【第101~104号】岩上安身のIWJ特報!地球温暖化と原発ルネッサンス―間違いと誇張だらけの気候データ~横浜国立大学・伊藤公紀教授インタビュー 2013.9.24

記事公開日:2013.9.24 テキスト独自
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(岩上安身)

 「原発は、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギー」――。

 この言葉は、電力事業者や経済産業省など、原発を推進してきた人たちの常套句だった。この考え方の背景には、「メタンやCO2などの温室効果ガスによって地球全体の気温が年々上昇している」という、いまや小さな子どもでも知っている地球温暖化の問題がある。

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▲文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁が主催した「第16回 原子力ポスターコンクール」の受賞作品

 しかし、そもそも地球温暖化問題は、登場したときから原発を推進するためのロジックとして使われてきたことをご存知だろうか? 私が今年の1月にインタビューを行った九州国際大学の中野洋一教授は、IPCC(※1)の設立過程について、自身の論文で以下のように述べている。

 “サッチャー政権は「新自由主義」的経済政策の実行のためにイギリス国内において最大の敵対的関係にあった炭坑・製鉄産業の労働組合との厳しい政治闘争を展開しており、特に強力な炭坑労働組合の力を弱めるために地球温暖化問題を利用し、石炭火力発電を基礎とするエネルギー政策から原子力発電を推進する政策へと切り替える必要があった”

(中野洋一『「京都議定書」に関する一考察 ―「クライメートゲート事件」と地球温暖化論―』より)

 さらに私のインタビューの中で、中野教授は、先進国が石油危機によるOPEC(石油輸出国機構)との対立からエネルギー転換を迫られ、原発を推進していくことになる歴史を紹介し、その上で、「原発を推進し続けるために、地球温暖化論、京都議定書が出てくる」と説明した。

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▲岩上安身のインタビューに応える中野洋一氏

 日本には、強い政治的圧力もかかっている。昨年8月15日に発表された『第3次アーミテージレポート』では、「原子力発電所の再稼動なしでは、日本が2020年までにCO2排出量を25%削減する目標(※2)に向かって有意義な進歩を遂げることは不可能」であり、「原子力は、現在も将来も、排ガスのない基底負荷発電の唯一の実質的ソースとして残る」と断言している。日本に対して、CO2削減のためには、原子力政策を続けるしかない、と露骨に脅してきている。

 では、本当に温室効果ガスによる地球温暖化は起きているのか?

 実は、1990年から4回にわたって発表されているIPCCの評価報告書に対して、数多くの学者から疑問が投げかけられており、日々、学説は更新されている。

 こうしたあらゆる学説を細かく拾い上げ、「温室効果ガスによる地球温暖化」に疑問を投げかけているのが、本メルマガで紹介する横浜国立大学・環境情報研究院の伊藤公紀教授である。

 私は、今年の2月から3月にかけて、計3回、合計で約10時間にわたって伊藤教授に集中的にロングインタビューを行った。その中で伊藤教授は、私たちが大手メディアや新聞などから得たストレートニュースがいかに間違っているかを次々に明らかにした。

 例えば、2007年に、IPCCとともにノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元米副大統領。ゴア氏は、地球温暖化問題について様々な啓発活動を行ってきており、その講演の様子などをおさめたドキュメンタリー映画『不都合な真実』は、第79回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、テレビや新聞などでも大きく紹介された。

 伊藤教授は、その中で紹介されている「永久凍土の上に建つアパートの崩壊」「アフリカ・キリマンジャロの氷河の消滅」「米本土に上陸するハリケーン数の増加」などのエピソードが、実は温暖化とは何の関係もないことを指摘し、『不都合な真実』を、「科学的な質が大変低い」と批判した。

 そのほかにも、温暖化による海面上昇で消滅すると騒がれていたツバルについても、その原因が温暖化とは無関係であること、雑誌『サイエンス』に掲載された「流氷に乗るホッキョクグマの親子」の写真が合成であることなど、目から鱗のインタビュー内容となっている。

