【特別寄稿】「我々は屈しない~安倍政権の戦争政策をやめさせ、東京オリンピックを真の平和の祭典にしよう」(海渡雄一 弁護士・「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、脱原発弁護団全国連絡会共同代表) 2014.1.23

記事公開日:2014.1.23 テキスト
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(海渡雄一)

 昨年末、12月22日に開催した「饗宴Ⅳ 前夜~取り返しのつかない軍事属国化と経済植民地化に抗うために」のシンポジウムにご登壇いただいたパネリストの方々に、短い時間内で話し切れなかった情報や思いを、「IWJウィークリー」に寄稿していただくことにしました。お引き受けいただいた方から順に掲載させていただきます。

 第1回は、「テーマ1~秘密と改憲」にご登壇いただいた、海渡雄一氏の登場です。

はじめに

 IWJの皆さんには、昨年、私が発言した原発や秘密保護法関係の多くの集会を取材して、生中継していただき、さらには、とりわけ年末の宇都宮健児さんとの、2013年振り返り特番まで組んでいただき、本当にありがとうございました。

 昨年の日本で起きた一連のできごとは、第二次世界大戦前夜に日本やドイツで起きたこととかなり似てきていると感じています。

 街路を歩く人々は、いつもどおりで、クリスマスやお正月の初もうでも変わらないように見えますが、社会全体を戦争に駆り立てるような雰囲気が漂ってきています。

われわれをテロリスト呼ばわりした石破幹事長

 私たちが、市民の知る権利を侵害する秘密保護法案の廃案を求めるため国会前での行動を続けていた昨年12月はじめに、石破自民党幹事長が発言したのを覚えておられることでしょう。彼は、「絶対反対を叫んでいる声はテロリスト同然だ」というふうに言いましたね。まさしく本音が出たという感じがしましたけれども、秘密保護法が何を狙っているのかが、多くの人々に一気に明らかになった瞬間でした。

 この法律がまさしく、戦争に反対したり、秘密保護法に反対したり、原発の再稼働に反対したりしている人々を「テロリストだ」と規定して、監視と取り締まりの対象にしようとしている。そういう法律なのだという事がわかった瞬間でした。治安維持法の下で、共産党だけでなく、宗教者や自由主義者、ジャーナリストも口を封じられていった歴史が繰り返される危惧を感じます。

 ここで、私たちは決して怯んではならないと思います。当時、私は国会前の集会でマイクを取って「我々はテロリストではない」と叫びました。われわれはもっともっと大きな声で叫ぶ必要があると思います。そのため、私たちは、秘密保護法廃止の署名を呼びかけ、1月24日に予定されている通常国会初日には、秘密保護法廃止を訴える国会包囲の行動を呼びかけています。

安倍政権とは何者なのか

 12月の中旬に私は郡山市で、福島県の前知事である佐藤栄佐久さんに対するインタビューをしました。このインタビューは、1月の18,19日に新宿区民ギャラリーで開催予定の「反原発へのいやがらせ展Part2」に合わせて、刊行予定の「反原発へのいやがらせ全記録」という本のために行ったものでした。

 佐藤さんは、原子力をテロから守るためという理屈で、監視社会化がすすみ、「原子力帝国」が生まれる危険性があることを危惧しており、日本ではファシズムのような「自由から逃走」は起きないと信じてきたが、安倍政権の下で、強い危惧を持っていると話されました。

 佐藤さんは、もともと自民党の参議院議員として、宮澤首相や伊東正義氏らとも親交のあった方です。そして、スパイ防止法に反対する自民党議員有志にも名前を連ねておられました。

 以前の自民党には、党内に大きな考え方の違う政治集団があり、バランスを取ってきました。今日本を支配している安倍政権は、これまでのような幅の広さをもった自民党政権ではありません。明らかに暴走を始めています。ブレーキが壊れているのです。

 民主主義を信条にしているような良識ある保守政治家が日本を治めているわけではない、そのことを我々は十分認識し、政治信条の違いを乗り越えて、広範な人々と手を結ばなくてはなりません。

