「原発に反対する多くの声があれば、推進派の動きを食い止めることができる」と鎌田慧氏──。
2013年10月5日、泊原発に近い北海道岩内町のフェリー埠頭緑地で「STOP! 泊原発の再稼働・さようなら原発北海道集会 in いわない」が行われた。泊原発の再稼働に反対する人々のスピーチのほか、同じように再稼働の動きのある伊方原発や大飯原発の地元からの報告もあった。また、泊原発で事故があった場合の、放射性物質の飛散範囲を調べる「泊原発風船プロジェクト」も行われ、参加者はメッセージを付けた約1000個の風船を飛ばした。その後、泊原発の再稼働反対を訴えてデモ行進をした。
- 日時 2013年10月5日(土)
- 場所 岩内町フェリー埠頭緑地(北海道岩内町)
- 主催 「さようなら原発1000万人アクション北海道」実行委員会
電力会社の金儲けのためだけに推進される原発再稼働
まず始めに、北海道大学名誉教授の小野有五氏が「北海道上空の風は、常に西風である。もし、泊原発で事故が起きれば、北海道は完全に汚染されてしまうだろう。子どもたちのために、私たちの未来のために、泊原発を廃炉にしましょう」と述べた。続いて、北海道生活協同組合連合会の会長理事、麻田信二氏が「現在は、核のごみ処理の方法がない」と述べ、自然エネルギー推進による脱原発の可能性について話した。
ジャーナリストの鎌田慧氏は「原発の再稼働は電力会社の金儲けのためであり、人々の生活や子どもたちの未来がまったく考慮されていない」と問題点を指摘し、原発が1基も稼働していない現状を維持しながら、脱原発を実現していく方向性を示した。また、「原発を廃炉にするためには、多くの人の声が必要である」とし、「福島の犠牲を、犠牲だけで終わらせてはならない。原発に反対する多くの声が、原発を推進する自民党、財界を動かしていくことができる。最後までがんばりましょう」と訴えかけた。岩内原発問題研究会の斉藤武一氏は、原発は地域住民にとって経済的にもメリットをもたらさないことを、紙芝居を使って解説した。
「原子力で作られた電気は使いたくない」
北海道共和町で酪農業を営む大田学氏は「電気は必要だが、原子力で作られた危険な電気は使いたくない。世界は自然エネルギーに切り替わりつつある。外国にできて、日本ができないはずはない。まず、泊原発の再稼働を止めよう。そして、子どもたちが安心して暮らせる日本を」と語った。
夕張高校3年の杉村氏は「夕張では、福島の親子を招いてキャンプや川遊びをするプロジェクトを行っている。福島の子どもたちは、僕に『地面に座っていいの?』と聞いてくる。福島では外遊びができないのだという。こんな世界でいいのか」と話し、「泊原発は止めるべき。自分たちの息子や孫の代に、原発の責任をなすりつけていいのだろうか。長い問題になると思うが、協力してがんばりたい」と力を込めた。
原発立地県からの報告。巨大な発電システム依存からの脱却へ
続いて、泊原発と同様に再稼働の準備が進む、愛媛県の伊方原発(四国電力)と福井県の大飯原発( 関西電力)の地元からの報告に移った。原発さよなら四国ネットワークの井出久司氏は、「再稼働の一番手と目されている伊方原発は、瀬戸内海に面した原発で、日本最大の活断層、中央構造線の真上にある。津波対策も十分ではない」と問題点を指摘した。
原発問題住民運動福井県連絡会の林広員氏は「福井県には原発が15基も集中している。しかし、3.11以降、福井県民の間にも意識の変化が現れてきた」と述べ、脱原発を目指す動きが生まれていることを紹介した。そして、「原発立地県では、国策により原子力発電が押し付けられた。まず、原発からの撤退を決断し、産業と雇用については国が責任を持つべきだ。原発交付金として地域にばら撒かれていた資金を、再生可能エネルギーの普及に充てることによって、ひとつの巨大な発電システムに依存するのではなく、個人でも発電が可能な、自然エネルギー発電にシフトしていく必要があると思う」と語った。
その後、脚本家の倉本聰氏発案による「泊原発風船プロジェクト」が行われた。このプロジェクトは、泊原発で事故が起きた場合、目に見えない放射性物質が風に乗ってどこまで届くのかを可視化するもの。風船を拾った人に対して、連絡を求めるメッセージカードが付いている。参加者は「泊原発、再稼働反対!」のシュプレヒコールとともに、色とりどりの風船を空に放った。その後の報道によると、札幌市、赤平市、当別町、芦別市のほか、泊原発から180キロ離れた旭川市や東川町でも風船が見つかったという。