安倍晋三総理の辻元清美議員に対するヤジ「意味のない質問だよ」に謝罪するも、用意した原稿に目を落としたまま、相手の顔も見ずに棒読み⁉
▲安倍晋三内閣総理大臣(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
この日の衆議院予算委員会では、去る12日に安倍総理が立憲民主党の辻元清美議員に「意味のない質問だよ」と自席からヤジを飛ばした件について、冒頭に安倍総理が謝罪した。もっとも、用意した原稿を手にし、相手の顔も見ずに棒読みしただけで、心からの謝罪とは到底思えないような幼稚で無礼な態度のものであった。(謝罪文読み上げは0:26前後)
■衆議院インターネット審議中継・予算委員会(2020年2月17日)
「辻元砲」炸裂! 「前夜祭」の会場の1つ「ANAインターコンチネンタルホテル東京」が「安倍方式」を全否定! 安倍総理の国会での答弁が虚偽である可能性が濃厚に!
辻元議員は安倍総理から謝罪を受けたことに対し、質疑の冒頭でこんな話を始めた。
▲立憲民主党・辻元清美議員(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
「総理、5年前にも私に対して『早く質問しろよ』とヤジを飛ばして謝罪したの、覚えてらっしゃいますか?私ごときの発言に、自分を抑えきれずにたびたび憤慨するような総理大臣では、危機対応大丈夫かしらと。心底心配しております」
さらに辻元議員は続けて、安倍総理がさらに遡って国会議員に初当選する頃の「発言内容」についても言及した。「覚えてはります?」と安倍総理に問いかけながら、安倍総理がかつて後援会の会報への寄稿に「政治資金の流れは、完全にガラス張りにしなければなりません」と書いていたことを指摘した。「私、感動したんですよ」と安倍総理を「持ち上げる」ような言葉まで、辻元議員の口から飛び出した。
安倍総理が議員になる前の発言まで引き合いに出しつつ、安倍政権の様々な側面におけるリスク管理のまずさをチクリと刺したあと、辻元議員は、安倍総理に対して大きな「爆弾」を投げつけた。
安倍総理は、「桜を見る会」の「前夜祭」の契約主体は「ホテルニューオータニ」と「前夜祭に出席した安倍総理の支持者個人」であり、宴会の開催に当たりホテルから事務所へ明細書や領収書は発行されていないと主張し続けてきた。そして、800人にものぼる出席者に対しては、ホテル側の用意した領収書を手交し、手書きで一人当たりの会費の額を記入し、宛て名は空欄にしていたという弁明を繰り返している。
いわゆる「安倍方式」である。一般常識では考えられないやりかたで宴会を開催したと強弁し、公職選挙法違反・政治資金規正法違反はないという主張を安倍総理はずっと続けている。
桜を見る会の「前夜祭」は、2013年から2019年の7年間では「ホテルニューオータニ」で4回、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」で3回執り行われている。後者のホテルは、2007年3月までは「東京全日空ホテル」と呼ばれており、現在も「全日空(ANA)ホテル」の名称を使う人も少なくない。
不思議なことに実物が「1枚も出てこない」参加者あての領収書や、安倍総理が「存在しない」と強弁する見積書や請求明細書は、これまで主に「ホテルニューオータニ」で開催した前夜祭のものを中心に議論されてきた。
辻元議員はまず安倍総理に、2013年以降の「前夜祭」は、すべてこの「安倍方式」で行っているかどうか、何度も念を押して確認した。
辻元議員「明細書はホテルからもらってない、宛て名のない領収書をホテルが発行したというように、何回も何回も繰り返し答弁されてますので。それが事実でなければ責任を取られるというお覚悟で、そこに座ってらっしゃいますか?」
安倍総理「ここにおいて、私は総理大臣として答弁をさせていただいております。私が把握していることを正直に述べている、ということでございます」
すると、辻元議員は「どうしても納得がいかないので、ホテルに問い合わせてみました」と話を切り出した。
辻元議員は事務所を通じ、ホテルニューオータニではなくANAインターコンチネンタルホテル東京に聴き取りをし、書面による回答を得ていたのである。
辻元議員の質問とホテルの回答は以下の通り。
Q1「貴ホテルが見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースはあったでしょうか」
A1「ございません。主催者に対して、見積書や請求明細書を発行いたします」
Q2「個人・団体を問わず、貴ホテルの担当者が金額などを手書きし、宛て名は空欄のまま領収書を発行したケースがあったでしょうか」
A2「ございません。弊ホテルが発行する領収書において、宛て名を空欄のまま発行することはございません」
