2025年8月7日に発動したアメリカの相互関税を巡っては、日本政府が合意したとしている軽減措置が適用されないことで、日米の合意に齟齬があるのではないかなどと、混乱をきわめているトランプ関税ですが、ワシントンを訪問中の赤沢亮正経済再生担当相が、日本時間8日午前、トランプ関税についての会見を開きました。
赤沢大臣は6日にラトニック米商務長官と約90分間、7日にもラトニック商務長官と約3時間、ベッセント米財務長官と約30分間にわたり会談しました。
赤沢大臣は、8月7日から適用された相互関税に関する大統領令が、日米合意と一致せず、既存の関税率(15%以上は対象外、15%未満は15%に引き上げ)に反する内容であった件について、「米側の事務処理ミス」により、誤った大統領令が発出されたと、説明しました。
赤沢大臣は会見冒頭、「相互関税に関する大統領令を発出する際の米側内部の事務処理にあたって、日米間の合意に沿っていない大統領令が発出され、適用が開始されたことは極めて遺憾です」と、2回、繰り返しました。
赤沢大臣は、米側は大統領令を修正し、8月7日以降に徴収された関税のうち合意内容と異なる部分、米国が徴収しすぎた分の関税を遡って払い戻すこと、自動車・自動車部品の関税引き下げに関する大統領令を発出すること、日本政府は米側に対し、速やかな修正と関税引き下げを強く要求していることを明らかにしました。
赤沢大臣は、誤った大統領令は「適時」修正される見込みだが、具体的な時期は未定だと述べています。ただし、赤沢大臣は「自動車については、もう何度も繰り返しますけど、1時間に1億円ずつ、損失が出ている企業があります。1日に20億円の損失が出ている企業もあります。1日に10億円損失が出ている企業もあります」として、「1日1日経つごとに日本企業の損失が増えていっている」と指摘し、「1日でも早く、1刻でも早く、15%の税率というものを実現して欲しい」と述べました。
赤沢大臣は、相互関税について合意文書を作らなかったことが裏目に出たのではないかと問われ、世界中の国を相手に関税交渉を進めている米側の多忙さのために文書作成にいたらなかっただけで、文書化しなかったから、誤った大統領令が発出されたのではないと説明しています。
トランプ大統領が、日本が米国の産業を活性化するために投資する5500億ドルは「俺達が自由に使える金だ」と発言したことに対する所感を問われ、赤沢大臣は「トランプ節」と回答しました。
しかし、物はいいようだとは言いますが、日本から米国内への投資は86兆円、そしてそこで事業をするなどして、あがった利益のうち、米国が9割をとる、という言葉は、キャロライン報道官も、発言しており、「トランプ節」では済まされません。
こんな不平等協約を、主権者の国民が同意していないのに、決めることなど、できないはずです。これに関しても、「トランプ節」で片付けるわけにはいきません。
赤沢大臣は、事務手続きのミスはあったが、日米間の信頼関係や合意の実効性に影響はないと認識していると述べています。
- 【速報】赤沢経済再生相がコメント トランプ政権の相互関税について(日テレNEWS、2025年8月8日)
<赤沢大臣会見・冒頭発言(全文)>
赤沢大臣「今回の訪米では昨6日午前11時から約90分間、ラトニック商務長官との協議を行いました。また、本7日午前10時から約180分間、これもラトニック商務長官と、そして、本日午後4時15分から約30分間、ベッセント財務長官と協議を行いました。
両長官との間で、今般の日米官の合意の内容を改めて確認をした上で、その誠実かつ速やかな実施が重要であることを確認しました。
本7日からですね、相互関税に関する新たな大統領例の適用が開始されましたが、過去一貫して、総互関税にかかる合意の内容についての日米間の認識に齟齬はありません。すなわち既存の関税率が15%以上の品目には課されず、1%未満の品目については既存の関税率を含め、15%が課されるということです。
今回の訪米中、この点について米国閣僚との間で、改めて繰り返し、確認をいたしました。
相互関税に関する大統領令を発出する際の米側内部の事務処理にあたって、日米間の合意に沿っていない大統領令が発出され、適用が開始されたことは極めて遺憾です。
繰り返しますけど、相互関税に関する大統領令を発出する際のですね、米側内部の事務処理にあたって日米間の合意に沿っていない大統領令が発出され、適用が開始されたことは極めて遺憾です。
米側閣僚からも、今回の米側の手続きは遺憾であったとの認識の表明がありました。
その上で、今回の訪米中、米側から、今後適次に、大統領令を修正する措置を取ること、及びその際には、本7日以降に徴収された相互関税のうち、日米間の合意の内容を上回る部分について7日に遡って払い戻すこと、――すなわち遡及効(法律などが成立以前に遡って効力を発揮する)でありますけど――、としたいとの説明がありました。
米側が、相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るのと同じタイミングで、自動車、自動車部品を引き下げる大統領令を発出することも確認をしました。
