2020年6月8日(月)午後1時より、大阪市役所B1会議室にて、大阪城公園よろず相談、釜ヶ崎センター開放行動、釜ヶ崎パトロールの会、長居公園仲間の会、釜ヶ崎住民と、大阪市市民局総務部定額給付金担当による「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」に関する協議が行われた。
上記の市民グループは5月11日に松井一郎大阪市長宛てに「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」を提出した。そこに挙げられている要望は、
1、野宿者や不安定居住者に対する、住民票による確認が不要な特別定額給付金の速やかな支給
2、野宿者や不安定居住者への現金手渡しでの特別定額給付金の速やかな支給
3、窓口で速やかに完了できるような簡素な手続きの整備
というものであった。これに対し、大阪市市民局総務部定額給付金担当は5月18日に、「給付対象者は『令和2年4月27日において、住民基本台帳に記録されている者であること』……いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されていない者について、基準日の翌日以降、居住市町村において住民基本台帳に記録されたときに申請・受給権者とすること」「銀行口座をお持ちでない方もおられることから、口座振込以外の給付方法について現在検討している」「感染拡大防止に留意する観点から給付金の申請方法は、郵送申請方式及びオンライン申請方式を基本としており、窓口での申請については受け付けていない」と回答した。
住民基本台帳への記載と住民票の取得が給付金の支給・不支給の基準として厳格に適用された場合、大阪市西成区、通称釜ヶ崎などで生活する多くの不安定居住者がこの制度から排除される。東京では、先述の大阪市民グループと協同する、ねる会議、聖公会野宿者支援活動・渋谷、渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合(のじれん)、女性ホームレスグループ・ノラ、山谷労働者福祉会館活動委員会、山谷争議団が、渋谷区地域振興課、東京都総務局、総務省に対して5月中に幾度も繰り返して問い質しを行ない、現在の制度設計のままで不安定居住者に給付金が行き渡るのかを確認しているが、行政の対応は極めて鈍い。
国や総務省は、特別定額給付金が国民すべてに行き渡ることを目指す、としながら、その条件として住所の登録を掲げ、それが困難な人々がいることは考慮しない。また、テントなどの生活拠点や支援団体の事務所などを住所とすることが出来るか否かについては各自治体の判断に委ねるとし、その最終的な判断権者の各市区町村は、困窮者の実態に即した幅のある判断、効果的な決定を下すことに消極的である。
特別定額給付金の支給制度設計には、DV被害者を想定した世帯主ではない人や保護シェルター施設のような仮住所を対象とすること、無戸籍者への対応が含まれているが、住所不安定者、路上生活者の存在はその視野に入れられていない。
そのような状況を踏まえて6月8日の協議は行われ、釜ヶ崎住民の切実な願いや苛立ちが当局に激しくぶつけられた。この協議は日を改めて継続し、6月16日には大阪府庁にて、24日には大阪市役所前で座り込み行動も行われる。