【IWJブログ】徳洲会問題を巡る動き~猪瀬知事辞任で終わるのか(「IWJウィークリー32号」より) 2014.12.21

記事公開日:2013.12.21 テキスト
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(ゆさこうこ)

★会員無料メルマガ「IWJウィークリー32号」より転載

 12月19日(木)、医療法人「徳洲会」からの5000万円受領問題と都政を停滞させた責任を取って辞職を表明した猪瀬直樹・東京都知事。この間、都議会総務委員会での答弁は二転三転し、その説明は矛盾だらけだった。ペラ紙1枚の「借用書」、ファスナーが閉まらなかったカバンの謎などは、連日各種メディアで大きく取り上げられた。

 「IWJウィークリー」32号では、この間の「猪瀬騒動」の顛末と、今後の「徳洲会問題」の展望についてまとめた。是非、ご一読いただきたい。

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◆◇【5】徳洲会問題を巡る動き~猪瀬知事辞任で終わるのか◇◆
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▲辞任会見を終え、肩を落として会場を後にする猪瀬知事

 日本には「視えない制度」がある――

 「空虚な中心がなにかを表徴していることはうすうす感じられる。しかし、モデルとして説明しにくい。視えにくいんです。ただ、いまは高層ビルが建っているから、なおさら虚というかんじがします」

 猪瀬直樹氏が主著『ミカドの肖像』(1986年)のなかで発した言葉だ。空虚な中心をもつ、視えない制度。たいへん示唆に富む表現である(仏哲学者ロラン・バルトの発想から拝借しているとはしても)。だが、今、日本でもっとも視えにくさを作り出しているのは猪瀬氏本人かもしれない。

 2013年12月、虚を作り込む高層ビルの最たるものとも言える都庁のなかで、猪瀬氏は日々言い訳に終始し、時折うつろな目で虚空を見つめていた。ノンフィクション作家から政治家に転身した猪瀬氏。彼の口から紡ぎ出されたストーリーはフィクションだったのか、ノンフィクションだったのか。

 12月19日、午前10時半から行われた記者会見で、猪瀬氏は辞意を表明した。都知事就任からちょうど1年。彼の最後の1ヶ月の業務は弁解だった。

 猪瀬氏が追いつめられることになった発端は、徳洲会からの5000万円授受の問題である。この大金の性格はいまだに判然としない。猪瀬氏の説明は結局、曖昧なままだ。追いつめられているのは猪瀬氏だけではない。徳洲会マネーを受けとった政治家たち、あるいは徳洲会に「応援」された政治家たちが次々とやり玉に挙げられている。違法性がないにしても、である。今これほど徳洲会が叩かれる理由はどこにあるのか。

記事目次

徳洲会を巡る一連の疑惑

 徳洲会とは、日本全国に66の病院、280の医療施設を持つ日本最大の医療グループだ。創設者は衆議院議員を務めた経験のある徳田虎雄氏。衆議院議員徳田毅氏は虎雄氏の息子である。

 虎雄氏は昨年12月の衆院選の選挙期間中、複数の候補者に対して支援を行っている。毅氏はもちろんのこと、山田正彦氏、阿部知子氏、薗浦健太郎氏に応援の職員を派遣していた。阿部知子氏には300万円を貸し付けていたことも分かっている。政治献金自体が「罪」である、というのではない。問題はそれが法にのっとり、適正に処理され報告されているかどうかである。

 この衆院選の際に徳洲会が毅氏の選挙運動に買収資金を提供していたという容疑で、2013年9月17日、徳洲会に対する東京地検特捜部の強制捜査が始まる。11月には毅氏の姉二人を含むグループ幹部6人が逮捕された。12月13日、毅氏の姉は、東京地裁で「徳田家は違法な選挙の中心にいた」と言い、買収を認めている。これにより、毅氏が失職する可能性が高くなった。

 そして、この毅氏から直接5000万円を手渡しされた人物がいる。それが猪瀬直樹東京都知事である。

転がり込んだ5000万円

 2012年11月、猪瀬氏は毅氏から5000万円を受けとる。返済期限なしで、利子もなく、5000万円を貸してもらえるという夢のような話はどうやって実現されたのか?