 どのようにして「温室効果ガスによる気温上昇」というウソがつくられてきたのか。伊藤教授へのインタビュー第1弾となる本メルマガをお読みいただき、じっくりと考えていただきたい。


(※1)IPCC(気候変動に関する政府間パネル):ユネップ(国連環境計画)とWMO(世界気象機関)が呼びかけ、約80カ国の政府関係者と科学者が参加し、1988年に設置された。90年にまとめられた最初の報告書は「人為起源の温室効果ガスがこのまま大気中に排出され続ければ、生態系や人類に重大な影響をおよぼす気候変化が生じるおそれがある」と警告し、社会的に大きく注目された(『IPCC関連情報 http://bit.ly/12X7DGI』より)。

(※2)2009年9月、当時の鳩山由紀夫総理が、ニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動サミットの場で、CO2を2020年までに90年比で25%削減すると発言した。しかし2013年1月、安倍総理が、目標を見直すように関係閣僚に指示した(2013年1月25日付『ブルームバーグ http://bit.ly/17OulUW』より)。

記事目次

  • 気候変動には 温室効果ガス以外にも多くの要因がある
  • 気候問題リテラシーを身につけないと騙される
  • 地球温暖化問題にまつわる大捏造事件
  • ホッケースティック曲線 ~20世紀の温暖化を示すデータの大きな間違い
  • 間違った解析の例 ~世界で最も影響の大きい樹木
  • 元データを取り違えたのにそれを認めない科学者と大学
  • クライメートゲート事件 ~温暖化をめぐる一大スキャンダル
  • 権威ある雑誌も商業目的 ~科学的な完成度よりも面白さが優先される
  • グレーシャーゲート事件 ~間違った情報のドミノ倒し
  • IPCCゲート ~データの誇張や捏造が次々と発覚
  • 気温はどうやって測っているのか? ~理想的な測定サイトとは
  • 誤差が生まれる原因 ~測定環境の悪化とサイト自体の劣化
  • 気温測定サイトのランクづけ 「最も良い」はたったの1.2%
  • 日本でのまともな観測所は3カ所だけ
  • 人が測定することの限界 ~測定サイトのそばをはしる暖房パイプ
  • 信頼できるデータ1 ~1000分の1の精度で温度を測る
  • 信頼できるデータ2 ~森林限界や海底コアの分析
  • 温暖化は加速していない ~衛星による気温測定が示す結論
  • 海表面温度の上昇は自然の営み ~2012年に発表された科学的データ
  • CO2が2倍になると 気温は何度上がるか? ~IPCCの過大な見積もり
  • IPCCの推定値は象徴にすぎない ~さまざまな科学者が見積もるバラバラの気温変化
  • 見積もりを狂わす「水蒸気」についての観測が始まったのはごく最近
  • 気候モデルの限界 ~パラメーター化の複雑さ
  • 永久凍土が融けて家屋が倒壊したのは、手抜き工事が原因
  • キリマンジャロの氷河がなくなったのも温暖化とは関係ない
  • 「温暖化でハリケーンが増加する」はウソ
  • 気候変動に影響を及ぼす人間活動 ~エアロゾル、スス、微生物
  • 現在の気候モデルはまだレベルが低い 必要なのは検証

気候変動には 温室効果ガス以外にも多くの要因がある

▲岩上安身と伊藤公紀氏。インタビューは講義形式で約3時間にわたり行われた

岩上安身「本日は、地球温暖化問題について、横浜国立大学大学院・環境情報研究院の伊藤公紀教授にお話をうかがいたいと思います。

 地球温暖化とは一体どういうことだったのか。騒がれ始めるようになってから、私も解せないなとは思っていたんですが、テーマが大きすぎてなかなか勉強する時間がありませんでした。

 『クライメートゲート事件(※3)』というのが起きたときに気になって、日本学術会議のシンポジウムを取材しました(※4)。ツイッターでそのことについて触れたんですが、温暖化に懐疑的な人と温暖化絶対支持者のような人との間で、激しい論争に巻き込まれ、炎上したことがありました。