引き続き、米側に対し、可及的速やかに、相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また自動車、自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、あらゆる形で、あらゆるチャネルを通じて強く申し入れてまいります。以上です」
<赤沢大臣会見・質疑応答(抜粋)>
日本テレビ記者「可及的速やかに大統領の修正と、そして自動車関税の大統領令の発令で約束をされた、ということですけれども。その時期については、具体的にどのような言及があったのでしょうか?」
赤沢大臣「『可及的速やかに』、とは申し上げておりません。『適時に』、ということを申し上げました。
これは、米側内部の事務処理ということでありますので、米側が判断をするということでありますけど、一般的な理解としてですね、遡及効がついてますので、え、遡及効ついたまま、大統領令の修正なしで半年1年ということは、当然ありえません。ということなので、その辺はもう、常識的な範囲で、米側が対応するという風に理解をしております。
ということで『可及的速やかに』に、とは申し上げず、『適時に』にと申し上げております」
東京新聞中日新聞記者「大統領の修正については適時行われるということですが、日本側から大臣側から、8月中にやってほしいとか、時期について求めたのかということと、先方からはいつ頃までは修正したいというような言及はあったんでしょうか?」
赤沢大臣「『適時に』ということです。私どもからすれば当然ながら、遡及効があるので、返ってくるということですけど。それは事業者さんの側からすれば、1回は多めに関税を払って、キャッシュを用意しなきゃいけませんので、そういう意味では早いに越したことはないということは、お互いの言わなくても、当然共通認識としてあります。
しかも、日米合意と、ある意味違う大統領令が出てることについては、日米双方ともですね、何と言っていいのか、あずましい(※北海道の方言で「居心地がいい、快適な、落ち着いている」を意味する。赤沢大臣の妻は北海道出身)状態ではないですよね」。
北海道新聞記者「軽減措置に関してなんですけれども、結果として日本にあの軽減措置が適用されないまま今現状ではですね、相互関税されてます。国内では、『合意文書を作らなかったことはやっぱり、裏目に出たんじゃないか』という批判もあると思うんですけど。こうした現状を踏まえて、これまでの交渉の進み方に瑕疵や反省点を感じてますでしょうか?」
赤沢大臣「特にございません。繰り返しになりますけど、過去一貫して、相互関税にかかる合意の内容について、日米間の認識に齟齬はありません。
すなわち、既存の関税率が15%以上の品目には課されず、15%未満の品目については既存の関税率を含め、え、15%を課されるということ。
今回の訪米中、この点について、米国閣僚との間で、繰り返し改めて、確認をしたところです。
その上でですね、皆さんと再確認をしておきたいのは、日米間の合意が成立したのは7月22日です。関税の引き上げ期限が来るのは、8月1日です。もし、この短期間で共同文書の作成を目指したら、期限に間に合わず、総合関税は25%の上乗せになっていたということです。確認できましたか?
はい。日米間の合意の内容に沿わない大統領令の発出、適用開始は、米側内部の事務処理に際して発生したものですが、それでも日本政府が合意の履行を優先した結果、上乗せは25%ではなくて、15%で済んでおります。共同文書を作成していないから何かが起きた、というようなのは、私はまったく理解ができないご主張でございます。
引き続き、米側に対し、可及的速やかに、相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、閣僚レベルを含めて、あらゆる形で強く申し入れていきます。
加えて申し上げれば、まあ、常識的に考えてくださいよ。合意文書作るなら、日本に都合のいい関税率をこうするということだけ書いて、米側が署名してくれると思いますか? 米側がファクトシートに書いてることすべてについて、米側が納得するような書き振りになるまで調整を続けるわけですよ。
7月22日に合意ができて期限が8月1日で、しかも米側は、その後も他の国との交渉を延々、チームが続けてる状態で間に合いますか? よく考えてみてだきたいと思います」
NHK記者「遡及効がついてるので、そう遠くないという認識が示されましたけれども、ま、そのタイミングで同時に自動車に関しても、大統領(令)を出すという現地を得たことをどう評価してらっしゃるのか。
また今回、米政権内で事務処理的な問題があったという認識を示されましたが、今後について、一抹の不安といった、そういうものは感じますでしょうか?」
赤沢大臣「米側内部の事務処理にあたって、日米間の合意に沿ってない内容の大統領令が発出されましたが、――今、どういうこと言葉を使われましたっけ?『問題があった』?