2014年都知事選挙の持つ意味

 まさしく、そういう状況の中で突然都知事選挙が行われることになりました。

 私は、秘密保護法の成立した日の深夜から、「秘密保護法の廃止法案を成立させよう」と言ってきました。皆さんから、「どうやったらこの秘密保護法を廃止にできるんですか?」と聞かれました。

 「法案を出すことまではできるだろう」「しかしそれを通すことは、国会の構成を変える以外にない。しかしそれにはあと3年間待たなければいけないじゃないか」「その間にはもう選挙がないんでしょ。どうするんですか」と、かなりの人に問い詰められていました。

 確かに国政選挙はしばらくないでしょう。だから「3年間は、この屈辱を忘れないようにしよう」というのが、僕のこれまでの答えでした。忘れないようにするためにこの法律に賛成した人と反対した人のリストをずっと持ち歩いて、クリアファイルかなんかに閉じてですね、よれよれにならないように、そして、「自民党のその議員は賛成した人ですよ」「この人は反対してくれた人ですよ」ということを会う人ごとに説いて回るしかないんじゃないかという事を言っていました。

 ところが、猪瀬さんが5000万円を選挙の告示直前に受け取っていたことが発覚し、降って湧いたように都知事選挙が始まることになりました。国政選挙並みに重大な選挙で、投票できる機会が市民に与えられたのです。

 もうこの機会を逃して「秘密保護法廃止」が国民の大きな世論になっているという事を安倍政権に突き付けることはできないんじゃないかと確信します。

 都知事選挙は都政の課題についての判断と並んで、このような安倍政権の暴走に歯止めがかけられるかどうかを争点とする選挙となっているのです。

国家安全保障基本法案は戦争体制を確立するための法案だ

 今年の前半は、秘密保護法の施行に向けた政府の準備が進みます。政府がつくろうとしている「第三者機関」が、官僚と御用学者ばかりでつくられ、独立性がないことについては、『世界』2月号の「もう隷従しないと決意せよ」で詳しく分析しました。

 次の大きな課題は、国家安全保障基本法案です。日本版NSC設置法と秘密保護法と国家安全保障基本法案は、まとめて戦争準備三法だといえます。

 2012年10月31日,当時自民党総裁であった安倍晋三氏は,臨時国会の代表質問で,「集団的自衛権の行使を可能とすることによって,日米同盟はより対等となり強化され」ると,憲法解釈の見直しを求めました。

 内閣総理大臣に就任した安倍氏は,2013年1月13日のNHKテレビ番組で,「集団的自衛権行使の(憲法解釈)見直しは安倍政権の大きな方針の一つ」と述べています。

 国家安全保障基本法案は,安全保障体制の見直しを目指す全12 条の法案の仮称であり,2012 年7 月6日の自民党総務会でその概要が決定されています。当初の計画では議員立法として提案するとされていました。

 この法律の最大の特徴は、日本国憲法9条が、戦争と武力の行使を放棄し、戦力を保持せず、交戦権を認めないとしたことを、全く無視していることです。この法案の基本方針には次のように書かれています。

第2条 (安全保障の目的、基本方針)
  安全保障の目的は、外部からの軍事的または非軍事的手段による直接または間接の侵害その他のあらゆる脅威に対し、防衛、外交、経済その他の諸施策を総合して、これを未然に防止しまたは排除することにより、自由と民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守り、国益を確保することにある。
2  前項の目的を達成するため、次に掲げる事項を基本方針とする。
一 国際協調を図り、国際連合憲章の目的の達成のため、我が国として積極的に寄与すること。
二 政府は、内政を安定させ、安全保障基盤の確立に努めること。
三 政府は、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備するとともに、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めること。
四 国際連合憲章に定められた自衛権の行使については、必要最小限度とすること。

 これを日本国憲法第9条と読み比べてみましょう。

第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 自民党の説明によれば、別途、武力攻撃事態法と対になるような「集団自衛事態法」(仮称)、及び自衛隊法における「集団自衛出動」(仮称)的任務規定、武器使用権限に関する規定が必要とされるとされています。秘密保護法も法体系に組み入れられ、3条3項は次のように定めています。

