明石順平氏「ソノタノミクス。GDP改定の際、国際的GDP算出基準と全く関係ない『その他』という項目でアベノミクス以降を『かさ上げ』し1990年代を『かさ下げ』した」~2.8「賃金偽装」野党合同ヒアリング 2019.2.8

記事公開日:2019.2.8取材地: テキスト動画
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(取材:八重樫拓也 文:花山格章)

 「GDPのかさ上げは、国際的GDP算出基準に全く関係のない『その他』という部分でなされている。私はこれを『ソノタノミクス』と名付けた」

 2019年2月8日正午から、東京都千代田区の衆議院にて行われた、13回目の「勤労統計不正『賃金偽装』野党合同ヒアリング」に参加した弁護士の明石順平氏は、上記のように語った上で、「それでも消費低迷を覆い隠すことができない。まさに、アベノミクスの一番の泣き所。そういう悲惨な状況にあることを、国民に認識してもらいたい」と指摘した。

 今年2月7日に出版された明石氏の著書『データが語る日本財政の未来』(集英社)によれば、アベノミクス以降の「その他」における「かさ上げ額」は平均して「5.6兆円」にも上るという。逆に1990年代においての平均値は「マイナス約3.8兆円」だという。こうした「その他」のかさ上げによるGDPの数値の操作を、明石氏は「ソノタノミクス」と名付けたのである。

 IWJでは、この明石氏への岩上安身によるインタビューを2月26日(火)に予定している。詳細が決まり次第、日刊IWJガイドやツイッター等で告知する。

■ハイライト

  • タイトル 勤労統計不正「賃金偽装」野党合同ヒアリング ―内容:2/8(金)の朝に発表される毎月勤労統計の速報値や、前回の宿題返しなどについて、厚生労働省、総務省、財務省、内閣府よりヒアリング
  • 日時 2019年2月8日(金)12:00〜
  • 場所 衆議院(東京都千代田区

「名目賃金上昇率の参考値が発表されていない。非常に不可解だ」と指摘する長妻昭議員!安倍総理は「総雇用所得なんだ、実質賃金上昇率と名目賃金上層率はアテにならない」と言わんばかりの国会答弁!?

 この日は、毎月勤労統計の2018年の速報値が発表されたばかり。実質賃金指数は前年を0.2%上回り、2年ぶりにプラスとなったが、野党が求める参考値で算出したデータは公表されなかった。立憲民主党の長妻昭衆議院議員は、今回の速報値について、「名目賃金上昇率の参考値が発表されていない。非常に不可解だ」と述べて、このように強調した。

▲長妻昭議員(2019年2月8日、IWJ撮影)

 「私たちは、実質賃金上昇率だけが正しいとか、名目賃金上昇率だけが正しいとか、総雇用者所得が間違っているとか、そういう主張はしてない。にもかかわらず、安倍総理は『総雇用者所得なんだ、実質賃金上昇率と名目賃金上昇率はアテにならない』と言わんばかりの国会答弁をした。そうではなく、どの統計も重要なのだ。各統計の実態を幅広く国民に知らせることがプラスになる」

山井和則議員は「実質賃金0.2%プラスは『大本営発表』」と疑念を表明!「実態はマイナスではないのか」!?

 国民民主党の山井和則衆議院議員は、「厚労省発表の、名目で1.4%プラス、実質で0.2%プラス。去年9月の統計委員会では、経済指標としての賃金上昇率は、公表値よりも共通事業所を比べた参考値を重視すべきという見解を示している。ひと言で言うと、今日発表された『実質賃金0.2%プラス』は大本営発表。実態はマイナスではないのか」と疑念を表明した。

サンプル入れ替えやベンチマーク更新によるギャップ補正を、なぜ内閣府はやっていて、厚労省はやっていないのか?原口一博議員「これでは統計の信頼性を得られない」!

 国民民主党の原口一博衆議院議員は、内閣府による推計の場合は、サンプル入れ替えやベンチマーク更新によるギャップを補正していると指摘。なぜ、内閣府はやっていて、厚労省はやっていないのかと訊いた。内閣府の担当者は、「補正の目的はギャップを接続するためだ」と回答。厚労省の大臣官房参事官の屋敷次郎氏は、「指数の補正を行ったところ、わかりにくいという意見が寄せられたので」と説明したが、原口議員は「これでは統計の信頼性を得られない」と断じた。

「議事録、絶賛改竄中」!? 2015年の検討会の議事録を出さないのは「検討会の各委員に修正意見をもらっている」という厚労省の回答に、森裕子議員は議事録改竄の可能性を指摘!

