放射能測定について「個別に対応しながらきちんと説明していくことで、調査というよりも検査をさせていただいている」 ~第27回国会エネルギー調査会(準備会) 2013.6.18

記事公開日:2013.6.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 2013年6月18日(火)16時から、東京都千代田区の衆議院第一議員会館 国際会議室にて、「第27回 国会エネルギー調査会(準備会)」が行われた。今国会中では最終回となった今回は、木村真三氏(獨協医科大学国際疫学研究室室長)を迎えて「放射能測定の課題とチェルノブイリ事故から学ぶこと」をテーマに、福島県二本松市で実際に行われている放射能測定の方法などの説明もあった。

■ハイライト

■テーマ 放射線被ばくと健康管理、国の責任は?
■内容 
 報告:生活環境における放射能測定の課題
  木村真三氏(獨協医科大学准教授)
 説明:福島県「県民健康管理調査」の実施状況について
  内閣府原子力災害対策本部より説明聴取
 コメント:
  植田和弘氏(京都大学教授)、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)、金子勝氏(慶應義塾大学教授)、他
 討議・意見交換:
  出席国会議員、有識者を交えて

 はじめに木村氏は、放射能測定の課題として、「何のために測定するのか。研究者は、ついつい目的を忘れて、測ること自体や、出てくる新しい真実に狂喜乱舞する傾向がある。そのため、被災者の心情について無頓着になることが多々ある。これは、研究者として一番陥ってはならないことだ」と述べ、「問題に対する解決方法をきちんと明示し、被災者と共に闘う姿勢が大事である」とした。その上で、正しいデータを用いた証拠付けをしていく必要性を指摘した。

 木村氏は、個人の臓器の被曝量の測定検査や、自家菜園の作物を食べる機会の多い福島県民に対して、食の安全を担保する検査の実施など、二本松市の詳細調査について説明した。また、チェルノブイリにおいて、事故後26年経過した現在でも、高濃度の食品汚染が発生している事実を紹介し、今後も調査を継続、報告していくとした。

 次に、環境省の桐生康生参事官が、被曝の状況や甲状腺の超音波検査の結果について説明する中で、国からの782億円もの交付金に支えられて行われている福島県の県民健康管理調査の回収状況が、「県全体で23.4%であった。約13万人に実施した内部被曝の調査結果については、ほとんどが1ミリシーベルト以下。外部被曝に比べて、内部被曝が少ない」と報告した。

 甲状腺スクリーニング調査結果については、「被曝量が総じて少なく、甲状腺被曝が高いと推計されていた地域においても、高い数値は検出されていない」と説明し、「被曝の影響はない」とした。甲状腺検査の実施計画については、「平成25年度までに1回目の検査を終了し、2巡目として、20歳までは2年に1回、20歳以上は5年に1回の頻度で実施する。今後も注意深く数値の推移を見ていく」と述べた。

 桐生氏の説明に対し、「ウクライナとベラルーシに比べて影響はない、と断定する環境省の説明には、科学的論拠がない」「調査の回収率が低い」「県の枠組みを超えての、医学的チェック体制の不備」などを指摘する意見が出た。桐生氏は「断定まではいかないが、まったくわからない訳ではなく、トータルで考えれば被曝の影響は考えにくい」と述べ、「100ミリシーベルト以下の放射線被曝は発がんリスクは少ないとする、ICRPの知見をベースにしている」と説明した。また、県外での調査については、「隣接県の有識者検討会で対応し、情報収集していく」とした。

 金子勝氏は「被災者それぞれに、健康調査の意味を説明し、調査結果をどのように役立てるのかを明示する必要がある」とし、「山下俊一氏の発言に端を発して、被害を受けた方々は(県の対応に)不信感を持っている。ほかの病院で調べたい、という気持ちは避けられない。何らかの手当は必要である」と指摘した。その他、甲状腺がん以外の検査や、生涯の積算放射線量の管理、差別の問題、検査に不安を持つ人々へのケアを求める意見が挙がった。

 前田彰久参事官補佐は、確立的影響と確定的影響について触れ、「先天異常は確定的影響に属するが、福島の線量を見ると、影響は否定するべきである」とした。桐生氏は「差別がどのように生じるか、考えながら慎重に対応していく。被災者の心の問題などは、チェルノブイリの事例を参考にして対応していきたい」と述べた。

 心のケアに関して木村氏は、旧共産圏では精神医学が否定されていた歴史を説明した上で、「チェルノブイリの事例のみを参考にするのではなく、福島県独自の調査、対応が必要である」と指摘した。

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