さらに、2013年以降に同ホテルで開催されたパーティーや宴会について質問が続く。
Q3「ホテル主催ではない数百人規模のパーティー・宴会で、代金を主催者でなく参加者個人一人ひとりから、会費形式で貴ホテルが受け取ることはありましたか」
A3「ございません。ホテル主催の宴席を除いて、代金は主催者からお支払いいただきます」
Q4「(Q&Aの1~3の対応について)主催者が政治家及び政治家関連の団体であることから、対応を変えたことはありますか」
A4「ございません」
このホテル側の書面による回答は、立憲民主党がツイッターでも公開している。
これで、安倍総理があたかも通常のやりかたであるかのように主張してきた「安倍方式」は、一般的なやりかたとは全く異なることがはっきりしてきた。
これには議場も静まりかえり、安倍総理も返す言葉がなくなったようである。辻元議員はこう述べた。
「総理大臣として、全ての発言に責任を持っているとさっきおっしゃいましたね。(中略)国権の最高機関である国会で、真実と異なる答弁を幾度となく繰り返し、さらには政治資金規正法違反の疑いが濃厚になったんじゃないかと。私は、この全日空ホテルからの文書による答えをもらって、背筋がぞっとしました」
辻元議員は安倍総理に対し、この後総理の側からもANAインターコンチネンタルホテル東京に確認をし、午後の質疑で回答するように求め、質問を終えた。
■衆議院インターネット審議中継・予算委員会(2020年2月17日)
辻元清美議員のバトンを受けて、午後から無所属・小川淳也議員が登場! 「文書」の証言に対しては「文書」をもって返すべきと安倍総理に迫り、その後延々と続く「押し問答」に!
午前中の質疑で辻元議員が示した強力な「物証」により、安倍総理の主張と矛盾する点が暴かれ、総理の一連の答弁も虚偽である疑いが一気に強まった。
午後からの質疑では、たびたび安倍総理らに切れ味のある厳しい追及を続けている無所属の小川淳也衆議院議員が登壇した。
▲無所属・小川淳也議員(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
当初「公文書管理」の問題について質問をする予定だった小川議員だが、辻元議員が午前中の質疑で安倍総理に「宿題」を出した関係で、急遽「前夜祭」関連の質問を行うことになった。
安倍総理は、ANAインターコンチネンタルホテル東京から得た回答として、次のように述べている。
安倍総理「あのー、私の事務所のほうから、あー、ANAホテルに連絡をいたしまして確認をいたしました。まとめてお答えをさせていただきたいと思います。えー私の事務所が、全日空ホテルに確認したところ、辻元議員にはあくまで『一般論』でお答えしたものであり、個別の案件については『営業の秘密』にかかわるため、回答には含まれていないとのことであります。
『桜を見る会』前日の夕食会は平成25年、26年及び28年の3回は全日空ホテルで実施し、私の事務所の職員はホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けていない、ということです。
また、領収書については、一般的に宛て名は「上様」として発行する場合があり、夕食会でも「上様」としていた可能性はあるとのことでした。
いずれにしてもこれまで私が繰り返し答弁してきた通り、夕食会の費用についてはホテル側との合意にもとづき、私の事務所の職員が会費を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、えー受付終了後に集金したすべての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた、とのことでありました」
小川議員「あの、個別に安倍後援会の案件についてどうだったかということは、聞いてもいませんし、答えてないのはその通りなんです。しかし、辻元議員の問いの立て方、そしてその答え方に『例外がない』ということがこの際重要なんです。これ、ホテル側はメディアにきかれようが、野党にきかれようが、全く同じことを答えてるんですね。それなりにホテル側の信用を賭けて、覚悟をもって答えてるんですよ。したがって総理、まずホテル側がこうして『文書』で辻元議員に対して回答してきたということは、まず重く受け止めていただきたい」
小川議員は、安倍総理が「事務所からホテルに確認した」とする内容を「口頭」で答えて済ませようとしたことに対し、書面なり明細書等の現物など「物証」をもって回答してほしいと総理に迫った。
そしてここからは、安倍総理と野党の間で「文書」を出すか出さないか、という議論が延々と始まることになる。
安倍総理「私がここで話していることが『真実』」!? 「辻元議員の問い合わせ先はホテルの広報部だが、安倍事務所は営業部に問い合わせたために見解が違う」!?
