米国の独立系報道番組「デモクラシー・ナウ!」のメインキャスターであり、ジャーナリストのエイミー・グッドマン氏による記者会見が、1月20日、日本外国特派員協会で行われた。
「デモクラシー・ナウ!」は、広告や助成金に頼らず、視聴者からの寄付や民間財団からの支援のみで運営されている、「独立メディア」の最大手の一つ。一般市民や草の根運動の代表者、平和活動家、学者など、コーポレート・メディア(企業体が運営する大手メディア)にはめったに登場しない人物やニュースを取り上げている。
今回が初来日となるグッドマン氏は、東京だけでなく、福島、広島、京都にも足を運び、原発問題や特定秘密保護法などについて、勢力的に取材を行った。今回の記者会見では、来日取材の成果や、独立メディアの重要性について語った。
独立放送局の草分けである「パシフィカ・ラジオ」でキャリアをスタートしたグッドマン氏は、一貫して独立メディアに関わり、企業の代弁ではなく、市民やアーティストなどの声を紹介してきた。そして1996年、ニューヨークで「デモクラシー・ナウ!」をスタートさせた。
主流メディアの意見は「主流」ではない
グッドマン氏は、自らの経歴をふまえて、「メディアこそが、世界において平和をもたらす」と強く信じるようになったと、語った。主流派のメディアは、戦争を擁護する一握りの専門家の声を伝えているが、「視点が間違っている」とし、それぞれの地域の専門家や当事者の声を紹介するのが「デモクラシー・ナウ!」の狙いだと述べた。
米国のイラク戦争の報道では、侵攻前に主要メディアが行った400人へのインタビューのうち、反対を訴えたのはたった3人だったとのデータがある。グッドマン氏は「バランスのとれた報道がなされていない」として、メインストリーム(主流)メディアの意見は、実際にはまったく主流ではないことを指摘した。
日本でも、原子力に反対する声が主流であるにもかかわらず、主流メディアが積極的に取り上げないという事実がある。「メディアは、権威のある人のメガホン役になってはいけない」と語り、違う意見の人同士が対等に議論を交わす機会を提供するのがメディアの責任だと主張した。
将来を決めるのはメディアではなく「市民」
質疑応答では、「沖縄の基地問題」についての質問があがった。グッドマン氏は「今後の動きを予想することはできない。人々が自らの将来を決める」と述べ、問題を解決するのは、メディアではなく一般の市民であると回答した。
グッドマン氏は、「人の声が大きくなれば、それを取り上げないわけにはいかない。そのような声に力が与えられれば、主流メディアもそれを無視することはできないだろう」と語り、あらためて市民の声を取り上げるメディアの役割を強調した。
また、日本で成立した「特定秘密保護法」について、米国の「愛国者法」同様、ジャーナリストの視点からは非常に危機的だと主張。「何が法に触れているのかわからない」ため、内部告発者の保護や、市民社会の抗議が難しくなるという点で「類似性がある」とし、「民主主義では容認されない」と強く訴えた。