「これから戦前の時代がやってきます」──。
天皇の戦争責任や自衛隊の違憲性を問い続け、ベトナム反戦運動を行う市民の姿など、数々の社会問題を追い、写真に収め、発表し続けてきた現在92歳の報道写真家、福島菊次郎氏。福島氏は、原爆が投下された広島で敗戦直後から10年間撮り続けた原爆被爆者一家の写真を発表したのち、プロのカメラマンとなった。
福島氏を動かすものは、「オモテに出ないものを引っ張り出して、叩きつけてやりたい反骨精神」であるという。14日、府中で「遺言ー最終章ー」と題された講演会が行われた。福島氏は、自民党政権が掲げている改憲草案などに触れ「現在の日本の政治状況は、自身が20代の時に経験した、戦前の雰囲気に似ている」と、警鐘を鳴らした。
講演会は、耳が遠くなってしまった福島氏をサポートする形で、福島氏の日常を撮った映画「ニッポンの嘘」を制作した、長谷川三郎監督が聞き手となって行われた。
- 日時 2013年9月14日(土)
- 主催 福島菊次郎講演会実行委員会(告知)
福島氏が考える、戦後政治の悪と良
福島氏は、第2次世界大戦後に昭和天皇が「敗戦ではなく『終戦』と言ったことが、戦後政治の最初の間違えである」と語り、「勝ったのか負けたのか分からない言い方であり、戦争責任が曖昧になっている」と指摘した。
一方、戦後に文部科学省が出した、憲法について書いた本「あたらしい憲法のはなし」について触れ、当時「文科省が子どもたちに対して、新しい憲法がいかに大切かということを噛んで含めるように言い聞かせた」ことは、戦後政治で行われたことで「とても良かった」と述べ、戦後憲法の大切さを訴えた。
市民の「気持ち」は、権力を脅かす
福島氏は人を動かすのは「武器でもなく、知恵でもなく、気持ちです」と語り、自身が活動し続けてきた理由に「昭和天皇に対する私怨です」と、はっきりと言い切った。また、市民の「気持ちは、権力を脅かします」と語った。
講演会では、福島氏が望み、会場の人々が議論をする時間が設けられた。参加者の一人が意見をしている時、他の参加者から批判の声が上がる一幕があった。会場がざわめく中、福島氏は「どうぞ、好きなだけやりあってください」と、口添えをした。市民が議論することを大切にする、福島氏ならではの寛容な態度に、会場からは拍手が起こった。
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