安倍総理は、辻元議員が受けたホテル側の回答と自身の主張に矛盾が生じていることについては「ホテルの回答はあくまで一般論で、自分の『前夜祭』についてどうだったかは回答に含まれていない。個別の事案については『営業秘密』に関わるので出せない」という主張をあくまでも押し通そうとする。
しかし、ホテル側がその「一般論」について、「主催者が政治家であっても例外的な扱いはしてこなかったと」回答している以上、安倍総理の「前夜祭」も「一般論」に含まれるのは明白である。それでも安倍総理はその点を完全に無視して、「壊れたテープレコーダー」の如く同じ答弁を繰り返す。
そして野党側が、総理の主張を裏付けるために書面での回答を提示するよう求めると、「当然ですね、皆様が、今、私とのやりとりについて『本当か』ということを、全日空側にですね、ただしていただければよろしいのではないかと。(中略)私がここで話していることが、まさに、全日空側とやりとりしていることの『真実』でございます。それを信じていただけないということになれば、そもそもこの予算委員会が成立をしない、ということになってしまう。いちいちそれに答えていたのでは成立しない」
言い換えれば「総理大臣の俺が言う事なんだから、無条件で信じろ」という、勘違いも甚だしい、傲慢極まりない暴言である。
小川議員はすかさず「それはおかしい」として、辻元議員が書面でホテルから回答を受けた経緯を説明した。小川議員によれば、「電話での曖昧な質問に曖昧に答えるべきではない」とホテルの側が判断し、辻元議員に対して書面で質問するように求め、それに対して書面で責任をもって答えた、ということだった。同じホテルが安倍総理の事務所からの問い合わせに電話で答えたというのは本当なのか、と小川議員が安倍総理に問いただした。
すると安倍総理は半ば「キレ気味」に、午前中の辻元議員の質疑終了後の短い時間で確認する必要があったからだと「言い訳」を始めたのである。回答を得るための「自分の努力を認めてもらえない」などと、駄々をこねるような物言いも飛び出した。
そしてついには、辻元議員の問い合わせ先はホテルの広報部だが、安倍事務所は営業部に問い合わせたために見解が違う、などという答弁まで出てきた。
■衆議院インターネット審議中継・予算委員会(2020年2月17日)
小川議員の後も奥野総一郎・山井和則両議員が引き続き安倍総理を「ド詰め」! 安倍総理の「逆ギレ」も始まり、野党議員は一時議場を退席する事態にも!
▲国民民主党・奥野総一郎衆議院議員(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
小川議員に続いて質疑に立ったのが、国民民主党の奥野総一郎衆議院議員であった。奥野議員は「検察庁法」に関する質問に入る前に、辻元・小川両議員の質問を引き継ぐ形で、ANAインターコンチネンタルホテル東京からの回答に関する質問を行った。
ホテルの回答文書からは「例外がない」としか読み取れないにもかかわらず「前夜祭」については例外的な扱いであったと強弁するために、「広報部の見解だから違う」と言い募る安倍総理に対し、奥野議員は「会社の広報部が自分の部署だけの一存で勝手に答えを出すわけがない」として、さらにたたみかけた。
奥野議員「総理のおっしゃることが本当だとすれば、この紙(ホテルの回答文書)は嘘だってことになるわけですよ。会社の名誉が非常に傷つくわけですよ。だからこそ、反論をちゃんと会社のクレジット入りで出してくださいと。総理にお願いしてるんですよ、社の名誉にかかわることだから。(中略)総理がおっしゃるなら、紙で先方が出してくるのは簡単なことだと思いますよ。時間がなかったとおっしゃるなら、明日で結構です。(中略)何か不都合でもあるんですか?」
安倍総理「先ほどらい答弁してる通りでございまして、『例外なく』『全ての』という言葉はないわけでございまして…(以下略)」
この期に及んでも安倍総理は、回答文書に「例外なく」「全ての」といった「言葉」が入っていないなどという、小学校の国語レベル以下の「答えになっていない答え」に終始した。要は、「自分が嘘をついている」とも言えないが「ホテルが嘘をついている」とも言えないがための苦しい言い逃れであるわけだが、この後も結局、辻元議員の質疑の時から変わらない内容の答弁を繰り返してた。
■衆議院インターネット審議中継・予算委員会(2020年2月17日)
無所属・山井和則衆議院議員が指摘!悪徳マルチ商法業者「48ホールディングス」社長と安倍夫妻が一緒に移った複数の写真が、今も昭恵夫人のフェイスブックで公開中