その点については、我々は特に、根掘り葉掘り聞いて、『何があったのか』とかいうようなことを確定したりとか、ましてや、それについて何か、ある種責任を問うみたいなことをしておりませんので。問題があったかどうかについても、特にコメントすることは差し控えたいという風に思います。
それからですね、自動車については、もう何度も繰り返しますけど、1時間に1億円ずつ、損失が出ている企業があります。1日に20億円の損失が出ている企業もあります。1日に10億円損失が出ている企業もあります。
1日1日経つごとにですね、日本企業の損失が増えてってるわけですね。ということでありますので、あえて申し上げればですよ、それはもう、1日でも早く、1刻でも早く、15%の税率というものを実現して欲しいと我々は思っているので。
特に、それが相互関税に関する大統領令を修正するタイミングと一緒になったからどうだと言われても、私どもからすれば、昨日までと何も変わらず、1日でも早く、1刻でも早く出していただきたいということであります」
朝日新聞記者「大臣のご認識をうかがいたいんですが、ご自身で7月22日に合意にこぎつけて、その内容について、まったく違う大統領令が出されて、また訪米して閣僚とやり取りをして、というこの一連のプロセスについて、赤沢大臣自身はどのよう感じでしょうか? 僕だったら『なんていい加減な政権なんだ』とか、怒りを覚えたりすると思うんですが、そのへんの所感についておしえてください」
赤沢大臣「これは、私自身、正直、前回訪米して、どれだけ日にちが経ったかあれだけども、このタイミングで訪米することは想定はしていませんでした。
そのことは申し上げられますけども、それ以上に、私自身、申し上げたいのは、今回合意ができるにあたって、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、それから、グリア代表。
当初、大統領が、相手国の関税をどうしても引き下げさせようということで、関税政策を打ち出されたことについて、我々はそれを受け入れずに、関税は引き下げないと。だけど、米側は下げてほしいと。我々は投資でお答えする、ということを、言ってきたわけですね。
それについて、当然のことながら、外交交渉ですので、1回会ってどうこうなるもんでありませんけど、根気強く説得するうちによく理解をしてくれて。
今、私の理解するところは、日米、緊密に連携をし、日本が提案したことを合意の中に取り込んで、え、日米両国で、経済安全保障とそれから経済成長を、きちっと実現をしようということで、完全に認識はそろっておりますので。なくてはならない同盟国でありますけど、日米大変いいチームが今、出来上がっているという風に思っています。
今回のことについて、決して小事だという気はありませんけども、何かしら私どもの米との友好関係とか、今回の合意の持つ意味とか、それが将来にわたって発揮するであろう効果に何か曇りができるとか、そういうことではまったくないだろう、という風に理解をしております」
不明「5500億のインベストメント、(不明)。トランプ大統領が『俺達の金だ』と言ってることですとか、そういうことは?」
赤沢大臣「まず、5500億ドルについてですね。これは当然、合意の中に含まれてることでありますので、しかも今回かなり長時間話をしてますので、話題には出ました。そのことは申し上げますけども、具体的な内容については差し控えたいという風に思います。
あとなんかおっしゃいましたっけ?」
不明「トランプ大統領が、『俺達の金だ』という発言をしてますけれども、そこについて」
赤沢大臣「まあ、『トランプ節』っていう感じですかね。いつもコメントさせていただきますけども、米国の政府関係者がする発信について、私どもがコメントすることは差し替えたいと思います」
産経新聞記者「今日、改めて確認できたことに関して、合意文書じゃなくても、日本側と一緒にメモを作って、改めて確認するような作業があったのか、ということ。今回、齟齬はなかったということを含めて、日本国民に(不明)、何か改めて政府として、国民に説明するような文章なりにしていくことは(不明)」
赤沢大臣「私どもはもう繰り返しになりますけど、何点か申し上げますが、まずですね、合意文章を作ろうとすると、もう1回繰り返しますけど、アメリカがファクトシートで発表してるようなこと全体についてお互いが納得するまで、分案詰めるわけですね。
それができてから、関税を下げますって言われたら我々は困るわけです。とにかく早く関税を下げてくれ、その大統領令を出してくれということを最優先でやります。そのポジションは変わっていないので、共同文書を作るかと言われれば、我々のポジションは現時点においてもそこは変わっていない、ということになると思います。
その上で、石破総理がすでに申し上げてると思いますけど、衆算両院の予算委員会集中審議でですね、国民への説明責任を果たすために、――今我々が公表してるのは紙1枚ですので――、『それで足ると思うのか』と、『もうちょっと丁寧に説明したらどうだ』というご質問に対して、総理は『それはもう必要があらば』ということで、『検討する』という答えをしてたと思うので。
その点も、総理が表明された通り、と理解をしています。なので、総理がお答えした範囲内で、今回のものについても、現時点で発令をされてる大統領令はちょっと合意と違ってるので、今後適時に修正される遡及効もつくということ、どんな形で説明するかについては、何か文書のようなものにして国民の皆様に説明するかどうかも含めて、必要に応じて適義適切に対応したいという風に考えています」。
記者会見はここまでです。
関税を引き下げる代わりとして、米国内の投資を増やすという持ち掛け方を日本側からしたこと、総額86兆円も、ペーパーはないけれども、間違いのないものであること、そこまでの確認はしていました。
しかしながら、なぜ、そこまで確認しておきながら、記者クラブメディアは、その巨額な投資によって、生じた利益のうち、あらかじめ日本は1割、米国は9割と不平等な決め方をしたのだ、と、なぜ、赤沢大臣に突っ込まないのか、不思議でなりません。
こうした、政官とべったり癒着して、特権を得ている記者クラブメディアでは、国民の金が米国内に注ぎ込まれて、そのリターンが、利益の1割にされてしまうという、極めて不平等な協約への怒りを、苦しい暮らしをしている国民と、共有することができません。
独立メディアが、日本には必要な理由です。
