 国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる。

 秘密保護法廃止をやりにくくする法案だとも言えるでしょう。

 長年の自民党政権のもとでも、憲法が行使を禁じているとされてきた集団的自衛権の行使を定める10条は、明らかに違憲です。自衛権の行使は,①急迫不正の侵害,②他に手段がない,③必要最小限という3要件を充たした必要最小限度の実力のみが許容されるとするのが政府解釈でした。

 集団的自衛権は,①の要件を充たさない点で憲法9条に関する内閣法制局が繰り返し明らかにしてきた政府解釈に反する明らかな違憲立法です。法律による改憲クーデターであるといってもよいでしょう。自民党の進める憲法改正草案を立法によって先取りしようとしているのです。

 政府が閣法として出すのか、自民党が議員立法として出すのかは、現時点で確定していません。これまでの政府の憲法解釈では、違憲立法として、閣法として提案できないはずです。自民党はこれまで、議員立法として提案することで、内閣法制局の審査をスルーしようとしていました。

 しかし、安倍晋三首相は内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使を充てました。

 小松氏は条約畑の外務官僚で、2006年の第一次安倍内閣当時の外務省国際法局長です。集団的自衛権行使容認を打ち出した当時の政府有識者懇談会に事務方として関わった人です。法制局未経験者で外務省出身者が法制局長官となるのは前例がありません。内閣法制局を力でねじ伏せて、閣法として出させるかもしれません。

 しかし、内閣法制局の中にも、これまでの解釈を守ろうとする方々がいるはずです。私たちが、大きな声を上げることによって、内閣法制局の中の良心を呼び起こし、閣議決定を食い止めることができるかもしれません。そのときに、政権を取っていながら、内閣法制局の審査をスルーするために議員立法として提案するというような、姑息なやり方が許されるでしょうか。

 今年の通常国会では、憲法の安楽死を狙うような究極の悪法が提案されようとしているのです。

 戦争準備三法(案)の狙いをまとめておきましょう。日本版NSCは戦争ができる国の中枢を担う現代版大本営を作る法律です。秘密保護法は市民の知る権利を否定し、政府のウソを秘密にし、反戦運動にテロリズムのレッテルを貼って排除し、戦争を始めやすくするための法律です。そして国家安全保障基本法(案)は、法律の形式で、憲法9条を抹殺し、戦争放棄の日本を否定して、政府が戦争を遂行するための手続と体制を作る法案です。

戦争準備刑事三法案(秘密保護法・共謀罪・盗聴法拡大)に警戒を!

 以上が戦争準備三法案でしたが、秘密保護法を軸としてもうひとつの戦争準備刑事三法(案)が国会提案を待ちかまえています。

 内部告発者とジャーナリストを共謀段階から厳罰に処す秘密保護法が成立しました。これに続いて、秘密保護法の成立直後に朝日新聞が、政府が共謀罪の提案を計画していると報じました。

 共謀罪は、合意だけで、何の被害も発生していなくても処罰される共謀罪を一挙に600も作るものです。そして、共謀罪捜査の道具とするため、第三者の立会を省略して、一挙に適用範囲が拡大されかねない盗聴法の大幅拡大も計画されています。えん罪防止のための可視化を進めるはずだった法制審議会の「新時代の刑事司法特別部会」で、捜査当局から盗聴法の拡大と室内盗聴制度の創設が提案され、官僚優位の審議会の中で、導入強行の報告が決められようとしています。

 ここでは、共謀罪について報告しておきましょう。

 話し合い=合意だけで犯罪を成立させるのが、共謀罪です。共謀罪とは犯罪以前の早い段階、つまり、今までなら犯罪にならなかったことを犯罪にする刑事立法です。「共謀罪」とは、犯罪のはるか以前に、関係者の単なる「合意」だけで処罰ができるようにする法律なのです。

 殺人や強盗でも、予備的な準備行為があって初めて犯罪とされますが、共謀罪が導入されれば、犯罪行為を実際に行うことも、その準備行為も必要でなく、ただ「合意」があれば犯罪となってしまうことになります。