同じ質問と同じ回答が延々続く中で、議場には徐々にフラストレーションが蓄積していったと思われる。それが次の質疑で遂に爆発した。
無所属の山井和則衆議院議員は冒頭で、「国会で安倍総理のおっしゃっていることが真実なのか否か、その問題が揺らいでいる」としてANAインターコンチネンタルホテル東京の回答に関する質問に入る前に、別の事案について切り込んだ。
やはり「桜を見る会」に関連する事項でもある、安倍総理あるいは夫人の安倍昭恵氏に招待された疑いが強まっている仮想通貨会社「48(よつば)ホールディングス」の件である。
「48ホールディングス」も「ジャパンライフ」同様の悪徳マルチ商法を行っていた業者と見られており、経営難に陥る直前に当時の社長であった淡路明人氏が、安倍夫妻と一緒に納まっている写真を使って会員を信頼させ、勧誘に利用したとみられている。山井氏は、この社長と安倍夫妻が一緒に移った複数の写真が、昭恵夫人のフェイスブックで今も公開されていることを指摘した。
▲山井議員が質疑で提示。マルチ商法勧誘に首相夫妻との桜写真が使用されたことを報じた東京新聞記事のパネル(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
一週間以上前に新聞報道があったにも関わらず、総理夫人が自分のSNSにこうした写真を載せたままにしていること自体、危機管理意識に問題があることは明らかだが、安倍総理自身は呆れたことに、このような写真をパネルで見せられてもまだなお、「社長とは面識がない」と平然と白を切り続けた。安倍総理は、どのような事案で野党やマスコミなど、誰に追及されようとも、すぐばれるような空疎な嘘をつき続けることができる、「異能」の持ち主であることがわかる。
「書面を提示する」を強く求める山井議員「安倍総理の巧妙なところは、その後の安倍事務所の『主張』を、あたかもすべて全日空ホテルが言ったかのように言ってる」
▲無所属・山井和則衆議院議員(2020年2月17日、衆議院予算委員会インターネット中継より)
そして、山井議員もいよいよANAインターコンチネンタルホテル東京の「回答文書」をめぐる質疑に入った。しかし山井議員に対する安倍総理の答弁も、結局これまでの答弁と同じ内容の繰り返しであった。
安倍総理が「書面を提示する」となかなか答えないため、山井議員が「これ以上審議に応じられない」と言うと、安倍総理は「書面がないなら議論に応じないというのではいちいち審議が止まり、議論が進まない」などと反論し、あくまで口頭での回答でやり過ごそうとした。
さらに安倍総理は「辻元議員が確認してくれといったから昼休みに確認したのに、それを信用できないというのか。自分の努力を認めないのか」とまだぞろ駄々っ子のような「逆ギレ」を起こした。これには山井議員も「説明責任は安倍総理、あなたにあるんですよ。あまりにも不誠実です!」と激昂し、埒が明かなくなってとうとう野党議員が退席、審議がストップする事態になったのである。
■衆議院インターネット審議中継・予算委員会(2020年2月17日)
審議は約40分後に再開された。質問と答えのかみ合わない押し問答は相変わらずであったが、その中で山井議員は安倍総理が口頭での回答にこだわることについて、図星を指すような発言を残している。
「安倍総理の巧妙なところは、全日空ホテルが言ったことと、その後の安倍事務所の『主張』を、あたかもすべて全日空ホテルが言ったかのように言ってるんですよ。だから、紙で出してもらわないとダメなんですよ」
安倍総理のこれまでの言動を見聞きしてきた者であれば、「書面では出せない、口頭で」と安倍総理が言い張るということは「口頭でまた嘘をつくつもりだろう」と考えるのが自然だ。そのために野党側は確固たるエビデンスとなる書面を出すように求めているのである。
「桜を見る会」問題発覚の立役者でもある日本共産党の田村智子議員は、この日の予算委員会についてツイッターで以下のようにコメントしている。
「これはすごい!#桜を見る会前夜祭 はニューオオタニだけではなかった。ANAコンチネンタルホテルは、7年間、主催者に明細書を出さない宴会は『ございません』
参加者1人1人に宛名のない領収書を渡したことは『ございません』
辻元議員から小川議員、奥野議員、山井議員の連携もすばらしかった」
ANAインターコンチネンタルホテル東京は、安倍総理が得たとする「回答」にも嘘があると指摘! 世間はホテルの対応を絶賛するも、官邸の「圧力」で翌日にはなぜかトーンダウン?
