どこを見てもパソナ、パソナ、パソナ――。
美しい瀬戸内海に浮かぶ兵庫県・淡路島。魚介類や玉ねぎ、淡路牛などの特産品を誇るにこの島には、世界最長の吊橋・明石海峡大橋のおかげで本土からも観光客が訪れる。
『古事記』や『日本書紀』には、イザナミノミコトとイザナギノミコトが最初に生んだのが、「淡路穂狭別島(あわじのほのさわけのしま)」、すなわち淡路島であるとの記述がある。そのため、この島には神話にゆかりのある見どころが多く存在する。
そんな淡路島に、ある「異変」が起こっている。沖縄本島のわずか半分ほどの面積のこの島で、人材派遣会社・パソナの関連施設がそこら中に増加しているのである。
パソナと言えば、新自由主義の理論のひとつ、「トリクルダウン」を声高に提唱してきた竹中平蔵氏が取締役会長を務める会社である。竹中氏は、第二次安倍政権以降、「産業競争力会議」や「国家戦略特区諮問会議」のメンバーを務め、2015年1月1日のテレビ朝日「朝まで生テレビ!」で、「正社員をなくしましょう」と言い放ち、物議を醸したこともある。
▲竹中平蔵氏(ウィキペディアより)
また、歌手のASKA氏が覚醒剤を使用したとして2014年に逮捕された際に、共に逮捕された栩内(とちない)香澄美氏は、パソナが東京に所有する迎賓館「仁風林」で接待役をしていたとされる。
▲「仁風林」(2017年3月28日IWJ撮影)
いわくつきの「パソナ」が、なぜ、淡路島に進出しているのか。その謎を追って、IWJは淡路島を訪れた。
人材派遣会社でありながら「地方創生」に注力するパソナ 淡路島は同社の地方創生事業の「中心地」
2017年4月1日、パソナグループは初めて淡路島で、新入社員223名の入社式を開催した。会場となった「兵庫県立淡路夢舞台国際会議場」のすぐ北には、淡路島公園があり、公園内には同年7月、パソナが新しく、体験型エンターテイメント施設「ニジゲンノモリ」を開設した。
さらに2ヶ月後の9月には、淡路市内に淡路島産の食材を使った料理を提供する「オーシャンテラス」をオープンした。
人材派遣の会社がなぜ、淡路島に次々と新しい事業を開設するのか。同社は、「人材サービス」の他に、「地方創生」を主力事業に掲げており、淡路島の他、京丹後と東北で地方創生事業に取り組んでいる。淡路島はその中でも、圧倒的に事業展開の多い地で、同社の地方創生事業の中心地であることがうかがえる。
パソナの南部靖之・グループ代表は、「経済界」(2017年12月26日)で、地方創生に力を入れる理由について、次のように述べている。
「地方が元気になれば定住人口も増える。地方なら、生活費も安いし待機児童問題も都心ほどではない。しかも豊かな自然、安全な食など健康的に暮らすことができる。つまり日本が抱える課題の答えはすべて地方創生にあるのです」
「日本が抱える課題の答えはすべて地方創生にある」かどうかは別として、地方創生事業に取り組むことそれ自体を批判するつもりはない。しかし、それならば、パソナが全力を注ぐことによって、どれほど淡路島が「元気」になったのだろうか?