2013年3月10日(日)18時から、山口県岩国市のシンフォニア岩国で、「ニッポンの嘘 菊次郎さんとフォトジャーナリスト 那須圭子さんのトークショー」が行われた。反権力を掲げ、戦後の日本社会の歪みを記録してきた報道写真家、福島菊次郎氏のドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘』の上映会に合わせて企画されたもので、福島氏は、現代の日本が抱えている、さまざまな問題や歴史的な事実を、日本人という狭い視点を捨てて考える大切さを語った。
(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)
2013年3月10日(日)18時から、山口県岩国市のシンフォニア岩国で、「ニッポンの嘘 菊次郎さんとフォトジャーナリスト 那須圭子さんのトークショー」が行われた。反権力を掲げ、戦後の日本社会の歪みを記録してきた報道写真家、福島菊次郎氏のドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘』の上映会に合わせて企画されたもので、福島氏は、現代の日本が抱えている、さまざまな問題や歴史的な事実を、日本人という狭い視点を捨てて考える大切さを語った。
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現在、92歳の福島氏は、日本の現状について「今、日本が迎えている状態はとても難しい。それをどうやって突き抜けて、新しい時代を作っていくかということを、皆が一生懸命、話し合うことが大事である。そのためには既成の価値観や、上下の関係、男女の関係にしがみつかないことが大事だ」と話した。「現代の停滞した、重い危機感を破るために、発想を変えなくてはいけないだろう。僕は、今は、日本人であることをやめているんだ、と言っているのだが、そういう考え方をすれば、おもしろい発想が浮かんでくる」と、福島氏は聴衆に微笑みかけた。
上関原発反対運動を、長年にわたって記録してきた那須氏は、「福島氏と出会って、ものの見方が変わってきた。影響も受けたし、言いたいことも言い合ってきた」と述べた。
太平洋戦争の末期、陸軍二等兵だったという福島氏は、「身体に爆弾を装着して敵の戦車に体当たりする『人間爆弾』として訓練中に、広島に原爆が落とされたことを知った」と語り、敗戦後の日本にアメリカ政府から派遣されたABCC(Atomic Bomb Casualty Commission=原爆傷害調査委員会)について、「広島・長崎の原爆による被害を調査したが、人類初の破壊兵器の被害実態を研究するために、被爆者への治療は一切しなかった。研究の成果は、軍事機密として扱われている。そのため、福島原発の事故による健康被害があっても、効果的な治療法の情報が出てくることはない。日本は、原爆の治療について、ABCCを頼りにしたが、ついに一人の被爆者も救うことができなかった」と話した。
福島第一原発事故について、福島氏は「日本政府は、放射能傷害について、一から独自で研究をしなければ、どこからも情報は得られないと、僕は考えている。日本人が研究して、徹底的に治療対策を考えない限り、原爆と同じように、一人の被災者も救うことはできないだろう」と述べた。
その後、福島氏は従軍慰安婦問題や日本人拉致問題に触れて、「日本が、戦争中にアジアに対して行った『殺し尽くし』『燃やし尽くし』『奪い尽くし』『犯し尽くす』という残虐行為を忘れてはならない。日本軍は『従軍慰安婦については記録がない。記録がないものは(その事実が)ない』と述べているが、従軍慰安婦の証拠は、たくさんある」とし、「日本人拉致問題について考える時には、かつて、日本人がアジア人を(強制連行などで)10数万人拉致していることも考えるべきだ。事実に基づかない被害意識を持ち、報復的な判断で、一方的な側面だけを強調されているが、日本が責任に向き合うなら、もっと人道的に考えなければならないことがある」と指摘した。
最後に、福島氏は「日本人という枠組みにとらわれることなく、自由に話し合える場が必要だ」と語った。
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