「普通のやり方では新設ができないから、国家戦略特区を使って医学部を新設しようとしたのではないか」
2017年7月13日、東京都千代田区の参議院議員会館にて、民進党の「加計学園疑惑調査チーム」の共同座長を務める桜井充参議院議員は、「国際医療福祉大学」の医学部新設をめぐる疑惑について、IWJ記者のインタビューに答えこう語った。
「加計学園」問題については、7月10日、24日、25日に衆参両院で閉会中審査が行われ、野党による厳しい追及が行われた。24日、25日の審査は、安倍総理出席のもとに行われたものの、疑惑は解明されるどころか、ますます深まるばかりだ。
「国家戦略特区」の名の下に行われている可能性の高い、安倍政権の「縁故主義(ネポティズム)」による便宜供与疑惑。実はこれは、「加計学園」だけにとどまる問題ではない。
「国際医療福祉大学についても利益誘導の疑いがある」
「加計学園疑惑調査チーム」で党の先陣をきってこの問題に取り組んできた桜井議員は、千葉県成田市の国家戦略特区に今年の4月に開学した「国際医療福祉大学」の医学部についても、疑惑の目を向ける。
「加計学園」問題に「国際医療福祉大学」問題、どちらも、一つの個別の大学に限定された特殊な問題として見るわけにはいかない。桜井議員はインタビューの中で、「国家戦略特区」の制度そのものに着目し、「相当問題が多いシステムです」と断言した。そして、安倍政権で新自由主義的な政策を進める旗振り役となってきた竹中平蔵氏の名前をあげて、「利益誘導が身内の中で行われていることは、間違いないと思います」と、はっきり述べた。
一体、「国家戦略特区」で何が起こっているのか――?
IWJが桜井議員に詳しくお訊きしたので、ぜひ、お読みいただきたい。
「国際医療福祉大学」の問題については、IWJで以下の記事もまとめている。こちらもぜひ、あわせてご一読いただきたい。
▲桜井充議員
- 日時 2017年7月13日(木) 13:00~
- 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
「最初から国際医療福祉大学ありきの議論だったのでは?」――実に38年ぶりの医学部新設になぜか応募してきたのは国際医療福祉大学のみ
「加計学園と同じように、元々、国際医療福祉大学に決まっていたのではないか」
今年4月に千葉県成田市の国家戦略特区に開設された、国際医療福祉大学の医学部をめぐる疑惑について、桜井議員はこう語った。
文科省は、医師の供給過剰による医療の質の低下を懸念し、2003年に医学部新設を禁ずる告示(※)を出した。このため、国際医療福祉大学医学部は、特例を除くと実に38年ぶりの医学部新設となった。
桜井議員は、国際医療福祉大学の医学部新設が認められた経緯について、「普通のやり方では新設ができないため、国家戦略特区を使って新設を試みた」と述べた。
国家戦略特区に高レベルの医療拠点をつくる、という政府の方針で実施された事業主の公募期間は、わずか8日間。応募したのは国際医療福祉大学のみだった。
「加計学園と同様、最初から『国際医療福祉大学ありき』の議論だったのではないか?」と、桜井議員は疑問を呈する。
「世界最高水準の『国際医療拠点』」…三省合意の裏で国際医療福祉大学は地元・千葉県と「地域医療への貢献」を約束
「加計学園」問題でも注目を集めた「国家戦略特区」。安倍総理は「岩盤規制にドリルで穴を開ける」と繰り返し強調してきた。重点的な規制改革を行う特区を突破口に、いずれは全国に規制改革を広げていくことを目標とする。ただし、「特区」を利用して医学部をつくる以上、一般の医学部と同じでは意味がない。
そこで内閣府・文部科学省・厚生労働省は、平成27年(2015年)7月31日に、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」という三省合意を締結。「世界最高水準の『国際医療拠点』をつくるという国家戦略特区の趣旨を踏まえた、国際的な医療人材の育成のための医学部新設」を方針として、「一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる」医学部を新設するとした。
