80近くの法律や規制が変更され、「アメリカの制度にあわせて韓国が作り替えられた」という現状を指摘した。日本でもTPPへの参加によって、遺伝子組換えの表示、食品添加物や残留農薬の規制といった食品の安全を守るための制度が撤廃される可能性が高いという。

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