 このような立法が、国連越境組織犯罪防止条約を批准するための国内法整備を理由に制定されようとしているのです。

 過去に2003年から2005年にかけて、国会に提案され続けていた政府原案の概要は次のとおりです。

①長期4年以上の刑を定める犯罪について
(合計で600以上)
②団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの
(組織犯罪集団の関与までは求められていない)
③遂行を共謀(合意)した者は
④原則として懲役2年以下に処され
⑤死刑・無期・長期10年以上の処罰が科せられた犯罪の共謀については懲役5年以下に処され
⑥犯罪の実行の着手より前に自首したときは、刑を減免される。

これまで、2003年の通常国会から、4国会にわたって継続審議となり、その後廃案となっています。組織犯罪防止条約の批准案は、2003年に国会で承認されたが、政府は条約をまだ批准していない。

 共謀罪では、処罰するために犯罪の結果が発生することはおろか、凶器を買うなどの準備行為に取りかかることすら必要ありません。単なる「合意」というのは、「心の中で思ったこと」と紙一重の段階です。

 近代刑法は、心の中で思った犯罪の意図だけでは処罰せず、それが具体的な結果・損害として現れてはじめて処罰対象になるとしてきました。客観主義刑法と言われてきました。「既遂」処罰が原則で、「未遂」は例外、それ以前の「予備」は極めて例外、しかも、いずれも「行為」があって初めて犯罪が成立するのが刑法原則でした。

 共謀罪は、この「予備」よりもはるか以前の「合意」だけで、「行為」がなくても処罰するというものです。このように処罰時期を早めることは、犯罪とされる行為(構成要件)の明確性を失わせ、単に疑わしいとか悪い考えを抱いているというだけで人が処罰されるような事態を招きかねません。

 「共謀罪」の犯罪捜査においては、犯罪の結果からさかのぼって犯人を特定するのではなく、日常的な会話やメールの内容そのものが犯罪とされることになります。そのため、捜査機関は市民の日常的な会話やメールを監視する捜査が必要となります。

 我々の日常的な会話について、通信傍受(いわゆる盗聴)や会話傍受がなされるおそれがあります。法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」では、通信傍受の対象犯罪の拡大、立会いや封印等の手続の合理化が検討され、会話傍受の導入も検討されていることは前に述べました。

 共謀罪を成立させなければならないような国内事情(立法事実)がないことは、法務省も法制審議会ではっきりと認めています。

 2000年末に国連総会で採択された国連越境組織犯罪防止条約の国内法化のため、というのが、法務省のそもそもの説明でした。この条約は、マフィアなどの国境を越える組織犯罪集団の犯罪を効果的に防止することを目的に起草されました。

 2001年の9.11のテロ事件を契機に、この条約をテロ対策のためにも利用しようという動きがあり、当時の政権下においても、そのような説明がなされたことがあります。

 日弁連は、2006年9月14日及び2012年4月13日付けの各意見書において、共謀罪の創設に反対しています。

 国連越境組織犯罪防止条約第34条第1項に、「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な立法上及び行政上の措置をとる。」と規定されています。

 国連が各国の国内法起草者向けに作成した立法ガイドからすれば、我が国が、本条約第5条第1項(a)(i)を選択し、組織犯罪に関連する重大犯罪について、合意により成立する犯罪が未遂以前に犯罪が可罰的とされていれば、新たな立法がなくても本条約を批准することは可能であると考えられます。

 日本においては、①現行法上、重大犯罪については予備罪、共謀罪等が規定されていること、②我が国は、判例上、共謀共同正犯理論が認められ、予備罪と併せて未遂以前の行為を処罰できること、③テロ行為に対する処罰規定が存在していること、④銃の所持に対する処罰規定や窃盗用器具の運搬を処罰する規定などが存在することから、組織犯罪に関連する重大犯罪については、合意により成立する犯罪が未遂以前に可罰的とされていると考えられます。

 条約を批准するために、新たな立法は必要なく、条約を批准してから、各国の動向を見ながら判断することで十分だと考えられます。

 共謀罪が作られてしまうと、政府にとって都合が悪いと考えられる市民の活動に対して、警察が介入し、市民同士の連帯が分断されるおそれがあります。特に、市民団体や労働組合の活動に対して、警察が介入してくることが強く懸念されます。秘密保護法の共謀罪は極めて危険です。共謀罪は、公安警察を主力とする警察権力が市民生活の隅々にまで入り込むような監視社会をもたらすものです。