 以下では、猪瀬氏のこれまでの発言をもとに、経緯を再構成してみる。猪瀬氏の言い分があながち真実であるかどうかはわからない。

 2012年11月当時、猪瀬氏は翌日に都知事選を控えて、さまざまな団体にたいする挨拶行脚で忙しく駆けずり回っていた。「『ここに行こう』と言われればどこにでもいくかんじ」で、11月6日に猪瀬氏は有権者ではない人物に会いに鎌倉まで赴いた。会ったのは、徳洲会の徳田虎雄前理事長。どういう会話があったのかは「覚えていない」。抜群の記憶力を誇り、自著でもそれを誇らし気に書いている猪瀬氏が、多忙のなか往復三時間以上かけた面会について、その目的も成果も思い出せないのだ。

 にもかかわらず、2週間後には虎雄氏の次男である徳田毅衆院議員と会うことになる。14日、猪瀬氏は、政治団体「一水会」の木村三浩代表の仲介で毅氏と面会した。その席で猪瀬氏は「選挙後の生活の不安がある」と不安を漏らした。不安ではなく、不満と言った方がいいだろうか。では選挙に出馬しなければいいのではと思うのが普通だが、その場にいた人はそう思わなかったようだ。

「『そういうお金だったら貸してあげればいいんじゃないの』と木村氏が言った」。お金を貸してくれるという毅氏のことを、猪瀬氏は「親切な人だと思った」。このとき「1億円」という具体的な金額が出たが、猪瀬氏はこの「親切な」申し出を、「ひとごとのように聞いていた」。

 19日午前中、毅氏から、5000万円用意できたという電話。猪瀬氏は、「急な連絡だとは思った」が、議員会館に取りに行く。猪瀬氏は、「お断りするのも申し訳ないということで」「厚意として普通の感覚で受けとった」。そして「普通の感覚で」5000万円を鞄にぎゅっと詰め込んだ。約1年後にこの場面を都議会で再現することになるとは思わなかっただろう。

 このとき、毅氏が目の前に出した借用書にサインした。その後、「まっすぐ自宅に帰った」のではなくて、「事務所で秘書と打ち合わせた後、公用車で帰宅」した。

 「大金を目にしてびっくりし」、亡き妻名義の貸金庫にしまい込む。実際に入庫したのは猪瀬氏の妻だという。その大金は、2013年5月に別の貸金庫に移動。「早く返却するには、都庁への出勤前に現金を取り出しやすい自宅近くの貸金庫の方がよいと考えた」からだ。

 お金を受け取ったのは選挙中だったが、「選挙活動に使うつもりはなく、個人としての借入だった」。つまり、猪瀬氏としては、落選した場合の「保険」という認識だった。それなのに当選後もお金は返さず、2013年9月まで――つまり徳洲会に強制捜査が入るまで――返済することはなかった。この間、猪瀬氏は「返済がのびのびになって申し訳ない」と恐縮に思っていたという。

 借入は無利子・無担保だったというが、猪瀬氏はそれに「非公開」もつけ加えた。2013年5月に公開された猪瀬氏の資産には、この5000万円は記載されていないのだ。

 2013年9月、猪瀬氏はやっと、秘書から5000万円全額を返金させる。このとき公用車が使われたというが、この程度のことをとがめるのも、今となってはもはや些細な話に思われる。返却は、偶然にも、徳洲会が東京地検特捜部の強制捜査を受けた後である。

不思議な借用書

 5000万円の借用書について、疑惑が発生した当初、猪瀬氏は「ない」と言い張っていた。ところが後になってその発言を撤回し、11月26日、借用書のようなものを公開する。それがどのようなものかと言うと、ペラ紙1枚の極めてシンプルな手書きまじりの文書だ。

 子どもが書いたような借用書。もしこれを猪瀬氏の言っているとおりに「借用書」とみなすとするならば、文書としていくつかの問題点を指摘することができる。返済期限が書かれていないおかしな借用書であることは別としても、である。

 まず、猪瀬氏の名前が手書きで書き込まれているが、捺印されていない。はんこ文化の日本で捺印のない文書は極めてまれである。むしろ名前を印字し、その横に捺印がなされるというやり方の方が一般的だ。

 また、金額は手書きで書かれている。しかも「5000万円」の文字の前にはスペースが空いている。これでは、「5」の前に「9」と書き加えて「95000万円」にするなど、後でいくらでも金額を書き換えることができる。そういう自由な文書があるはずがない。手書きにするにしても、書き換えを防ぐために金額のアタマに「¥」マークを入れるのが普通だ。今回の借用書では日付を印字していたくらいなのだから、金額も印字にすればいいのだが。また、「五千萬円」でも「50,000,000円」でもなく「5000万円」と書いているのも不自然だ。

 さらには収入印紙がない。借用書は課税対象となる文書だ。金額に合わせて収入印紙を貼付し消印しなければならない。借用金額が5000万円だと2万円分の印紙が必要である。猪瀬氏も徳田氏も印紙税法があるということを知らないのだろうか。5000万円と比べると2万円の印紙はたいした金額ではないのだから、貼ってもらいたい。

 猪瀬氏は、「借用書はあるかどうか分からない」と言った4日後に「偶然見つかった」というこの「借用書」を、会見の席でひらひらとかざした。

▲報道陣に対し「借用書」をかざす猪瀬知事

▲報道陣に対し「借用書」をかざす猪瀬知事

金庫で5000万円が眠っている間にどんなことがあったか

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