 よほど勉強してかからなければいけないと思っているうちに3・11が起こってしまったのですが、今度は原発や放射能のことを勉強していくと、原発ルネッサンス(※5)という問題に当たり、その裏側に温暖化問題があると気づいてきました。

 遅まきながら勉強しましたら、どうしてみなさん太陽のことを言われないのかと思っていたんです。地球は閉鎖系でもあるまいし、太陽の影響を一番受けるだろう、人為的な活動がすべてという言い方は素人ながらおかしいのではないかと調べていましたら、伊藤先生のお書きになっているものやご発言に突き当たりました。これは是非ともお話をうかがわねばと、今日は講義を受けるつもりでまいりました」

伊藤「今日いただいたお題は多岐にわたっておりまして、全体を把握するためにテーマが多いのは事実なんです」

▲伊藤教授による講義の概要

伊藤「まず、IPCCの報告書の問題点です。地球温暖化問題の切っ掛けとなった過去の気温データ『ホッケースティック曲線(※6)』が怪しいということが外部からの批判でわかってきて、今は確実になっています」

岩上「ホッケースティックのように直角に曲がるカーブで、急激に気温が上昇したといわれる曲線図ですね?」

伊藤「そうです。20世紀に急に気温が上がったという話です。それが明らかな間違いだったということが証明されています。では、本当の気温変化はどのようなものか。

 気候の研究というのは日進月歩で、昨年出たデータが大変良いなどというような分野で、一筋縄ではいかないのですが、データ、誤差の入る原因、そして二酸化炭素(CO2)が2倍になったらどうなるか、という話をします。

 私の立場は、『気候変動は要因が多い』というものです。太陽もそうですし、よくわからない海・雲の自然変動があります。人為的な影響も当然あり、その中でCO2がわかりやすいのは事実ですが、『すす』や石炭・石油を燃やしたときに出る『硫酸エアロゾル』なども気候に影響しているということがわかっています。

 最後に、原子力というのは、調べてみるとどうしても地球温暖化の背景にあるんですね。では、再生可能エネルギーとしてバイオ燃料(※7)はどうか、などについて話させていただきます。原子力をなくしていくならば何があるか、ということで、一番の候補に上がっているのは天然ガスですが、これは当たり前なので、ここではあまり取り上げられない石炭についてお話しさせていただこうかと思います」

岩上「石炭は、有望かもしれないということですね?」

伊藤「日本の技術が、世界の石炭技術に大いに貢献できるということです」

岩上「この間、中国の汚染された大気がやって来たと大騒ぎになりました(※8)。あれも石炭が原因だと言われています。有毒な廃棄物が出ないような燃焼の仕方が、鍵を持つのでしょうか?」

伊藤「日本では、石炭火力(発電プラント)の煙突から何も出ていないように見えて、見学者が『ここは休んでいるのか』と言ったぐらいです」

(※3)クライメートゲート事件(気候研究ユニット・メール流出事件):2009年11月、温暖化研究の世界的拠点である英イースト・アングリア大学(UEA)の気象研究ユニット(CRU)のシステムに何者かが侵入し、1996~2009年の1000通以上の電子メール、3000以上の文書などを含むデータを盗み出し、ネット上に公開した事件。

わざと気温の低下を隠したかのようなメールのやりとりが暴露され、温暖化に懐疑的な人たちが、ここぞとばかりに批判し、IPCCへの信頼性も大きく揺らいだ。英米メディアはウォーターゲート事件をまねて「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んだ。(2012年8月2日付『朝日新聞』)

(参考)『温暖化データねつ造疑惑 衝撃強く、欧米で大騒ぎ』2009年12月9日、『J-CASTニュース』 http://news.livedoor.com/article/detail/4495428/

(※4)本メルマガの発行に合わせて、非会員向けにも当該記事ページを全面公開しています。是非ご覧ください。

(※5)原発ルネッサンス:エネルギー需要の増大やクリーンエネルギーへの関心の高まりなどを背景として、原子力発電を再評価しようとする潮流。

(※6)ホッケースティック曲線:過去1000年程度の地球の気温変化を推測したグラフに見られる特徴的な変化のこと。20世紀に入って急激に地球の気温が上昇する様を描いており、まるでホッケースティックを寝かせたときのように見えることから、このように呼ばれる。

