「実質賃金伸び率を算定するのは簡単。私は2分でできた。惨憺たる結果だから(厚労省は)公表したくないのかな」
毎月勤労統計の不正問題について、連日、野党の院内集会や合同ヒアリングに出席し、厚労省による統計の不審点を指摘している弁護士の明石順平氏は、厚労省が公表を渋る実質賃金伸び率について、自身が試算した結果を示して上記のように述べた。
2019年1月30日、東京都千代田区の衆議院本館にて、勤労統計不正「賃金偽装」野党合同ヒアリングが行われ、野党議員らが、特別監察委員会の調査結果、基幹統計の再点検、平成29年度国民経済計算年次推計(フロー編)再推計結果などの説明を受けた。
野党側は再三にわたり、2018年1月から11月の各月の実質賃金伸び率を参考値で出すように要求していたが、厚労省の大臣官房参事官(情報化担当)の屋敷次郎氏は、この日も「時間軸と物価上昇率の軸が異なっていて複雑な状況。検討が必要で、今日は出せない」と応じた。
しかし明石氏は、「実質賃金の上昇率は、名目賃金上昇率÷消費者物価指数の上昇率×100」だと説明し、参考値についても、国の統計資料から数字を拾って簡単に算出できると明言。その方法で試算したところ、昨年1月から11月までの各月で、実質賃金の上昇率がプラスになったのは1回だけで、平均はマイナス0.5%だったという。
屋敷氏は、「そういう計算は可能であると思うが……。引き続き検討させていただく」と答えたが、野党議員から「この試算は正しいの?」と重ねて問いただされると、「おそらく(役所が計算しても)同じような数字が出ると予想されます」と述べ、場内にどよめきが広がった。
立憲民主党の長妻昭議員は、2015年に厚労省が毎月勤労統計の調査方法の変更を有識者会議で検討した結果、「(変更は)過去に遡って補正をする」「事業所は総入れ替え方式」という最終報告を9月に出していることに言及した。
「ところが、10月の経済財政諮問会議で、『総入れ替え方式は改善しろ』という内容の資料が、麻生財務大臣の名前で配布された。本来、厚労省は『統計の専門家が検討して結論が出ているので変えません』と言うべきだが、急遽、変えた。それで賃金が高めに出る。麻生大臣の鶴の一声で変わったイメージだ。この意思決定はどういうプロセスだったのか?」と疑問をぶつけた。