安倍総理は、自分の事務所がANAインターコンチネンタルホテル東京に確認したとする内容について「辻元氏への回答は一般論で、自分の関わった『前夜祭』など個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答に含まれていない」という答弁に終始していた。
ところが毎日新聞がANAインターコンチネンタルホテル東京に確認の取材をしたところ、「直接(首相側と)話をした者が『一般論として答えた』という説明をしたが、例外があったとはお答えしていない。私共が『個別の案件については、営業の秘密にかかわるため回答に含まれていない』と申し上げた事実はない」と、安倍総理の国会答弁を否定する回答があったと報じたのである。
また、「明細書の発行は受けていない」との安倍総理の答弁については、「弊ホテルとしては、主催者に対して明細書を提示しないケースはないため、例外はないと理解している」と答えた。この点についても、安倍総理の答弁は明確に否定されたことになる。
質疑に立った小川議員も、18日に以下のようなツイートをしている。
「『例外はない』『営業秘密と言った事実はない』忖度まん延症候群のような日本列島にあって、ANAインターコンチネンタルホテル東京の存在は特別にキラリと光る。誰にもおもねない。誰に聞かれても答えを変えない。たった一つの真実を毅然といい放つ姿勢に敬服。しびれる」
こうした野党議員の入念かつ力のこもった追及を相変わらず無視し続けるNHKは、これまで国会質疑においても、いかにも安倍総理の「やってる感」を巧みな編集で演出してきた。しかしSNSなどではNHKを「腐敗組織」と批判する声が日に日に高まっており、こうした「小細工」も限界に近づいているのではないだろうか。
一方、宴会などの主催者が仮に政治家であっても請求書や見積書を必ず発行し、宛名を空欄にした領収書を出すこともないという毅然とした回答を出し、安倍総理のこれまでの答弁が虚偽であった可能性をあぶりだしたANAインターコンチネンタルホテル東京については、SNS上などで安倍政権に「忖度」しない対応ぶりを絶賛する声が多く聴かれた。
ところが翌18日、ANAインターコンチネンタルホテル東京は、国会の質疑の件に関し、「返答を差し控える」と述べたことが時事通信社によって報じられた。
ホテル側が「一歩後退」したとも受け止められる報道に、ネット上でも一転して落胆ムードが漂った。
自民党の森山裕国対委員長は、この18日記者団に対し「ホテルのしかるべき方が『大変ご迷惑を掛けている』と自民党本部に来たと聞いている」と発言しており、どうやら安倍総理がANAの幹部を呼び出し、何らかの「圧力」をかけたと見られている。これに対して、立憲民主党の安住淳国対委員長がすかさず抗議を入れた。
ところが、森山委員長は翌日19日に「桜を見る会」の前夜祭会場のホテル担当者が党本部を訪れ、謝罪したとする自身の発言を修正。「ホテルの方が(自民党本部に)行かれたという話はありましたけど、それは何で行かれたかよく分かりませんので、営業があって行かれたのかもしれません」などと釈明しました。
「外資系」のホテルに安倍総理がどこまで圧力をかけられるのかと、リテラシーある市民らが冷静な分析!