 自由党の森裕子参議院議員は、勤労統計の調査方法について専門家が検討した2015年の検討会(毎月の勤労統計の改善に関する検討会・全6回)の議事録を、なぜ出さないのかと質問した。屋敷氏は、検討会の各委員に修正意見をもらっている途中なので出せないと答えたが、森議員は、「修正って、改竄では?」と追及し、次のように要求した。

▲森裕子議員(2019年2月8日、IWJ撮影)

 「これ、国家戦略特区の改竄と同じではないんですか。加計学園の時も議事録の重要な部分が改竄され、削除されていた。安倍政権の対応を見ていると『議事録、絶賛改竄中』と受け取らざるを得ない。修正前の原本を直ちに出してください」

麻生大臣の「変えなさい」で新方針が整備された!? 山井議員「まさに、統計委員会が『麻生大臣の一声で方針が変わりました』と認めているわけです」!

 山井議員は、「全6回の検討会で、調査方法を変えると過去の連続性が保てなくなるので基本的には変えたくない、という結論になったのに、2015年10月16日の経済財政諮問会議で麻生大臣が『変えなさい』と言ったら、新方針が整備された。つまり、6回の検討会の議論が、麻生大臣の鶴の一声でひっくり返された。まさに、統計委員会が『麻生大臣の一声で方針が変わりました』と認めているわけです」と語った。

国際的GDP算出基準に無関係の「その他」部分でGDPをかさ上げする「ソノタノミクス」を明石順平氏が解説!それでも消費低迷を隠せない!

 明石氏は今回の統計発表について、次のように解説した。

 「今までの話の流れを聞いていると、厚労省は参考値の伸び率を公表する気がないと思う。これは、『名目賃金伸び率について参考値を重視せよ』と言った統計委員会の見解と矛盾する。名目の伸び率は参考になるが、実質の伸び率は参考にならないということは絶対におかしい。単に出したくないだけ。

 公表値における名目賃金の前年比伸び率を見ると、アベノミクス開始後から2017年までの名目賃金の伸び率は、5年もかけてやっと1.4%だ。しかし、2018年はサンプルを半分入れ替えて、さらにベンチマークも変えて、賃金を高く出るようにした上で、それをそのまま2017年と比較し、伸び率を算出している。その結果、2018年はたった1年で1.4%も伸びるという異常な結果になっている。ただ、重要なのは、こんなに一生懸命かさ上げしてもショボいこと!」

▲明石順平氏(2019年2月8日、IWJ撮影)

 2018年の消費者物価指数は、2012年を100とすると1.3ポイント伸びているので、結局実質賃金は0.1ポイントしか伸びていない。アベノミクス以降、2014年の消費税増税に加えて、無理やり円安にして円安インフレを起こしたので物価は急上昇した。その結果、物価上昇の伸びが、名目賃金の伸びを大きく上回り、実質賃金が大きく落ちた。2018年とアベノミクス前の2012年とを比べると、3.6ポイントも低いという。

 明石氏は、「その結果、日本のGDPの約6割を占めている実質民間最終消費支出が伸びない。2014年から2016年にかけて3年連続で減少しており、これは戦後初だ。2017年はプラスに転じたが、それでも4年前の2013年を下回っている。4年前を下回る現象も戦後初。実質賃金の大きな下落は、戦後最悪の消費停滞を引き起こしている。これは国民の生活が全然向上しないことを意味するので、景気回復の実感がないのは当たり前」と述べた。

 さらに、「GDP改定のどさくさに紛れて、異常な数字の操作が行われた」とし、名目民間最終消費支出が旧基準と比べるとアベノミクス以降には突出しており、特に2015年には8.2兆円もかさ上げされていると指摘する。

 「これは、国際的GDP算出基準に全く関係ない『その他』という部分でなされている。この『その他』によるかさ上げ、かさ下げの現象を私は『ソノタノミクス』と名付けた。それでもなお、消費低迷を覆い隠すことができない。この消費低迷の大きな要因は実質賃金が上がらないこと。まさにアベノミクスの一番の泣き所。そういう悲惨な状況にあることを、国民に認識してもらいたい」

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「明石順平氏「ソノタノミクス。GDP改定の際、国際的GDP算出基準と全く関係ない『その他』という項目でアベノミクス以降を『かさ上げ』し1990年代を『かさ下げ』した」~2.8「賃金偽装」野党合同ヒアリング」への2件のフィードバック

  1. 鶴田 大 より:

    非常に重要な配信ありがとうございます!
    ただ、音声が聴き取れないです
    以前、音質が良くなっていたのに残念。
    マイク音声ダイレクト又は、スピーカーの音声を拾って頂けるとたいへん助かります。

    引き続き宜しくお願いします!

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「国を挙げて詐欺を行う」、こんな国家は資本主義でも民主主義でもない。

    明石順平氏「ソノタノミクス。GDP改定の際、国際的GDP算出基準と全く関係ない『その他』という項目でアベノミクス以降を『かさ上げ』し1990年代を『かさ下げ』した」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/441585 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1094173382709370880

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