1998年、アメリカの古気候学者であるマイケル・マンらによる研究によって明らかにされ、地球温暖化を示す有力な根拠の一つとされているが、多くの論争を巻き起こしてきた。(出典:2010年3月15日、『日経トレンディネット』)

(※7)バイオ燃料:生物体(バイオマス)の持つエネルギーを利用したアルコール燃料、その他合成ガスのこと。原料となる植物が光合成により二酸化炭素を吸収するため、燃焼させても二酸化炭素は増加しないとみなされる、いわゆる「カーボンニュートラル」の燃料。
(出典:『バイオ燃料の基礎知識』 http://www.stemiltmanagement.com/category/biofuels

(※8)中国の大都市では大気汚染が深刻な問題となっており、北京大学と環境保護団体グリーンピースの調査によると、PM2.5が原因で、2012年には、中国4都市でおよそ8600人が死亡したとされる。

PM2.5とは、直径が2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質のこと。工場のばい煙やディーゼル車の排気ガスなどに含まれ、呼吸器疾患や肺がんなどを引き起こすと言われている。2013年、中国で発生したPM2.5が風に乗って日本へと運ばれ、全国各地の測定所で基準値を超える数値が相次ぎ、大きな問題となった。

気候問題リテラシーを身につけないと騙される

伊藤「本題に入る前に、『論座』という朝日新聞が出版していた雑誌に『気候問題リテラシー』ということで書かせていただいたことを紹介させていただきます」

▲伊藤教授が『論座』に書いた『気候問題リテラシーを身につける』

 

岩上「『論座』はなくなってしまいましたね。リテラシー以前に、それを提供する雑誌がどんどん減ってしまう」

伊藤「そこが、日本のジャーナリズム、それから科学の底の浅さですね。

 この中では、地球温暖化のセカンド・オピニオンという言葉で表現させていただきました。

 (1)20世紀は気温が上がり
 (2)その前半は自然変動だが
 (3)後半は人為的である

 というのがIPCCの結論だったんですね。

 ところが、これの前提になることや内容が怪しいことが、調べていくことでわかるんです。その意味で、情報リテラシーと絡んだ問題として『気候問題リテラシー』と表現しました。今日のインタビューも判断力の材料にしていただこうということなんです。

 (1)~(3)から出てくる結論は、原発を推進してでもCO2を減らすという話になりますが、一種の治療の方針として、医療でも最近よく言われるように、こうしたことでもセカンド・オピニオンは重要でしょう。違ったアプローチが必要だということで提案しています。

情報のリテラシーをなぜ言うかといえば、不正確な報道や情報が多いんですね。例えば、これから紹介しますが、北極圏で永久凍土が融け家屋が崩壊しているとか、海氷が減ってシロクマが困っているとか、そういう話がたくさんあります。それから、キリマンジャロ山の氷河がなくなってしまうとか、ツバル(※9)の海面上昇──これは温暖化問題の象徴ですね」

岩上「象徴であるとともに、発展途上国を海没させてまで経済成長するのかという道徳的な問題となっていますね」

伊藤「それから、マラリアの話。こういったものに誤情報・誤報道が多い。それはなぜかということですが、(a)酷いときには作為的な報道がある。また、(b)政治的な判断で隠したり誇張したりする場合がある。(c)単に科学的あるいは情報に無知である場合もある。(d)難しくて間違えてしまう場合もある。これから出てくる話題でどれが当てはまるか、見ていただけるとうれしいなと思います」

(※9)ツバル:南太平洋に浮かぶ島国で、フィジーの北約1000キロに位置する。島全体として海抜が低く、温暖化による海面上昇で沈むのではないかと話題になった。

地球温暖化問題にまつわる大捏造事件

伊藤「まず、(1)のテーマです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書を基にしてCO2削減が叫ばれていますが、その土台となる情報には疑問も生じています。科学的な知見の正しさということだけではなく、科学のあり方自体が問われているという結果になっています。そのいくつかの例を紹介したい。