この一連の報道をめぐっては有名・無名を問わず多くの人から様々な見方がなされている。
まず、ANAインターコンチネンタルホテル東京は時事通信の問い合わせに回答する形で「回答を差し控える」と述べているが、どのような質問に対してそう答えたのかが伏せられている、という指摘がある。
「この記事は肝心の時事側がどんな質問をしたのかが伏せてある。だからホテルの『返答を控える』が、単に国会での与野党の質疑への感想を聞かれて『そういう質問への返答は控える』と言ったのか、今後国会からの要請について「返答を控える」と言ったのかわからない」
このツイートに続ける形で、ANAインターコンチネンタルホテル東京があたかも総理官邸の「恫喝」に怯えたかのような印象を与える記事にすることで世論の流れを作ろうとしているのではないかという仮説が立てられており、時事通信のこの記事を「駄記事」「汚記事」と酷評する。
ホテルとしてむやみに「個別取引の詳細」を開示しないと述べているものを、対象を曖昧にして「回答を差し控える」と答えたとすることで、ホテルが野党側に送った回答文書の証拠能力を薄めるような印象操作記事であると疑う向きもある。
また、同ホテルは「回答を控える」と言ってはいるものの、決してこれまで野党議員に示してきた書面による回答を「撤回」したわけではないという点に着目する人もいる。
「もうANA側の答えは確定しているので、そのあとに口を閉ざしても、安倍首相側に有利にはならない。むしろ、安倍首相の虚偽が確定した状態でことがすすむことになる」
さらに続くツイートで、仮に安倍総理サイドから「守秘義務」を盾に「口封じ」をされたとしても、ホテル側が立憲民主党の辻元清美議員に対して既に明確な回答をしている以上、それは事実として確定していることに変わりはないとしている。つまり、安倍総理がいくら事後的に「圧力」をかけても、虚偽の答弁をした可能性には影響がない、ということである。
もっとも、ホテル側が今後国会の質疑に関することについて回答しないということは、17日の衆議院予算委員会で野党が要求し続けた、安倍総理からの質問に対する「ホテルの書面による回答」を提出しなくて済む「口実」にはなったという意見も見られる。
また、自民党が呼びつけたのは「全日空(ANA)」の幹部であり、「インターコンチネンタルホテルグループ(IHG)」の幹部ではなかったのではないかという点に着目した見解もある。
ANAインターコンチネンタルホテル東京など、かつては「全日空ホテル」と呼ばれていた国内のホテルは、現在は日本の航空会社であるANAとイギリス資本のIHGの合同会社により運営されている。しかも、持分はIHGが7割以上を占めるため、国内企業の名前を冠していても実質的には「外資系」である。
アメリカやイギリスの法律では、株式を公開している企業が外国の政治家や公務員へ便宜供与や優遇的な取引をすると、禁固刑を伴う罰則を科せられる場合がある。日本でも、国際調和を図るため不正競争防止法18条に「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」というよく似た規定が設けられているが、実際に適用されるケースはめったにない。
つまり英米の法制度に照らせば、ホテルが安倍総理主催の「前夜祭」を破格の安さで受注したことそのものが、法に抵触することとなりうる。こうした法制度に基づくコンプライアンス意識があるため、ホテルを経営するIHGは「政治家に対して特別扱いをすることはない」といったような、安倍政権に「忖度」しない回答をしており、その内容を「撤回」することも当然ありえないという見立てがされている。
国内企業であり、しかも安倍政権発足以降は先日の武漢のチャーター便を受注するなど、政府から何かと恩恵にあずかっているANAの幹部なら、安倍総理の胸先三寸でどうにでもできると官邸は考えていたかもしれない。
しかし、ホテルの経営主体はオランダ人をCEOに持つイギリスのIHGである。安倍総理がANAインターコンチネンタルホテル東京を意のままにしようとするのであれば、IHGの幹部に「圧力」をかける必要があろう。しかし、外交でも何一つ成果を出せていない今の政権にそうしたことができるのか、実際にそのような無謀なことを言ったところで、そのあげく、どれほど大きなカウンターを国際社会から受けることになるのかを考えると、どこまでそうした「圧力」をかけられるのかは疑問である。
ネット上では様々な憶測が飛び交い、ホテル側の態度が「一歩後退」したことについて失望する声が多く聴かれる中、「闘うのは市民。ホテルはこれまでいい仕事をしてくれたのだから、今度は自分たちがそれを活かす番だ」という、至極もっともな意見もあった。
7年以上にわたる安倍政権の「デタラメ」ぶりから、一般市民の間でもリテラシーが徐々に醸成され、SNS上などで活発な議論がなされるようになりつつあるのは、せめてもの「救い」なのかもしれない。我々市民は政府の監視をより強め、NHKをはじめとする御用メディアの印象操作に乗せられないよう、これからも注意深くニュースを見ていく必要があるだろう。