 多くの市民が反対の声をあげなければ、共謀罪法案が国会に提出されると、すぐに成立してしまうかもしれません。それを防ぐために、共謀罪の危険性を友人や知人に伝え、共謀罪の創設に対して、多くの市民が反対の声をあげていく必要があります。

奴らを通すな! 安倍戦争政策推進内閣の暴走をとめよう

 安倍政権は、原発再稼働、そして秘密保護法を成立させて、そして次は安全保障基本法案・共謀罪法案を通そうとしています。

 沖縄の願いを踏みにじって辺野古の海を埋め立て、中国・韓国の人々を挑発し、戦争の危機を高める靖国参拝を財界やアメリカの反対を押し切って強行しているのです。本当に危険な政権です。

 こんな人が首相で東京で平和の祭典オリンピックが成功できるはずがありません。宇都宮さんは、都知事選の政策で、安倍政権の暴走を止めるだけでなく、ソウルと北京と三都の平和と環境保護のためのネットワークをつくることを提唱しています。ソウル市長のパク・ウォンスン氏は、政治にかかわる市民組織である「参与連帯」で活動してきた人権弁護士で、宇都宮さんと経歴も似ています。オリンピック開催都市東京からの平和のメッセージは、戦争の危機を和らげ、日中韓の話し合いの機運をつくることに貢献するはずです。

 いまの日本の政治の最大の危機はなにかといえば、これを止める人がもう自民党の中にも、与党公明党にもいないということです。

 昔の自民党だったら、これを止める人がちゃんと自民党の中にいて、「こういうやり方はやめた方がいい」という意見をもっと公然と言ったはずです。しかしもう彼等は黙り込まされていて、声はきこえません。

 ここで、問題は次のように立てる必要があるでしょう。まさしく今の安倍政権の暴走をストップできるかどうかは、本気でこの暴走を止めようという人を支えて闘える選挙にすることができるかどうかにかかっていると。

 舛添さんは自民党を除名されていますけれども、秘密保護法案について、国会審議中にこれに反対する、何か積極的な意見を表明したでしょうか? 私は聞いたことがありません。

 彼は、12月の国会が終わったあとのラジオ番組で「私なら、秘密保護法の必要性をもっとうまく説明できる質問ができた」「大韓航空機事件の場合のように、秘密法が安全保障を害する場合もある」「核廃棄物は使用料を支払ってシベリアなど海外に埋めるべきだ」「もんじゅの研究は続けるべきだ」などの発言をしています。すくなくとも、明確な秘密保護法案反対の立場も、脱原発の立場も明確にしていません。彼が当選しても、安倍政権に対する何のブレーキにもなりません。

 民主党の内部に舛添氏で相乗りしようという動きがあるという報道があります。しかし、海江田代表は猪瀬さんの辞任後、「秘密保護法に反対した人」を都知事候補の重要な条件に掲げました。

 民主党は、秘密保護帽廃止法案を次の国会に提出することも約束しています。党としてもんじゅには反対し、脱原発の実現を決めたはずです。市民に約束したことを誠実に実行するならば、舛添候補に相乗りするような選択はあり得ないことだと思います。

戦争は政府のウソを秘密にするところから始まる

 秘密保護法の一番の恐ろしい点はなにか?

 なにが秘密にされるか分からない。ちゃんと秘密が指定されていることを確認する手続きがない。まともな第3者機関もない。そして何よりも「こういう事は秘密にしてはいけない」という事がこの法律の中には書いていないんですね。

 IWJの年末の「饗宴Ⅳ」で、私の敬愛する梓澤(あずさわ)和幸弁護士と会う機会があった折、「海渡さん、この本読んだ方がいいよ」と、ペンタゴンペーパーズの内容をニューヨークタイムズがまとめた『ベトナム秘密報告 米国防総省の汚い戦争の告白録』(1972 サイマル出版会)という本を奨められました。この本の原書は、実は1971年に出ている本ですから随分古い本ですが、これをよく読んでみると改めて分かった事があります。