 私も科学者のひとりとして残念なことなんですが、研究費を得たいとかポジションを得たいなどの研究者の動機によって、いかに科学のプロセスが歪められてしまうかということを示したい」

岩上「3・11以降、我々も含め科学の門外漢の人も、いわゆる御用学者は、人命がかかっていても自分が研究費をもらっている分野を守りたいが故に、いかにいい加減なことを言い、またそれをNHKのようなところがいかに垂れ流し続けるか目の当たりにしていますから、大変理解がいくのではないかと思います」

▲伊藤教授が指摘する地球温暖化に関する主な事件

伊藤「こうしたことが、気候の分野だけではなくあちこちにあるようです。過去の気温のデータの破綻としては、『ホッケースティック曲線』という有名なデータがありまして、これはもうすでにその顛末、かたが付いてしまっています。

 それから、IPCCの報告書と利害関係者(ステークホルダー)についてです。総合して『IPCCゲート』と言ったりもしますが、その中の代表的なものとして『クライメートゲート事件』と、先ほど出た学術会議でも議論となった『グレーシャーゲート事件』というヒマラヤの氷河が問題となったものを取り上げます」

ホッケースティック曲線 ~20世紀の温暖化を示すデータの大きな間違い

伊藤「まずホッケースティック曲線の顛末についてです。これが何を主張しているかというと、ここ1000年間のうち1900年ぐらいまではあまり気温の変化がなかったものが、20世紀に急激に上がっているということです。アイスホッケーのスティックをもじってホッケースティック曲線と言われます。

  この話が登場したとき、本当だったら大変だということで、非常にセンセーショナルなものでした。これが20世紀の異常性を表すと解釈されてきました。今でも、環境省のある方はこの図を使っているらしく、早く何とかして欲しいと思っているんですが……」

▲ホッケースティック曲線

伊藤「赤い線は温度計で測定した過去100年のデータです。それを過去の『代替』気温データ(青・黒・灰色)とつなぎ合わせてある図です。これは両方違うんですね」

岩上「温度計は近代に入って測定できるようになってからのもので、青色などは昔の(気温)なので推測しているわけですね?」

伊藤「後で詳しく出てきますが、木の年輪、それからアイス・コア(氷柱)というんですが、氷河の氷などを分析して過去の気温を推定し、そうしたデータをたくさん取ってきています。このホッケースティック曲線をまとめたマイケル・マン(Michael E. Mann)という人は、自分で測定したのではなく、それぞれの測定の専門家がいて、彼らが集めたデータを総合してこれを作ったんです(※10)

 そもそも、たくさんのデータを集めて解析するには、統計解析をやらなければならないのですが、それが間違っているというんです」

岩上「これは間違えたのですか? わざとやったんですか?」

伊藤「最初は間違えたのだろうと思います。ただ、西洋的なメンタリティは相当に狭いので、こうしたものが欲しいと思うとそっちの方に行ってしまうようで、ちょうどいいデータが出てくると、それしか見えなくなってしまう傾向があるようです。

 マイケル・マンらは20世紀に入って気温が上がったというんですが、彼らが使った方法を使うと確かにそうなります。しかし普通のやり方をすると、20世紀の気温上昇は消えてしまうんです。統計処理の仕方で変わってしまう」

▲マンらの分析結果と標準主成分分析との比較

伊藤「最初は、マンらは自分たちが数学に強いと思ってやったものの、専門家が入っていなかったことで失敗したんだと考えられます。古気候学の専門家で数学の勉強もしたらしいですが、統計解析の専門家ではなく、グループにそうした人もいなかった。

 どうしてこれが間違ったかということなんですが、マッキンタイア(Stephen McIntyre、※11)というカナダの鉱山会社に勤めていた統計の専門家と、マッキトリック(Ross McKitrick、※12)という経済の専門家が『ホッケー・スティック・イリュージョン』(The Hockey Stick Illusion、※13)という本を書いています(著者は正しくはアンドリュー・モントフォード(Andrew Montford))。