ところが、この三省合意をまったく無意味にするような協定が、千葉県と国際医療福祉大学との間に結ばれていたことが明らかになっている。
平成29年(2017年)3月27日付で結ばれた「国際医療福祉大学医学部の開設等に関する協定書」には、「(国際医療福祉大学医学部は)地域医療に貢献する医師を育成し、千葉県内の医師の地域偏在や診療偏在が解消するよう」「医学部において地域医療に関する教育を行う」「地域医療と連携し、地域医療の充実に努める」「千葉県立病院における研修医指導体制の充実に努める」「医学部卒業生の千葉県内の医療機関への就業が十分進むよう取り組む」…などなど、「地域医療への貢献」に関する取り決めがいくつも並んでいる。
▲「国際医療福祉大学医学部の開設等に関する協定書」(平成29年3月27日)
「地域医療への貢献」を目指す医学部では、一般の医学部と違いはない。「世界最高水準の『国際医療拠点』をつくる」とした三省合意とは全く異なる取り決めは、国際医療福祉大学の「ダブルスタンダード」を意味する。
桜井議員は、「三省合意に違反した場合の責任の所在はどこにあるのか? また、違反した国際医療福祉大学は処分されるのか?」と疑問を呈した上で、次のように述べた。
「要するに、一般の医学部を作りたかったんです。だけど、それでは(文科省の告示により)通らないので、国家戦略特区の中で特別な医学部を作りますから、だから作らせてくださいという形にした。結果的には、後は野となれ山となれと、好きなようにやっている」
「関係者が優遇されている案件は相当見られる」――「優遇される身内」の筆頭は竹中平蔵氏! 桜井議員は竹中氏の調査にも意欲
結局、国家戦略特区は、安倍政権の「縁故主義」的な便宜供与に使われているだけなのではないのだろうか?
IWJがこのように質問すると、桜井議員は「その通りですよ」と述べ、次のように続けた。
「たとえば、兵庫県養父(やぶ)市に農業特区ができました。そこに参入してきたのがオリックス株式会社で、そこの社長(※正確には社外取締役)は竹中平蔵さんです。彼は国家戦略特区諮問会議のメンバー。諮問会議のメンバーが社長(※社外取締役)になっているように、関係者が優遇されている案件は相当見られます。(国家戦略特区は)相当問題が多いシステムです」
竹中氏は、人材派遣大手のパソナグループの取締役会長も務める。桜井議員は、パソナグループについても、次のような事実を明らかにした。
「神奈川の国家戦略特区でも、外国人労働の受け入れ(「家事支援外国人受入事業」)をパソナが(事業者として)取っている(※)。利益誘導が身内の中で行われていることは、間違いないと思います」
パソナ関連の調査についても、加計学園や国際医療福祉大学と同様に、調査を進めるのだろうか? 桜井議員は、「パソナというより竹中平蔵さん」とした上で、「もちろんです」と、今後の調査に意欲を表明した。
「裏で政治的な力学がかかっている」――「国際医療福祉大学」問題でも証言・証拠文書があきらかに
インタビュアーの桜井充「先生」という呼び方には違和感を感じる。
議員は私たち国民の声を代弁し国政に反映するのを仕事とする公僕である。
決して無知で愚かな国民を、先生という高見から教え導く存在ではない筈だ。
そんなこともわからず先生、先生と呼ばれて自分が偉くなったのだと誤解し気をよくする議員は多い。
それも確かだ。しかし桜井さんは決してそんなバカな人でない筈だ。
先生と呼ばないから、敬っていないということではない。
記者も若いし、畏怖心を感じるのかも知れない。
何回もいうようだが、一般市民も、記者も、国会議員も貴賤の差身分に上下はない。
議員を「先生」などと呼ぶ業界慣用は、IWJにふさわしくない。
ただちに改めて欲しい。
民進「加計学園疑惑調査チーム」共同座長・桜井充議員に訊く http://iwj.co.jp/wj/open/archives/389573 … @iwakamiyasumi
法の抜け穴どころか法そのものを(都合のいいように)変えてしまう、それが「国家戦略特区」。国を挙げての不正が行われようとしている。
https://twitter.com/55kurosuke/status/890370400953147392