 アメリカ軍がベトナムに本格的に介入するきっかけになった1964年8月の、北ベトナム海軍によるトンキン湾の魚雷攻撃事件が起きているんですが、みなが「これは北ベトナムの攻撃だ」といまだに思っている人がいると思います。ところが事実はそうじゃないんです。

 1回目は確かに北ベトナムが誤って攻撃したことは認めている。しかし「2回目は違う」と言っている、2回目はまさしくこのペンタゴン・ペーパーズの中に「アメリカ側で仕組んで捏造した事件だった」と暴露されているのです。

 日本が戦前の満州事変や日華事変でやったのと同じような事をベトナム戦争の時にアメリカはやっていたわけです。

 アメリカがイラクを攻める時に「大量破壊兵器をつくっている」といいましたね。パウエルさんが国連で演説しているのを皆さんも見たのを覚えていると思いますけれども、あれもウソでしたね。あれが最初じゃないんです。ベトナム戦争の時も同じことをやっていた。

 1964年に起きたこの事実が社会に明らかになったのは、まさしくダニエル・エルズバーグ氏がペンタゴン・ペーパーを明らかにした1971年だった。それまで極秘にされていたわけですね。その秘密が明らかになり、ベトナム戦争が終わっていったという経過です。

政府の秘密のウソにだまされない国民になろう

 これから、何が起きようとしているのかを考えてみましょう。

 ここまで言っていいのかとも思いますけれど、あえて言ってしまいましょう。安倍さんが戦争をやろうと思っているとします。一応仮定の話として。そうすると何かきっかけをつくろうとしますね。そしてそのきっかけのために仕組んだ事を秘密にしようとするはずです。そしてその秘密を暴こうとする人間を刑務所にぶち込もうとするんでしょうね。その時に使う法律が、このまさに秘密保護法なんだということです。

 秘密保護法の反対運動をやる中で、だんだん構図がハッキリ見えてきました。戦争のためのプロパガンダが起きようとしているんだという警戒感を、私たちも持たなければなりません。騙される国民になっては絶対にいけないと思います。

 昨年の国際情勢で特筆すべきことは、シリアにおける化学兵器の使用をきっかけに、米英がシリアに軍事介入しようとしましたが、ロシアが反対し、イギリスの議会も否決する中で介入が食い止められました。

 まだ、事件の真相はわかりませんが、真相がわからないのに、戦争を始めようとした米英の計画をストップできたことは大きな一歩です。ウィキリークスやスノーデン氏の努力によって、世界の市民が騙されにくくなっているあらわれかもしれません。

「勝てる候補」探しではなく、勝たすのが私たちの役割

 私は都知事選挙に出馬を表明された宇都宮候補を応援しようと考えています。
私のまわりにも、「勝てる候補を立てるべきだ」と言われる方がいます。もちろん、知名度抜群で、人格識見に優れた方で、「原発再稼働阻止」だけでなく、「秘密保護法廃止」や「福祉切り捨て反対」など、都民にとって死活的に重要なそれぞれのテーマで、我々と同じように声を挙げてきて下さった方がいるのなら、そういう方を立てて一緒にやりましょう。

 しかし、そのような方はいるかもしれませんが、出馬の決断をしていただくことは至難の業でしょう。「勝てる候補を立てろ」と言っている方々と僕たちは一緒に闘いたいと思います。最後まで一本化の努力を続けるべきだと思っています。

 しかし、今ここに、そういう我々と共に声をあげて闘ってきて下さった、そして沢山の社会運動の経験があり、安倍政権と渡り合える胆力のある宇都宮先生が「一緒にやろう」というふうに言って下さっているわけです。

 ですから皆さんの周りで「宇都宮さんで勝てるのか!?」と言われたら、「勝たせるのが私たちの役割でしょう」という事を、やっぱり言って欲しいと思います。

 今日は1月2日です。まだ1月23日の告示ですから、しばらく時間があります。秘密保護法に反対した勢力、原発に反対してきた人たち、みんなが一緒になって闘える候補に、宇都宮先生を押し上げていくために、私は全力を挙げてがんばりたいと思います。

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