 残念ながら日本では訳されていませんが、極めて重要な本です。どうしてホッケースティックが出てくるかというメカニズムがちゃんと解説されています。まず必要なのは、少なくともいくつか20世紀に気温が上がってしまうということを示すデータです。他のデータはいろいろあるのですが、マイケル・マンたちの方法を使うと、20世紀に気温が上がっているデータが抽出されてしまう」

岩上「なぜ、そのようなことが起きるんですか?」

伊藤「彼らは、20世紀の部分に注目したんですね。というのは、過去に遡るとデータが少なくなってくるので、まずデータの多い20世紀の部分で解析するんです。そのとき20世紀の平均値を出し、解析を行い、次にだんだんとさかのぼって解析していくんですが、本当はさかのぼるごとに平均を取り直さなければならなかったのに、彼らは20世紀の平均値をそのまま用いたらしいんです」

▲マッキンタイアらが指摘するホッケースティック曲線の問題点

伊藤「そうすると、20世紀に気温が上がったデータの平均値との差だけがだんだんと激しくなっていきます。これが統計的には大変効いてきてホッケースティック曲線が出てきてしまう。ある意味では幼稚な話なんですが、聞くまで気がつかないんですね。普通のやり方でやれば、全体の傾向がどうかというのが出てきます」

(※10)ホッケースティック曲線の出典となったマンらの学術論文
(1)“Northern hemisphere temperatures during the past millennium : Inferences, uncertainties, andlimitations”(MBH99) : M . E . Mann , R . S . Bradley , M . K . Hughes Geophysical Research Letters 26(6)759?762(1999)
http://dx.doi.org/10.1029/1999GL900070 (有償),
http://www.meteo.psu.edu/~mann/shared/articles/MBH1999.pdf (無償)
(2)“Global-scale temperature patterns and climate forcing over the past six centuries”(MBH98):M . E . Mann , R . S . Bradley , M . K . Hughes
Nature392(6678)779?787(1998)
http://dx.doi.org/10.1038/33859 (有償),
http://www.meteo.psu.edu/~mann/shared/articles/mbh98.pdf (無償)

(※11)スティーブン・マッキンタイア(Stephen McIntyre):カナダの数学者、元探鉱者

(※12)ロス・マッキトリック:(Ross Mckitrick):環境経済学と政策分析を専門としているカナダの経済学者

(※13)Andrew Montford『The Hockey Stick Illusion(ホッケー・スティック・イリュージョン)』:Climate gate and the Corruption of Science , London : Stacey International , 2010 , ISBN : 978-1-906768-35-5(ペーパーバック版)
ホッケースティック曲線が、いかにして作成され、また、いかに破綻したかについて記録した本
http://www.amazon.co.jp/Hockey-Stick-Illusion-Climategate-Independent/dp/1906768358
(参考)Andrew William Montford:イギリスの作家、編集者 http://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Montford

(参考)マッキンタイアとマッキトリックによる学術論文:S.McIntyre , R. McKitrick“Hockey sticks , principal components , and spurious significance”Geophysical Research Letters 32 , L03710(2005) http://dx.doi.org/10.1029/2004GL021750 (有償)

(参考)Ad Hoc Committee Reportonthe‘Hockey Stick’Global Climate Reconstruction by E . J . Wegman , D . W . Scott , Y . H . Said(Science & Public Policy Institute(SPPI),2010):シンクタンク(SPPI)による『ウェッグマン報告書』米下院エネルギー・商業委員会の求めに応じホッケースティック曲線を検証した: http://scienceandpublicpolicy.org/reprint/ad_hoc_report.html

(参考)Wegman Report(officially called the Ad Hoc Committee Report on the ‘Hockey Stick’ Global Climate Reconstruction)(英語版ウィキペディア記事より:Wikipedia(en) http://en.wikipedia.org/wiki/Wegman_Report

(参考)シンクタンクSPPI(科学・公共政策研究所):Science and Public Policy Institute(英語版ウィキペディア記事より:Wikipedia(en) http://en.wikipedia.org/wiki/Science_and_Public_Policy_Institute

間違った解析の例 ~世界で最も影響の大きい樹木

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